つまり君はそんな奴なんだな

「そうか、そうか、つまり君はそんな奴なんだな」

激昂するでもなく何かを憂うわけでも無く淡々と目の前の男は言ってのけた。

俺のこれまでの葛藤や苦悩。
そんなものなど知ったこっちゃ無いその目は
自分の人生を否定するためだけに開いていた。

確かに俺はNARUTOをコミックからでは無く
同人誌から入った。
だがそれは男として最低限の教養を身につけようと思ったからとった行動であり、友達の少なさを悲観していた僕の苦悩を何も読み取らず
『そんな奴』と片付けてしまえるほど愚かな行為では無いだろう。

確かに俺は初めての一人暮らしでコーヒー豆を挽く機械を買った。
だがそれは『やっと実家から解放された』開放感からとった行動であり、豆からコーヒーを作ったらお母さんに心配をかけるだろうなという苦悩を何も読み取らず『そんな奴』と片付けてしまえるほど愚かな行為では無いだろう。

確かに俺はチャリティーオークションで
「こちらの商品500円からスタートします！」と司会が言うや否や
「505円！！！」
と、到底落札されない金額を言ってのけるというボケを一貫して続けた。
だかそれは万が一このチャリティーオークションが盛り上がらなかったらシャツを出品したモデルのJOYが泣きながらグリーン車で帰るだろうなと思った末とった行動であり、俺とJOYの苦悩を何も読み取らず『そんな奴』と片付けてしまえるほど愚かな行為では無いだろう。

確かに俺は人類で初めてスパチャをした。
だかそれは新しい機能を使ってみたいと思った末とった行動であり、配信者と特別な関係になりたいという俺の苦悩を何も読み取らず『そんな奴』と片付けてしまえるほど愚かな行為では無いだろう。

確かに俺はドリンクバーしか注文してないのに
とぼけた顔で横にあるスープバーからスープを汲んだ。
だかそれはちょっとしょっぱい液体欲しいなと
思った末とった行動であり、あまりにもフリーで置かれているオニオンスープの誘惑に惑わされ続けた俺の苦悩を何も読み取らず『そんな奴』と
片付けてしまえるほど愚かな行為では無いだろう。

確かに俺は、コンビニで会計を済ませお釣りを
受け取った直後思い出したかのように特性豚まんを注文した。
だかそれは、もともと肉まんが欲しかったのだが
陳列されてなくて諦めた後「いや、豚まんでもいけるか？」と閃いたからとった行動であり
『肉まんが無かった』という悲しみを一度乗り越えた俺の苦悩を何も読み取らず『そんな奴』と片付けてしまえるほど愚かな行為では無いだろう。

罪を憎んで人を憎まず。
そんな奴だからこそ、そんな人に僕はなりたい。