「テラパゴスのかがやき」総括―アニポケHZ第二章所感―
〇はじめに
2023年10月27日放送「テラパゴスの冒険(26)」よりスタートしたアニポケHZ*第二章『テラパゴスのかがやき』が2024年3月29日放送「はるか、遠くまで(45)」をもって締めくくられました。一週休みを挟んで、4月12日放送「ドキドキ!オレンジアカデミー」より第三章『テラスタルデビュー』が始まるようです。
*1.海外タイトル"Pokemon Horizons"の略
今更になりますが、HZシリーズは章立てで構成されており『リコとロイの旅立ち』から『テラパゴスのかがやき』、そして『テラスタルデビュー』と20~25話程度のまとまりで区切られています。縦軸の連続性の高いドラマであるHZにあったスタイルだと言えるでしょう。
こめこめくらぶは章の区切りに合わせて所感記事を挙げています。
第一章『リコとロイの旅立ち』ではキャラや設定の確認などが中心でしたが、第二章に入りキャラや舞台設定以外の描写も増えてきたのでまた違った視点の所感になるかもしれません。それでは早速振り返っていきましょう。
〇航路/ストーリー展開
『テラパゴスのかがやき』のストーリーは航路によって四つの小編に区切ることができます。
ガラル編(26~30話)
六英雄ラプラス編(31~34話)
ガラル~パルデア移動編(35~41話)
パルデア編(42~45話)
ガラル編(26~30話)ではワイルドエリアなど分かりやすくガラル地方らしいところに立ち寄りますが、六英雄ラプラス編(31~34話)の具体的な場所は分かりません(地図は出ているのでちゃんとしたモチーフがあるのかも?)。
34話でラプラス編が終わりダイアナが離脱した後は、テラパゴスについて調べる為再びパルデアに向かうことに。そして道中のガラル~パルデア移動編(36~41話)が展開。内容としてはイッシュ~カントー間の船旅を描いたBWシリーズのデコロラ諸島編に近い印象です。
ブタポケモンが集まるピグトンタウンや鉄鋼業が盛んなテツロンタウンなどゲームには登場しないオリジナルの街が多数登場。昔懐かしいアニポケの雰囲気を感じた人も多かったことでしょう。
そして42話にてパルデアに到着。これも場所は明らかになっていませんが44話でナンジャモが登場するのでハッコウシティに近いのかもしれません。
そしてエクスプローラーズ(EXP)との戦いの最中、ブレイブアサギ号はレックウザと衝突し破損。
船を修復する間、リコロイドットがテラスタル修行としてテーブルシティにあるオレンジアカデミーに入学する…というのが一連の流れとなります。
航路/ストーリー展開の所感としては、ガラル~パルデア編が特に印象に残ったシーズンでした。この辺りは一話完結でゲストポケモン(多くは初登場のポケモン)にフィーチャーする往年のアニポケのスタイルに回帰しており、『リコとロイの旅立ち』編でのストーリーテリングからは離れていました。
このスタイルの変更には割と賛否両論あった印象で、『リコとロイの旅立ち』からHZにハマった人達からは不満の声があがっていました(こめこめくらぶのTL調べ)。
一方でサトシ編からの往年のアニポケファンからは好評だったように思います。私としてもデコロラアドベンチャーはかなり好きなシリーズだったので、似た雰囲気を楽しむことが出来ました。
何よりパルデア地方の新ポケモンにスポットがしっかり当たっているのは嬉しい!『リコとロイの旅立ち』の後半から『テラパゴスのかがやき』の前半までライジングボルテッカーズ(以下RV)はずっとガラルにいたので、パルデアポケモンの出番は確保されるだろうかと心配していました。
実際前シリーズのJNで個人的に最も不満だったのはガラルポケモンの扱いの悪さでしたが、それの影響でパルデアポケモンの出番にも影響がでたら非常に悲しいことです。ワッカネズミのように若干強引な仕方*で登場しているポケモンもいますが、パルデアポケモンは絶対出すという制作側の姿勢が見えただけでも良かったです。
*2.リコ達は子どもとはぐれたイッカネズミをワッカネズミと誤解しており、実際にワッカネズミと出会ってはいない
