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2024/8/10

科博の特別展「昆虫MANIAC」に行ってきました。

雌雄モザイクの昆虫標本が印象的でした。
高2の頃、高尾山で採集したヤママユという蛾が、雌雄モザイクに見えたのですが、Twitterで意見を募ったところ、羽化不全ではないかという結論に至り、しょんぼりした記憶があります。

昆虫の雌雄モザイクって、アシュラ男爵みたいに身体の左右で雌雄が分かれているものが多い印象があります。少なくとも、今回科博に展示されていた雌雄モザイクは、全て左右で分かれたものでした。
これは「実際には頭側と尾側で分かれた雌雄モザイクや、生殖器は雌でツノは雄というようにパーツごとにバラバラに分かれる雌雄モザイクも存在するが、パッと見のインパクトが強い故に左右キッパリ分かれた雌雄モザイクが展示されやすい」というバイアスがあるのか、定かではありませんが、やっぱり生物学的な機序として左右に分かれやすいんですかね。
ちょっと調べたところ、昆虫の雌雄モザイクは、細胞レベルで性染色体がXX(雌型)とXY(雄型)のモザイクになっているようですね。

一方、ヒトでは昆虫のように体細胞レベルで性染色体が異なる雌雄モザイクは寡聞にして知りませんが、あるとしてもかなり稀だと思います。
オリンピック選手で話題になっているアンドロゲン不応症の例では、全身の細胞がXY(雄型)の染色体を持ちながら女性の身体の身体的特徴を示しますが、これはアンドロゲン(男性ホルモン)受容体の機能不全が原因で、今回話題にしている昆虫の雌雄モザイクとは機序が違いますね。
昆虫では細胞が持つ染色体のみによって細胞が雌雄どちらの表現型を取るかが決定するのに対して、ヒトでは細胞の持つ染色体+性ホルモンの影響の2段階の仕組みにより細胞の雌雄の表現型が決まる、という違いがあります。

ところでヒトの場合は、同一個体の中で体細胞レベルで性染色体が異なる雌雄モザイクは、存在するんですかね?
21番染色体が3本になるダウン症候群では、健常な細胞と21番染色体が3本の細胞がモザイク状に存在し、通常のダウン症候群よりも軽い表現型を示すケースは存在すると聞いたことがあるので、性染色体の場合でも同じことは起こり得るのかもしれません。

ともかく、昆虫はなぜ左右分かれた雌雄モザイクになるんですかね。思考実験としては
①1個の受精卵から細胞分裂が繰り返される際、最初の分裂でできた2個の細胞がそれぞれ右半身と左半身を形成する
②特に最初の分裂の際に、性染色体に変異が生じやすい
この2つの条件が必要なんじゃないかと思います。①が欠けてたら、もし性染色体に変異が入ったとしても、全身の細胞がランダムに雌雄モザイクになってしまい、左右キッパリ分かれた雌雄モザイクにはならないと思います。②が欠けてる場合、左の後脚だけとか右の触覚だけとか、局所的な雌雄モザイクになってしまうと思います。もっとも、そういう地味な雌雄モザイクはなかなか人間に気づかれないというバイアスはあるかもしれませんが。
この①②の条件下においては、左右きっぱり分かれた綺麗な雌雄モザイクが出現しやすくなるのではないでしょうか。

ここまで書いていて思い出したのですが、科博に展示されていた左右に分かれたカブトムシの雌雄モザイクのCTスキャンでは、外骨格としての顎は左右で雌雄モザイクになっているものの、顎を動かす筋肉については左右ともに雄型の太い筋肉が見られたとの説明がありました。
つまり、少なくともこのカブトムシの場合、外骨格は左右で雌雄に分かれていても、内部の器官は左右キッパリ分かれてはいないようです。
これを考えると、先に述べた①と②の条件は、外骨格については当てはまるけれど、内部の組織や器官はまた別なのかもしれません。確かに、ヒトで言うと、心臓の位置とか肝臓の形態とか、内臓は左右対称じゃないもの多いですもんね。

なんか煮詰まってきたので、この辺にしときます。昆虫MANIACだけに、MANIACな文章になってしまいました。

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