前戯
私は最中よりも、前戯が好きだ。
そして行為の9割は、前戯で決まると思っている。
今日はそんな前戯の話。
中学生の頃、私はバスケットボール部に所属していた。
同好会からスタートした、体育館すらも使えない弱小チームだったが、声を一番出すという理由から、私がキャプテンになった。
私が中学2年生の時だ。
地元の体育館であったプロバスケの試合前に、
各中学校の代表選手がそのコートで試合をするという催しがあった。
うちの中学からは、キャプテンである私が選ばれた。
そして、大会当日!
私はコートに居なかった。
私は観客席に座っていた。
不幸にもその4日程前にインフルエンザにかかり、学校側から試合に出場する許可が降りなかったのだ。しかし、観戦は許された。
いや。ここでは「幸運にも」が正しいかもしれない。
各中学の強豪選手に紛れて、マルコメ坊主が大観衆の中、試合をするのは小っ恥ずかしかったのだ。
そして試合を見終わった帰りの車の中、
私は試合で恥をかかずに済んだことにホッとしたのだが、一応選抜選手としてのメンツを保ちたかった。
「あぁ、今日の前戯試合、出たかったなぁ」
中学2年生の私にとっては「前座」も「前戯」もよく分からない言葉だった。
車内で発した自分の過ちに気づいたのは、もっとずっと後のことだった。
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