〇キャラ描写
今回も主人公組/ライジングボルテッカーズ(RV)/エクスプローラーズ(EXP)/ゲストに分けてざっくりと。
<主人公組>
リコ
HZの第一主人公リコ。『リコとロイの旅立ち』ではダイアナから譲り受けたペンダントが原因でトラブルに巻き込まれそのまま冒険に旅立つ…という若干受け身な動機で動くキャラクターでした。
ですが、『テラパゴスのかがやき』ではペンダント…ではなくテラパゴスを"ラクア"に送り届けるという主体的な動機を持って動くようになりました。これは勿論リコ自身の成長もありますが、自分で納得して動ける環境が整ったのが大きいような気もします。
後述しますが祖母ダイアナとの対話はリコの人格形成にかなり強く影響してそうです。ルシアスがリコの家系の人物だと仮定すると、HZのテーマは「冒険の継承」ということになるのかもしれません。
ロイ
HZの第二主人公ロイ。「いにしえのモンスターボール」を所持しており、そこから出てきたレックウザを再び自分の手でゲットすることを目的に日々研鑽を積む少年。
言いにくいですが、『テラパゴスのかがやき』はロイにとって不遇なシーズンでした。一番大きかったのはロイの冒険がリコの冒険に内包される構造が確定してしまったことです。
六英雄を「いにしえのモンスターボール」に収めることでテラパゴスが本来の力を取り戻し、"ラクア"への道を拓く。ロイの冒険の全体はリコの冒険にとっては一つのステップに過ぎません。
勿論ロイの冒険にはレックウザの他にもホゲータの夢を叶えるなどロイにしか出来ないことが含まれていますが、キャラクターとしてのオリジナリティは大分薄まってしまったように思います。
手持ちポケモンの描写をとってもホゲータは毎回出てきますがカイデンの出番はほとんど削られてしまっていました。リコのミブリムが新技を習得するなどの活躍するのを観ても、もっとロイがトレーナーとして成長している描写が欲しかったところです。
ドット
HZの第三主人公のドット。RVのプログラマー兼配信者「ぐるみん」としての顔を持ちながら、ドキドキワクワクする出来事を探し続けるインドア少女。
ロイと反比例するようにドットにとっては『テラパゴスのかがやき』が躍進のシーズンになりました。新たな手持ちとしてカヌチャンを加えた他、母親のブランカと対峙して正式にRVのメンバーになるなど、明らかに『リコとロイの旅立ち』から扱いが変わっています。
実際のところ、キャラクターとしてのドットはリコロイと比較としてもかなり動かしやすそうだと感じます。リコロイは粗削りなところはあれど人格的にはある程度完成しているのに対して、ドットは引きこもって外の世界に触れていないという点で分かりやすい伸びしろがあります。
『テラスタルデビュー』ではリコロイドットでオレンジアカデミーに入学するようなので、RVのプログラマーという役職から第三主人公としての地位を確立していくことでしょう。今後の動向が一番気になるキャラクターです。
<ライジングボルテッカーズ(RV)>
フリードとキャプテンピカチュウ率いる主人公陣営「ライジングボルテッカーズ(RV)」。目的は「ポケモンの謎、世界の謎を解き明かすこと」らしい…。
というのは『リコとロイの旅立ち』でも語られましたが、それ以上の深堀りは『テラパゴスのかがやき』では少なかった印象。29話にてオリオ、41話にてドットがRVに加入した経緯が語られましたが、組織としてリコロイが入る前にどんな活動をしていたのかなどは不明瞭なままです。
また、裏の主人公として特に戦闘パートを任せられていたフリード&キャプテンピカチュウ(キャップ)も前章ほどの活躍はなかったような気がします。何話か連続してリコロイが仕留めきれなかった敵をキャップが掃討するという展開がありましたが、あまり印象に残るバトルではありませんでした。
『テラスタルデビュー』ではRVの大人組は破損したブレイブアサギ号の修復作業にあたるということですが、一気に存在感が薄くなってしまわないかが心配…。
<エクスプローラーズ(EXP)>
