多摩川の生き物とヒトその86水系 カワラノギキクシンポジュウム23/2/25
2月25日、国立(くにたち)で「多摩川におけるカワラノギクの野生絶滅をめぐって」という題で、カワラノギクシンポジュウムが開かれた。9名の方から、カワラノギクなどの保全についての報告があった。
Ⅰ 都道府県版レッドリストと地域絶滅
都環境局は自然を守れるのか。
都環境局の方から、東京都レッドデータ版が2020年に改訂された。そこで、最初に作成された1990年と比較した。
スブタなどの絶滅種が増え、自然環境の悪化に歯止めがかからない状況との事。 原因としては自然環境の悪化、里山の変化、そしてシカなどの害獣が多くなったことが挙げられていた。例えば、カワラノギクは絶滅危惧ランクがVU(絶滅危惧Ⅱ類)からEN(絶滅危惧ⅠB類)へと引き上げられ、悪化した。しかも、2019年に野生絶滅になり、野生種がいなくなった状況になっている。永田などで盛んに咲いているのは現地で播種して残っていることになる。カワラノギク以外にも、レッドデーターの内容はこのように悪化しているといえよう
都の環境局はこれからカワラノギクを始め、どうやって自然を保護していくのか。多摩川から手を引いているが、神宮外苑の再開発など、環境局が本当に自然を守れるのか、問われていると思う。
Ⅱ コシガヤホシクサの絶滅と野生復帰
目立たない草にも光を
科学博物館の方から報告。このホシクサはカワラノギク以上に地域限定の種。しかも、カワラノギクとは違い目立たないホシクサ科となっている。ノギクと同じ、野生絶滅になっている。違うのはノギクは多摩川などで生育地に播種し、生育しているのに対し、ホシクサは植物園で栽培されていることである。
この目立たたないホシクサが見つかり、無くなり、再発見されるまでの様子がわかる。このホシクサは野生復帰を目指している。
Ⅲ 多摩川の堤防改修と貴重種の保全
多摩市の堤防に生えているハタザオとレンリソウに焦点。ハタザオは堤防工事に伴い、移植。レンリソウは関戸橋下流に生息。草刈りの時期をずらすなど、管理方法を変えていけば、維持できそう。レンリソウを含めた生態系の維持が大切だろう。
Ⅳ 多摩川におけるカワラノギクの野生絶滅
1)カワラノギクプロジェクトによる調査
明治大学の方からにより、多摩川に多く生息していたカワラノギクが減少したとの報告。その結果、永田地区で播種による増加を目指した。そのため、上流側のA工区では維持ができ、大量に開花した。洪水のなさなどにより、再び減少。19年の大洪水により、消失。野生株が残っていた友田の生息地も19年の同時期、野生株が消失した。これにより、多摩川での野生種が無くなり、野生絶滅となったことが報告された。
2)種子を食べる昆虫ツツミノガ属の一種の絶滅
明治大学の方からオンライン報告。ツツミノガはとんぶり(ホウキグサ、コキアとして有名)の害虫として有名だったが、個体の変異が少ないため、研究者に相手にされなかったそうである。2019年以降、発生していないとの事。その理由を聞きたかったが、時間切れ。
3)生息地の環境を取り戻すために
オンラインで東大の方が報告。多摩川の礫の特徴を地質学的に解説。中生代ジュラ紀の古い層が多摩川の元の地層を造っているとの事。どうして、礫が少なく、砂が増えたのか、いろいろな説や要因があることが分かった。単純に、砂が増えただけではないことである。
4)礫川原を主なハビタット(生息地)にしている種の保全に取り組んでいる方から
種だけを保存していいのか。
α)うじいえ自然に親しむ会
氏家などの奥鬼怒で活動している団体から報告。キャンプ場を造る自
然保護団体でもある。
β)桂川・相模川流域協議会
湘南小学校と共同し、相模川にノギク用の生息地を造成し、保護地にし
たとの事。カワラノギクだけを守ればいいというものではないだろう。
川の自然破壊につながるだろう。
γ)カワラバッタ調査
カワラバッタの現状などが明治大学の学生さんから報告。カワラノギク
と同じように、生息地が3か所へと減少した。ノギクなども含めた保護
策が必要だろうと述べていた。そうだろうと思う。
全体としてカワラノギクなどの絶滅危惧種だけを守ればいいのではなく、生態系全体をも守っていく必要がある。
そして、カワラノギクなどの保護をめぐって、行政、市民などが播種や移植など、ばらばらに活動を行っている。生態系全体の保全や移植の可否など、計画を出し、調節する組織が必要だと思う。
シンポジュウムの資料は下記からダウンロードできる。
https://drive.google.com/drive/folders/1OoXvA2eIHk13amuDuaNAWu_wzdEfgyck?usp=sharing