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多摩川の生き物とヒト その154 番外 東京都立大学で牧野富太郎氏に    ついての講演会      "23/9/23

「牧野富太郎博士(博士になっていた!)が遺した植物標本と現在の植物分類学の研究」という題で、東京都立大学で特別講演会が行われた。

最初に、牧野氏の経歴が紹介された。東大から追い出された件については「東大はそんな鷹揚ではない。牧野さんもこだわっていなかった。」と東大に肩を持っていた。しかし、東大は組織にそぐわない人を排除し、冷遇する。そのことは生涯、万年助手だった宇井純氏などに見られる。標本も東大が引き受けず、都立大で引き受け、収納庫(ハーベリウム)を作った。これらの経緯を説明し、第一部が終了した。

講演会のレジュメより。イネ科などの地味な花は無くなっても、わからない場合が多い。

第二部では研究成果と言う事で、シダを取り上げ、例えば、オオタニワタリでは同じ種でも生える場所によって、形態が異なること、さらに雑種では親が全縁なのに対し、子は羽状複葉になるなど、非常に興味深かった。また、コマクサなど、全国に分布する種が地域ごとに遺伝子の形(タイプ)が違っている事がはっきりした。その根拠となったのはDNAである。牧野氏が採取した標本からもDNAが採れるようになり、標本はその地に存在した証拠以外にも、DNA解析の一翼を担うようになったわけである。標本を採り、保存する意義が新しく加わった。そのため、DNAの解析ができるようにするため、DNAが変形するホルマリンではなく、アルコールで液浸するようになってきた。これから、また、100年たつと、DNA以外に何が見つかるのだろうか。

講演会のレジュメより。日本各地にあるツリバナは同じ種でも、DNAが異なる。4つの地域に分かれている。

また、同じ種でも、地域によって遺伝子のタイプが違っている事は地域毎に目に見えないけれど、タイプが違っている事を表している。だから、安易な樹の移植や放流は止めるべきである。私も、震災復興ということでドングリの山を戻そうということで、ドングリを求められた。これは考えれると、恐ろしい事だった。各地から遺伝子のタイプが違うどんぐりが集められ、元にあった遺伝子が分からなくなったり、交雑する可能性がある。知らない事は怖い。
私が関係しているカワラノギクでも多摩川から他の場所に移動してはいけないと思った。ましてや、相模川などの他の河川からの移植は絶対に避けなければならない。
面白い講演会だったが、次の予定があるので、後ろ髪を引かれる思いで、途中で都立大を後にした。植物分類学の底辺の拡大や後継者育成にもなると思うので、大変だが、是非とも、このような講演会を引き続き、開催して欲しい。

9月30日まで、展示会が行われていた。反対の牧野標本館はいつでも、見学できる。

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