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1996年8月7日(水)《BN》

「今の所全くやな」
「谷口の目を持ってしても難しいか」
 ため息を吐きながら漏らした谷口 竜一の声を聞いて、大塚 仁が名セリフを引用して返事を返した。ここはレストラン『北食2階』。ランチ時間であり、店内にはたくさんの客が訪れている。大塚と本田 仁は午前中は鍛錬場で過ごしたが、鍛錬終了時に谷口からランチのお誘いがあったので、一緒に『北食2階』にやって来たのである。谷口は最近黒髪地区以外で業務を行うことが多いので、たまにこちらに戻ってくると大塚や本田と情報交換という名目で一緒に食事をしたり、飲んだりするのである。まずは現在の冒険者たちの様子や、探索の進捗状況などを大塚が谷口に説明し、その後で新しい迷宮の発見や、第2迷宮クリア時に回収した謎の書物の情報について谷口に尋ねてみたのである。だが、その辺りについては何も進んでいないようである。
「謎の本はともかく、新しい迷宮があるなら早く見つけたいんだけどな」
「まあ、ない可能性も多分にあるからね」
 すでに第2迷宮探索を終わらせている黒髪てへトリオ部隊のために、次の迷宮を早く見つけたい谷口であるが、現状その糸口すらも全く掴めていない状況であり、そもそも存在しない可能性について大塚が口にした。
「とりま、第1迷宮クリアから第2迷宮が発見されるまでも数年かかったからな」
「しばらくは鏡の間で遊びながら金稼いどくよ」
 新しい迷宮が発見されるまでのタイムラグについて本田が口にし、発見されるまでの間は、現在行っている鏡の間でのレア物質収集に明け暮れるということを大塚が言葉にしたのである。

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