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NO27 夫婦そろって茜に行く

8月21日 水曜日

春樹と玲香は課長にお願いして、休日をずーと一緒にしてもらった。
今日は久しぶりに茜に行く。
玲香は春樹がアルコールを飲めないので、
気をつかって家では飲んでいないのだ。
それで今日は、春樹をうまい事、言いくるめて、
茜に連れて行ってもらう事ができた。
玲香はルンルンなのだ。PM7時、茜に入ると、
もう、お客さんが7人もいた。 中沢さん・吉村さんがいる。
加藤さん沢田さんもいた。金山もいる、あとの二人は知らない方だ。
春樹と玲香は、はーいって、手を挙げて茜に入った。みんな振り向くと、
「れいちゃん、久しぶりだな」
「れいちゃん、こっちに来て一緒に飲もうよ」
「れいちゃん、待ってたよ」
「れいちゃん、スカンクのボトル、空になって入れたけど、
また、このボトルにもスカンクを書いてよ」

keiさんの絵画より

もう、れいちゃんファンで大変だ。
「ちょっと、今日はれいちゃんはお客さんだからね、
ダメよ、そっとしてあげて ね!」

ママも、ちょっと困った感じだ。
二人は玄関側の一番端のカウンターに腰掛けた。
春樹はジンジャーエール 玲香はママに薦められて雀の涙にした。

玲香が智ちゃんと香奈ちゃんを呼ぶと
「前に言ってたピアスを持ってきたから、
どれがスキかな、二人にプレゼント!」
と言って、四セットを開いて見せた。
「これ、全部、ティファニーだよね、こんな高価な物、本当にいいの」
香奈ちゃんが声を上げる。
「すご~い、こんなのが欲しかった」 智ちゃんの目が輝いている。

「春樹が、使いもしないもの、しまっておいてもしょうがないだろって。
香奈ちゃんと智ちゃんにあげろって、」

「春樹さん、本当にもらっていいんですか、ありがとうございます。
春樹さん、好きになっちゃった」智ちゃんは大喜びだ。

「こんなの、玲香の引き出しの中に、おもちゃみたいのばっかり、
たくさんあるよ」

玲香がつぶやく
「ジュエリーの価値なんて、全く判らない人だから1セットずつだからね」

「私、これ、いいですか、やったぁ うれしい」 「香奈、これがいい」
二人はママにもらっていいのか、目で確認をとった。
「ママ、れいちゃんにこれ、もらっちゃった」

智ちゃんも香奈ちゃんもお客さんどころではない。
嬉しくて仕方がないようだ。
「いま、してもいいかな」智ちゃんが言う。
玲香が
「家に持って帰って、ゆっくり、入れたら・・・・・
下手に入れて耳に傷がついたら大変、ね、」
って言うと二人は納得してバックに仕舞った。

しばらくして、玲香は奥にあるトイレに行った。

トイレから出てくると、誰かが、お尻フリフリと踊ってみせる。
すると、いつものメンバーがおしりふりふりを歌い出した。
玲香はつられて、おしりふりふりを踊り出す。
だんだんみんなの手が伸びてきた。

ママは困った顔だ、春樹をみる。
春樹も、あきれているが、口には出さない。

玲香が踊りながら歩く、みんな、この時とばかりに、お尻をさわる
盛り上がる。
(おしりふりふり おしりふりふり おしりふりふりプイプイ )
みんながさわっているので、春樹もさわろうとした時だ。

「やめて、ダメ、イヤ、」

玲香が春樹から離れる。みんなも、どうしたって顔だ。
玲香がママに救いを求める。

「春樹 、あんたがみんなと一緒になってどうするの、
もう、女心もわかんないんだから・・・・・」

「えぇ、なんで、何が?どういう事、」 春樹は訳がわからない。

「ママ、帰る、しらけちゃった」 玲香が急に帰ると言い出した。

「お勘定」
「何言ってるの、いいから、
智ちゃんも香奈ちゃんも高価なジュエリーを貰ったんだから」

玲香は両手を横に振りながら、加藤さん沢田さんたちにもさよならを言って、ジャンボパーキングに向かった。
智ちゃんと香奈ちゃんが、いつまでも見送りをしていた。

赤いマツダⅡを出すと、車内で格闘が始まる
「さっきの何だったんだ」

「さっきのって?」

「もう、とぼけるな、あれって、俺が怒るならわかるけど、
なんで、玲香がダメって言うんだ」

「わかんない?」

「わかんないって、どういう事、いいか、最初に、
お客が踊り出したら、玲香もつられて踊り出して、けつを触らせて、
俺はあの時、アホかと思ったけれど、(見ない、言わない、腐らない)って、
何度も自分に言い聞かして我慢していたんだ。
そのうちに、みんながあんまり楽しそうにさわっているから、
俺もさわってやれって思ったら、ダメェだって、
そもそも、みんながさわる事がダメだって言うならわかる、
なのに、どうして、俺はダメで客はいいんだ、
普通、逆じゃないのか、どういう事」

沈黙が続く 玲香はうつむいたままだ。
「玲香、どういう事?」

「わかんない?だって、なんて言えばいいのか、説明がつかない」

「わかんないじゃないだろ、答えろ」

「だって、わからないんだもん」

「わけがわからん」

「私も訳がわからない、これ、女心って、言うやつだよ、きっと」

「あのね、他人事みたいに言うな、
だいたい、今日、茜に何しに行ったんだよ、
 修平と、ママがいつ、結婚するか聞きに行ったんじゃなかったのか」

「だって、変なお客さん、たくさんいて、
それどころじゃなかったし・・・」

「一番、変なお客は、玲香じゃなかったのか」

「ごめんね、女心って複雑なんだわ、きっと・・・・・ごめんなさい」
家に着いたのは22時を過ぎていた。


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泉 春樹
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