1998年6月10日(水)

【戦士鍛錬場:中尾 智史・大島 清吾・飯島 桜・井上 貴史・栗原 伸・松 美由紀】
「良し、おそらくやるべきことはやったはずだ。後は今日は体を休めて、明日の朝に体調がビークになるように調整してくれ」
「わかりました。ありがとうございます」
 真剣な表情を浮かべて言葉を発した中尾 智史の言葉を聞いて、井上 貴史、栗原 伸、松 美由紀の3人は元気な返事と礼の言葉を述べた。ここは午前中の戦士鍛錬場。本日もたくさんの戦士が鍛錬を行っている。いよいよ明日第3迷宮探索を開始する絶対運命黙示録部隊の戦士3人に、中尾、大島 清吾、飯島 桜が本日もつきっきりで指導を行なっていたのである。指導した3人の目からしても、絶対運命部隊の3人の実力は地下1階レベルであれば全く問題ない。元々井上と松の剣捌きは18期の中でも群を抜いていたし、栗原は空手の経験を生かして、ナックルを使った戦闘スタイルを行っている。長い冒険者の歴史でもナックル系を利用した戦士は存在しないが、実際戦ってみると剣よりも案外応用が効くようであり、リーチの短さを補って余りあるような戦いを行えているのだ。
「一応明日は俺たち迷宮の入り口で待機しておくから、何かあったらとにかく入り口までは戻ってきてくれ。俺ら入れないから」
 少し心配な表情を浮かべた中尾の言葉を聞いて、3人は決意の表情を浮かべて大きく首を縦に振る。もちろん亜獣にやられるつもりはないが、もしやられたとしても入り口までは自力で帰ってこなければ、簡単に命を落とすことになるのである。
「じゃあ今日は頑張ったので、中尾さんに昼ごはん奢ってもらいましょうか」
「あ、ありがとうございます。ゴチになります」
 笑顔を浮かべて飯島が叫んだ言葉を聞いて、井上と栗原、松は大きな声で中尾に向かってお礼を述べた。いきなりの事に少し驚いた中尾だったが、可愛い後輩のためにご飯を奢ることぐらい何ともないので、笑顔でサムズアップを返した。ちなみに昼食には大島と飯島も一緒に行き、中尾は一緒に払おうとしたが、2人は自分が食べた分は自分で支払った。

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