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別世界では別職種だった件 マエダ編 第9話

第9話 F級会議 前編

「何だそれ」
「この国では各職業としての階級とは別に、その個人個人が持っている特性によって分類が行われているの」

 朝食後のまったりとした時間の中で、リョウコが口にした本日の予定についてマエダが質問した。最近緊張感が高まっているマストクック連邦とアルタ王国であるが、今後の戦略についての話し合いが本日行われるということである。そしてその話し合いの場が“F級会議”と呼ばれるものであり、リョウコによると、マストクックには17人のF級国民が存在し、国家にとって重要な案件が発生した際にはそのF級国民が集合して、今後の戦略を話し合うことになっている。その17人の中にリョウコは含まれており、その会議が本日実施されるのである。

「まあ俺はその間いつものように待ってれば良いんだよな」
「えっと、マエダくんも参加する?F級会議」

 自分には関係ない話だと思いっていたが、まさかの参加要請をされてしまった。だが自分はF級国民ではないし、そもそもF級国民とは何かというのも良くわかっていない。

「とりあえず、一緒に王宮には行くわよ」

 こう言ってリョウコはドリンクの最後の一口を流し込み、席を立って外出の準備を始めた。良くわからない話の展開に少し混乱したので、マサミに目をやるが、どこ吹く風という感じで、のんびりとドリンクを口にしている。これはその良くわからないF級会議とやらに参加しないといけない流れなのだろうか。いろいろと考えがまとまらないまま外出の時間となり、王宮に向かって出発する。王宮へ移動する間に根本的な疑問である分類についてリョウコから説明を受ける。マストクックの国民はF級、A級、B級、C級、D級に分類され、この分類は持っている特性が国家にどれくらい寄与できるかによって判断されている。D級国民とはいわゆる一般的な国民であり、特別な能力を持っていない人たちである。とはいえ、全国民のほとんどがD級国民に分類されるので、この人たちが普通なのであり、C級国民以上が特殊であるという認識となる。次にC級国民であるが、何かしらの特殊能力を持っているものの、その才能の使い所が断片的であり、その能力を使用できる場面が限定されている者のことである。能力が断片的である分、ある意味強力な能力を持つものも多いが、汎用性にかけるので使い所が限られるのである。その上に位置するのがB級国民であり、彼らは2つ以上の能力を使えるところがC級国民との相違である。その分、才能を活かせる場面も多く、B級国民は国家の中枢を担うに十分な能力を持っているのである。そしてA級以上の国民はどちらかというと戦闘能力に特化し、国の防衛に寄与するメンバーとの位置付けになる。A級国民はその能力において軍の師団長以上の階級となり、B級国民以下を指揮する立場となる。そしてそのA級国民の中でも選ばれた能力を持った17人がF級国民となるのである。ちなみにABCDの名称は普通にアルファベットの順番でつけられたがAの上であるFの語源はFantasticであるという説が一般的である。このような話をしていると程なく王宮に到着する。いつものようにブロンドとプラチナは律儀にリョウコの出勤を出迎えており、この2人に導かれて王宮内部へと入っていった。

「で、どうするのマエダくん。参加する気になった?」

 こう聞かれたが正直まだ悩んでいる。もちろん自分が参加するような会議ではないことは百も承知だが、そのF級国民の17人とやらを見てみたい気もするのだ。自分の中で自制と興味を示す天秤が揺れ動いていたが、最終的には興味が上回ってしまった。

「参加する」

 この言葉を聞いてリョウコは笑顔を浮かべて王宮の奥へと進んでいったので、マサミと一緒にその後を付いていくことにする。途中、まだ今までに入ったことのない扉を通り抜け、何か仰々しい雰囲気が漂う廊下を進んでいく。

「あら、リョウコ。お元気そうね」
「エイラも相変わらずね」

 途中であった女性から話しかけられたリョウコは笑顔で返事を返す。エイラという名前らしい女性は通路の途中で何をすることもなく立っていたみたいだ。誰か待ち人でもいるのであろうか。

「その2人は誰?」
「マサミとマエダくん。今日の会議に一緒に出てもらおうと思って」
「ふーん」

 こう口にした後でエイラが近づいてきて、ジーっと顔を見つめてくる。何か品定めでもされているような感じだ。そしてしばらく見つめられた後で質問をされた。

「あんた強いの?」

 こう質問されて回答に困る。先日ブロンドやプラチナと模擬戦を行って、自分がある程度強いということは認識しているが、このF級という良くわからない連中と比較して自分が強いかどうかというのは判断がつかないのである。すると、それを察したリョウコが代わりに返事を返してくれる。

「エイラよりは強いかな」
「むむ、それは聞き捨てならない」

 少し不機嫌な表情を浮かべてこちらを睨んできたが、ここで戦うような状況でもないのはわかっている様子なので、不満気ではあるが話はここで終わることとなった。

「じゃあ私たちは先に行ってるね。カミルを待ってるんだよね」

 こうリョウコが問いかけると軽く顔を縦に振って返事を返す。どうもそのカミルという名前の誰かを待っているみたいだ。この後、廊下をしばらく真っ直ぐに進み、目の前に現れて大きくて豪勢な扉を開けて中に入る。すると中には大きなテーブルがあり、そこにすでに数人の人物が座り、全員が集合するのを待ち構えているのであった。

画像イメージ:エイラ

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