【雑談】半年かけてエウレカセブンを観終えたので現アニポケと見比べてみる
現在放送されているアニメ「ポケットモンスター」(アニポケHZ)は、佐藤大氏がシリーズ構成を務めている。
シリーズ構成とはシリーズアニメにおける脚本の船頭とも言うべき役職で、複数の脚本家を束ねて一つの物語として構成するのが仕事だ。内情は個々の制作現場によっても異なるが、ストーリーの根幹を担う役職であることに相違ないはず。
これまでアニポケでシリーズ構成を務めてきたのは、冨岡淳広氏や米村正二氏など長年アニポケに携わってきたスタッフであった。佐藤氏は一新された「ポケットモンスター」を描く人員として起用されたと思われる。
さて、そんな佐藤大氏がシリーズ構成を手掛けた代表作として有名なのが「交響詩篇エウレカセブン」(以下エウレカセブンと呼称)である。以下にWikipediaの概要を引用する。
世界観としてはSF・ロボット物としてジャンル分けされる作品…と素人ながらに解釈している。いかんせんこの辺りの作品に明るくないので下手なことは言えないのだが…(ニルヴァーシュがロボットと言えるか?)。
でもだからこそ、この作品を観ることでアニポケHZが描こうとしているものの一端を知ることが出来るのではないかと思った。本当ならもっと早く感想記事をあげたかったが、見慣れていないジャンルの作品ということもあり半年かけてやっと観終わった次第。
本記事では本作品に対する素朴な感想と現在放映されているアニポケとの相似点についての所感を述べる。繰り返すが同系統のジャンルの作品に明るくないので、専門用語の解釈や作品の受け止め方が間違っているかもしれない。その場合はコメントなどで指摘していただけるとありがたい。また、視聴したのは2005年放送版で続編や映画などは未視聴の状態であることを申し添えておく。
「エウレカセブン」を観て、最初に思ったのは「専門用語が多すぎる!」
素人丸出しで恥ずかしいが、SFに免疫がない身としてはいきなり「トラパー」だの「リフ」だの「コンパク・ドライブ」だの言われて理解できるはずもない。私の「エウレカセブン」視聴はXにて用語をメモするところから始まった。
この辺りの用語をすっとばして、冒頭で理解したのは辺境の地で暮らす少年レントンが巨大ロボットとともにやってきた少女エウレカと出会うボーイミーツガールの物語であること。
世界の破滅やら、内戦やら、きな臭い雰囲気で満ちている作品世界だが、要所でレントンとエウレカのボーイミーツガールに戻ってくる。エウレカはコーラリアンと呼ばれる人間とは異なる生命体なのだが、レントンは一貫してエウレカのことを「女の子」として意識している。
エウレカは人間的な感情を持てずにいたが、中盤以降レントンへの恋慕を意識することでその認識も変わっていく…大抵はどこかしらズレているけど。
レントンとエウレカはゲッコーステイトと呼ばれる反軍組織に所属しており、そのコミュニティ内で生活している。ゲッコーステイトのリーダーはホランドという青年。ホランドはエウレカを守るためにゲッコーステイトを組織して軍に反旗を翻した。ホランドの兄であるデューイが本作における敵対勢力の塔州連邦軍の長であり、もう一人の主人公ともいうべき存在だ。
ストーリーの序盤はホランドとレントンのイザコザがメインになっている。ホランドはレントンの憧れの人物として登場するが、ホランドにとってレントンは純粋に子どもとして受け入れられるような存在ではなかった。元恋人の弟であり、英雄アドロックの息子であり、自分が庇護するべき対象のエウレカの対となる少年。
レントンに対する複雑な想いを濾過できないまま、その苛立ちを直接ぶつけるホランドは第三者目線でみると未熟な大人だ。彼を大人にするのは現パートナーのタルホである。タルホはタルホでホランドが気にかけるエウレカに対してキツくあたっていたが、ホランドの子どもを妊娠することで「大人」になり、ホランドを導いた。
ボーイミーツガールを起点にした「家族」形成は本作における重要なテーマだ。エウレカはモーリス・メーテル・リンクの親を殺した罪を償うために「ママ」の役割を背負い、レントンも最終的に彼らの父となる道を選んだ。
血の繋がりはおろか同種ですらない存在と共に生きること。果てしない困難の末にそれらは存在する…というのは頭の固い軍人の考えで「ラブ」はそれらを容易に超越する…というのが根底にあるテーゼだと私は受け取った。
本作は一見すると、難解な構成要素によって組み上げられているように見える。物理学・宗教学・民俗学・社会学その他、様々な知見によって世界の終わりが演出される。しかし、ボーイミーツガールはそれらを超越する…。
時代もあるが、いわゆるセカイ系と呼ばれた作品群に近いものを感じる。大いなる社会が崩壊し、個人の―多くは少女の―「セカイ」が全ての物語。個人の意見を言わせてもらうとちょっと合わない世界観だ。
