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【感想日記】劇場版ポケットモンスター みんなの物語

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先週に引き続き「夏の映画感想日記」やっていきます。第二弾は「ポケットモンスター みんなの物語」についての感想記事。

実は何度か記事にまとめようとはしていたのですが、中々まとまらなかったので実は自分にとってはチャレンジだったりします。うまいこと言葉にできるか自信はありませんが、よければお楽しみください。それではどうぞ!


ポケットモンスター みんなの物語

2018年7月13日公開
原案:田尻智
監督:矢嶋哲生
アニメーションスーパーバイザー:湯山邦彦
エグゼクティプロデューサー:岡本順哉、片上秀長
プロデューサー:下平聡士、松山進、知久敦、大日向俊
脚本:梅原英司、高羽彩
アニメーションプロデューサー:加藤浩幸、和田丈嗣
キャラクターデザイン:金子志津枝
総作画監督:西谷泰史、丸藤広貴
音響監督:三間雅文
音楽:宮崎慎二 
アニメーション制作:OLM/WIT STUDIO
製作:ピカチュウプロジェクト
配給:東宝

ポケモン映画公式サイト
監督:矢嶋哲生「ポケットモンスター みんなの物語」(2018)ピカチュウプロジェクト

人々が風と共に暮らす街、フウラシティ。ここでは年に一度の風祭りをしてルギアの風をもらうという―

「キミにきめた!」に続く、TVシリーズとは切り離されたオリジナル劇場版である本作。舞台はどこかジョウト地方を思わせる雰囲気とポケモン。前作がサトシのカントーの旅のリブートだとすると、その旅の続きだろうか。

本作はタイトルにもあるように「みんなの物語」、すなわち群像劇だ。これはポケモン映画としてはもちろん前代未聞の取り組みとなる。サトシは一人の登場人物…もっといえば舞台装置に近い存在でスポットライトがあたるのは五人のオリジナルキャラクター達だ。

監督:矢嶋哲生「ポケットモンスター みんなの物語」(2018)ピカチュウプロジェクト

リサ、カガチ、ラルゴ、トリト、ヒスイ…年齢も性別も背景も違う五人が「風祭り」にまつわる事件に関わり物語が編み込まれていく。

五人がそれぞれ抱える問題は一見バラバラなように見えるが、一つの共通点がある。それは「ボルケニオン」の時と同じく「ウソ」だ。この五人はそれぞれの事情において「ウソ」を抱えて生きている。

元陸上選手のリサはケガをして競技を退いた。そのケガは既に治っていることを自覚しているが、ケガの恐怖の前に自分にウソをついている。

カガチは日常的にウソをつきすぎて「ホラ吹き」と呼ばれる中年男性。何をきっかけにウソをつきはじめたのか…姪のリリィのためにかもしれないが明らかにはなっていない。

フウラシティ市長の娘、ラルゴは二重のウソに挟まれている。一つは自分を守ったゼラオラを保護するために周囲についたウソ。もう一つは父親であるオリバーをはじめとするフウラシティが抱えているウソ。

コミュニケーションが苦手な研究者であるトリトは周囲との折り合いの悪さにウソをついていた。助けを求めるべき場面で助けをよべず、結果事件が発生する。

ポケモン嫌いの老婆であるヒスイは自分の過去にウソをついている。とある事故によってポケモンを喪い、それによって生まれた絶望から目を背けるため、ポケモンが嫌いだとウソをつき続けていた。

「みんなの物語」はこの五人のウソが絡み合い、そしてほどいていく過程を描いた作品といえる。ウソがテーマである以上、通してみるとやはりカガチの物語が軸になっている。

カガチは自分のついたウソによって、守るべきリリィの笑顔を奪ってしまった。自分自身に絶望したカガチを救ったのはウソをつかなければ生きていけないポケモンであるウソッキー。ウソッキーの想いがカガチを動かし、すべてのウソはウソによってほどかれていく

カガチ:ウソをやめるのは撤回だ。いくらでもウソついてやる。それで大切なものを守れんなら。

監督:矢嶋哲生「ポケットモンスター みんなの物語」(2018)ピカチュウプロジェクト

カガチ以外の四人はウソをやめることが物語の終着点だったが、カガチはウソをつく自分を受け入れて出発することを選んだ…ある種特別な位置にいる。余談ではあるが、カガチは投擲技術が高く描かれている。これは彼の「ポケモントレーナー」の適性が演出されている…といえるかもしれない。

そして、本作で唯一ウソをつかないのが我らがサトシである。先にも述べたが本作においてサトシは舞台装置、あるいは伝道師のような役割を負っている。

なんの伝道師かといえば、もちろん「ポケモンパワー」だ。サトシは人間がポケモンと共にあることの尊さを説き、人々を動かす。

サトシ:一人でできないこともポケモンと一緒ならできる。ポケモンがそばにいれば元気も力も湧いてくる。それがポケモンパワーだ。

監督:矢嶋哲生「ポケットモンスター みんなの物語」(2018)ピカチュウプロジェクト

これまでのアニポケやポケモン映画でも「ポケモンパワー」に類することは度々触れられてきたが、ここまで直接的なワードにしてきたのは後にも先にも「みんなの物語」くらいではないだろうか。

あえて批判的な立場で感想を述べると、ここまで直接的な言葉を軸にするのは説教臭さ/宗教っぽさを感じる原因になると感じた。特に初見時にはその印象が強かった。

ただ、何回か見ていくとこれは物語の構成上仕方ない部分だったのかもしれないと思う。「みんなの物語」は各々のウソを各々がほどいていく構成になっているが、それを一つの物語としてまとめるにはどうしてもキーワードが必要だ。

そして、五つもの物語をまとめるにはどうしても抽象的な言葉に頼らざるをえない。その結果生まれたのが「ポケモンパワー」なのではないか…と推測する。個人的にはそれでももう少し違う言葉を産み出してほしかったという気持ちはあるが…、やりたかったことは分かってきた気がする。

「みんなの物語」のサトシはTVシリーズでいうと「めざせポケモンマスター編」のサトシに近い位置づけだ。ポケモンと人を繋ぐ伝道師として、彼はポケモンマスターへの道を日々歩み続けている。

もし、次にサトシが私たちの前に現れるとしたらやはり「みんなの物語」がベースとなるはずだ。そういう意味でも「今」観る価値がある作品ではないだろうか。

(了)


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