本作の敵陣営。リコが持つペンダントを追い求めている謎の組織。伝説の冒険者ルシアスと関係しているらしい。ボスはギベオンで側近にハンベル、幹部にアメジオ、スピネル、オニキス、サンゴ、アゲートで構成。
『リコとロイの旅立ち』ではアメジオ陣営がちょくちょく仕掛けてきていましたが、『テラパゴスのかがやき』ではラプラス編とパルデア編で局地的に衝突。
登場人物の掘り下げはほとんど進んでおらず、新規性があったのはアメジオにテラスタルオーブが渡ったのとサンゴが限定スイーツが好きだと分かったくらい…。
ですが45話にてボス:ギベオンの傍に色違いジガルデがいるという特大級の情報が投下されました。例によって説明はほとんどありません笑。謎を引っ張る方針なのはわかりますが、そろそろ何を目的にした組織なのか構成員の加入した経緯は何かなどを知りたいところです。
<その他(ダイアナ)>
『テラパゴスのかがやき』においては、『リコとロイの旅立ち』のカブさんのような原作ゲストキャラがほとんど登場しません。その代わり非常に強い存在感を放っていたのが、リコの祖母であり冒険者のダイアナです。
ダイアナは幼い頃にペンダントとルシアスの手記を生家で発見し、その謎をずっと追い続けてきた冒険家です。リコが冒険に出発するきっかけを与えた人物であり、リコが冒険を続ける動機にもなっているかなりの重要人物。
ダイアナは長年の冒険生活によって培われた独特な価値観があり、特にラプラス編ではその思想を前面に出していました。自然主義というのかは分かりませんが、ラディカルにポケモンに寄り添う考えの持ち主のようです。
正直に言えばダイアナの思想を完全に飲み込むのは難しかったですが、リコが冒険をする上でダイアナのような存在が思想を言語化するのは物語上必要なことだとは理解できます。願わくばリコ自身がダイアナの言葉を鵜呑みにせず自分の言葉にして物語を締めくくってほしいです。
〇その他(BGM、演出、OP/ED、etc…)
演出などに大きな変化はありませんでしたが、「変身! 海のヒーローイルカマン(42)」で劇画タッチになったりと中盤特有のはっちゃけ感が出てきたのは良かったですね。毎週観るアニメなので画面に変化があると嬉しくなります。
OPの「ハロ」に関しては曲自体も映像も非常にハイクオリティでした。ただ、事前に考察していたようなリコやロイの過去話などは匂わせのまま終わってしまったのはちょっぴり残念。
EDの「RVR」はほぼ歌詞が変わっただけなのであまり言うことはありませんが、リコパートが妙にダウナーで色っぽい歌い方をしていたのが印象的といえば印象的。次シリーズは歌遊び系ではなく聴かせる系な曲が来そうで楽しみにしてます。
〇所感
さて、ざっくりと言いながら記事が長くなってしまうのはいつもの悪い癖。最後に全体の所感を述べて〆ましょう。
『リコとロイの旅立ち』から『テラパゴスのかがやき』に章が移り、素人目にもストーリーの組み立て方が変わってきたように思えます。連続的なストーリーからどこからでも観れるように。全体的な雰囲気も"しっとり"から"カラっと"してきたような…。
『リコとロイの旅立ち』に"HZらしさ"を見出すか、『テラパゴスのかがやき』に"HZらしさ"を見出すか。まだ歴史の浅いシリーズでそこにこだわっても仕方ない気もしますが、各々感じ方は違うことでしょう。
個人的には今のこなれて「アニポケ」として観やすくなったHZには好感を持っています。ただし、HZがこれから物語としての推進力を保ち続ける為にはそれだけでは足りないとも思います。
『テラパゴスのかがやき』は良くも悪くも無難なシーズンでした。『テラスタルデビュー』ではもっとキャラクターを大きく動かしてほしい。悩み・叫び・走ってる姿を観てみたい。現状、それに一番近いのはドットだと思います。
新年度に入り、リコロイドットを取り巻く環境も劇的に変わります。
物語の化学反応で命が吹き込まれる瞬間を心待ちにしています。成りたい自分に変身する輝きを…To Be Continued
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