この世界が誰かのボーイミーツガールの末に出来たものだというのは納得できるが、これからの世界もそうである保証はない。共存の道は「家族」にしかないのか?「家族」になるには「ボーイミーツガール」しかないのか?どうしても私には保守的な物語に見えてしまう。
オシャレだし普遍的なテーマを扱う深い作品…だけれどもどこかに古臭さが滲む…これが私の「エウレカセブン」に対する感想だ。人によってはそれをハードボイルドと評価するのかもしれない。
以上が個人的な所感だが、アニポケHZにおいて「エウレカセブン」の色はどれほど差し込まれているのか。
まず、一番に目を引くのはゲッコーステイトとライジングボルテッカーズ(RV)の相似性だろう。第二のキャリアを歩む青年(ホランド/フリード)がリーダーとなって飛行船に乗って旅をする組織。
かたや反軍組織でかたや冒険団なので、組織の色は大分違う…けれども、限られた空間を共有して「空」を根無し草的に移動し続けるコミュニティと考えるとやはり似ている部分はあるだろう。
「そらをとぶ」のはキャプテン・ピカチュウにとって重要なイベントであり、それに相当するのはレントンにとっての「リフ」(作品世界におけるサーフィンのようなスポーツ)ということになる。冒険の舞台が空にあることによるスケール感は共有していると感じた。
さて、次はテーマ的な相似性…「共生」に注目してみよう。人間とは異なる生命体であるコーラリアン(スカブコーラル)とポケモン。両者の立場は当たり前だがかなり違う。
コーラリアンがどういう存在なのかについては恐らく2005年放送版だけでは把握できないが、人類との共生が「これから」始まる存在として描かれているのは確かだろう。
一方でポケモンは作品世界として長い間人間と共生関係を築いてきた歴史がある。ポケモンと人間が共生できるか?という問いについては半ば常識的にYESと答える土壌ができている。その常識を問い直す作品も勿論あるが、それはカウンター的な議論になる。
ポケモン要素が薄いと評価されることもあるHZシリーズだが、基本的なポケモンとトレーナーの関係はその歴史からなる常識に則っている。リコのトレーナー道としてはさらに一歩踏み込んで、どのようにポケモンを含む他者の気持ちを汲み取っていくのかを描いていくことになるだろう。
最後に「ボーイミーツガール」からなる「家族」について。「エウレカセブン」は少年レントンと少女エウレカが出会い、家族になるまでの物語だ。
JNシリーズのサトシとゴウがボーイミーツガールを起点にしていたことは有名な話だ(ボーイミーツボーイじゃんと言ってはいけない)。単純な友情を超えてサトシとゴウはお互いにかけがえのない存在へと進展する。リコとロイがそのような関係性に発展する可能性も否定はできない。あるいはフリードやアメジオ、ドットがそれにあたるだろうか?
また、アニポケにおいて新しく「家族」を作ったといえばSMシリーズが挙げられる。サトシがカントーだけでなくアローラをもう一つの家としたように、リコが新たな場所―例えばラクア―にて新たな「家族」を形成するならばそれはエウレカセブン的な展開かもしれない。
ルシアスがリコの母方の家系にルーツを持つ人物だと仮定すると、リコの旅は自らの血族の運命を巡るものになる。ここに他の人物が関わることがあれば「家族」形成の物語に発展していくだろう。JN79話のハルヒとカツキを想像するとわかりやすい。ハルヒは自らの一族から離反したカツキを再び迎え入れることで一族としての再興を目指した。お互いに欠けているパーツを補い合って「家族」になるというのも一つの形だ。
ただし、ここで述べたのはあくまで一つの可能性であって、実際にどのように展開するかは未知数だ。個人的な感触としてHZでは「エウレカセブン」のように「ボーイミーツガール」を強調しないのではと感じる部分もある。
リコの最初の出会いはニャオハであり、冒険のきっかけはダイアナからもらったペンダント(テラパゴス)だ。JNのサトシとゴウのような人との出会いを起点にしていないため、終着点も恐らくそこにはないような気がする。
個人的な希望を述べるならば、HZでは「ボーイミーツガール」を終着点にしてほしくない気持ちが正直ある。「エウレカセブン」の感想でも述べたように保守的なメッセージ性を感じるからだ。アニポケ勢的な視点でいえば、それらのテーマはSMやJNで十分描いたのではという気持ちもある。
「エウレカセブン」で描かれた「空」への憧憬や老若男女が入り交じるコミュニティでの生活感などはHZにも確かに息づいている。アニポケという長い間人間と共存してきた異種族との出会いを描いた物語がこれらと交わることでどんな化学反応が生まれるのか…ドキメキしながら見届けたいと思う…To Be Continued
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