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1998年6月11日(木)

【熊大第3迷宮:絶対運命黙示録部隊】
「では行ってきます」
「おう、気をつけてな」
 かしこまった表情で井上 貴志が言葉を発し、それに中尾 智史が元気に答えた。ここは熊大第3迷宮入り口。本日ついに第3迷宮の探索がスタートする。緊張の表情を浮かべる絶対運命黙示録部隊の隊員たちであるが、誰も足を踏み入れたことのない迷宮に、まだ冒険者になりたての自分たちが入ろうとしているのだ。緊張するなと言う方が無理である。
「大丈夫。何かあったらすぐに戻ってくるんだよ」
「ちゃんと待っててあげるからね」
 中尾と一緒に<<1さん部隊の飯島 桜と宮崎 藍も見送りに来てくれている。第3迷宮は第1迷宮と違い、迷宮の入り口の手前に1つ部屋が存在している。その部屋は誰でも入ることができ、迷宮内と同じように特殊物質が充満している。なので、もし迷宮内で負傷するようなことがあっても、ここまで戻ってくれば宮崎から回復を行なってもらえるのだ。それを聞いて多少気持ちが楽になった絶対運命部隊の隊員たちは、意を決して迷宮内に足を進めた。
「ここが迷宮か」
「空気が重いね」
 迷宮に入ってまず感じたのは空気の重さだ。入り口手前の部屋よりも物質が濃くなっているようであり、それを肌で感じた井上と松 美由紀が思わず声を漏らしたのである。しばらく迷宮の雰囲気に圧倒されてたが、少し落ち着いてきたので周りを見渡してみる。迷宮の作りはいわゆる迷路の様ではなく、全体に広がるフロアの中心に大きな水たまりがあり、その中心に神殿の様なものが存在している。
「とりあえず水辺に亜獣がいるみたい」
 亜獣の気配を感じた飯島 志保がそれを伝達し、井上が意を決して歩を進める。水辺に近づくといきなり海蛇っぽい亜獣が1匹姿を現した。
「殲滅」
「催眠」
 中村 瞬が催眠、島津 亮二が催眠を唱える。殲滅は効果を得なかったが、催眠によって亜獣は倒れ伏し、戦士の攻撃で消滅した。
「物質回収します」
 飯島にとって初めての物質回収が行われる。その間にこの後の作戦を講じるが、現在わかっているのは水辺にはこの亜獣がいる可能性が高いと言うこと。おそらく水たまりの中にある神殿に入らないといけない事の2つである。回収が終わったので、もう少し地下1階を探索してみることにする。本日分かったことは水たまりはこのフロアの中心に固まっており、壁を沿って一周することができると言うこと。神殿には東側と西側に橋のようなものがあり、そこから侵入することができそうだということである。元々かなり緊張していたので、これだけでもかなりの疲労感を感じる。なので本日はこれで終わろうと思ったが、帰りしなに亜獣に遭遇する。亜獣はアラビア人風で剣を持っており、それが4人で攻撃してきた。結論から言えば、催眠で2体が眠り、残った2体も井上、栗原 慎、松の敵ではなかったので、地下1階の亜獣はそれほど強くないことが判明した。無事に迷宮入り口に戻ると中尾と飯島、宮崎が安心した表情を浮かべて迎えてくれた。この後、みんなで一緒に食事をとることにし、第3迷宮について本日分かったことは全て伝えることが出来た。

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