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【米国株】分水嶺となるNVDA決算週

週明け8/28には
今後のマーケットの動きを大きく左右する
NVDA決算発表が控えている。

本稿では
NVDA決算における個人的な見解を中心に取り上げたいと思う。



今週のマーケット振り返り(簡易版)

8/19(月)
 8/19-22 民主党大会

8/20(火)
 
台湾輸出受注では
 "スマートフォン新製品の在庫効果も相まって"
 ファウンドリやウェハーチャネルからの受注が
 増加していたことが分かった。

8/21(水)
 
TGT決算では
 米国の個人消費は堅調で、Q3ガイダンスにおいても
 消費低迷の兆候は見られなかった。

 韓国輸出(メモリ)の台湾向けは
 $1,195Mから$1,320Mへと増加していることが分かった。


 8/21-24 Intelligent Asia 2024では
 NVDA Jensen Huang CEOの訪問はなかった

8/22(木)
 8/22-24 ジャクソンホール会議

 GOOG 新型Pixel 9出荷開始(Pixel 9と9 Pro XL)

8/23(金)
 パウエル議長発言抜粋
(A)インフレ率が2%に戻る
   持続可能な道筋をたどっていることに
   ”私は自信を深めています”
(B)失業率の上昇は主に労働者供給量の大幅な増加と、
   以前のような猛烈な雇用ペースからの減速を反映している
(C)労働市場のさらなる冷え込みを求めることも歓迎することもない
(D)「政策を調整すべき時が来た」方向性は明確で
   利下げタイミングとペースは到来するデータ、
   進展する見通しおよびリスクのバランスに依存する


来週の予定

来週以降の予定

来週はNVDA決算を除けば
8/30のPCEぐらいしか主要な経済指標の発表はなく
また、PCEのコンセンサス予想は
Core MoM+0.16%、YoY+2.7%
(前回MoM+0.18%、YoY+2.6%)と
HeadlineおよびCore共にYoYで反発が予想されており
予想通りの数値であったとしても
株価上昇の流れは取りづらい展開が予想される。

PCEおよびCore PCE推移試算
(依然として、ディスインフレのパスは楽観は出来ない)



NVDA決算の行方

本項では
Q2売上高試算内容を簡易に説明し
Q3ガイダンスおよび今後のBlackwellの動向に関して
個人的な見解を述べたいと思う。

<Q2売上高試算内容>
ここではQ2売上高に関して
自身の試算内容を簡易に説明したいと思う。

試算する際の要点は以下である。
・1Q25実績から売上増分を見積り算出する
・売上増分はSK HynixおよびMUのHBM3Eの増分を基に算出する
・試算の際にはTSM売上高、台湾輸出受注実績を考慮し
 矛盾が発生しない様に調整する

それでは本題に入りたいと思う。

まずは、
Q1実績を振り返ると以下の様になっている。
全体売上高:$26,044M
内DC売上高:$22,563M

<DC売上高内訳詳細>
Compute:$19,392M
Networking:$3,171M

ここからさらに細分化すると
・GH100:$10,153M
・H100:$9,239M(H20、H200等は極小のためH100に含める)

Q2売上高はこの水準をスタートに
TSM、SK Hynix、MU などの決算情報および
台湾輸出受注から導出する。

次は
SK HynixおよびMUのHBM3E売上増分を見てみる。

MUは3-5月の期間ではあるが
NVDA Q2決算期間の5-7月を考える上で
同期間に顕著な生産能力拡張は無く
また、HBM3Eはフル生産していたことが分かっているため
同水準の生産量であったと予想されるため

NVDA Q2(5-7月)の期間に
MUは$100M分のHBM3Eを出荷していたとする。

次にSK Hynixでは
HBMの売り上げが計上されるGraphicにて
Q1からQ2にかけて15%の値上げがあったと仮定すると
HBM3E単体で$491M程度の増加であったと試算される

よってHBM3Eの各社の売上高は以下となる。
SK Hynix :$491M(Blackwell向け)
MU    :$100M(H200向け)

これよりNVDA売上高を実際に計算する訳だが
計算する際にはNVDAのGross Marginを基に考えることとする。
ここで注意が必要となるが
NVDA GPUの原価の中で
HBMが占める割合は高いものの完全にイコールでは無く
以下の過程においても
NVDA GPUの”単価”
HBM3Eの”単価”の5倍と言うわけではない
その他の経費が発生し
歩留まりにより変動するファクターであるので注意のこと。

具体的に見ていくと
NVDA Q1でのGross Marginは
Non-GAAPで78.9%でおよそ2割が原価であることが分かる。

よってここではHBM3Eの”売上高”の5倍が
NVDA GPUの”売上高”に寄与すると仮定して話を進める。

SK Hynix :$491M(Blackwell向け)
→$2,456M(Blackwell向けの売上)

MU   :$100M(H200向け)
→$500M(H200向けの売上)

最後のDCに含まれるNetworkingだが
CallにてQ2は増加が予想されているため
QoQ10%増とし、$3,171M→$3,488Mと見積もった。
Networkingに関しては本試算から上振れの可能性は十分あるだろう。

まとめると
DCの売上高が
$22,563M→$25,845M(+$3,282M、14.5%増)
全体では$29.1B程度であると予想している。

NVDA revenue by each of the specialized markets

当然、上記試算での
HBM3Eの売上高に対する5倍では低いとの見方もあるだろうが
状況的にはそれほど大きく外している試算だとは思えない。

・5倍以上にすると台湾輸出受注の米国での売上上昇率と矛盾する
 (該当期間の上昇率は13.6%しかない)
・TSM Q2決算でのHPCの上昇率と矛盾する
 (同期間には中国の大幅増もあり増分28.5%を大きく下回る水準になる)
・Blackwellの遅延問題の話がありCoWoS-Lの歩留まりの悪さが
 上記5倍の倍率を押し下げている可能性がある
・GeForce RTX 40シリーズの深刻な不足が発生するとの噂あり
 (NVDAの生産枠内で、歩留まりの悪さをカバーした可能性がある)

<NVDA Q1決算Callより>
製品面ではコンピュート収益の大部分は当社の
Hopper GPUアーキテクチャによるものです。
当四半期におけるHopperの需要は引き続き増加しています
当社のデータセンター売上高に占める割合は40%台半ばを占めています。

H200は第1四半期にサンプル出荷を開始し、
現在は第2四半期の出荷に向けて生産中です。
最初のH200システムはジェンセンから
サム・アルトマンとOpenAIのチームに納品され、
先週彼らの素晴らしいGPT-4oのデモを動かした。

H100の供給は証明されていますが、
H200についてはまだ制約があります。
同時に、
Blackwellはフル稼働しています。


ネットワークの前年比成長率は、InfiniBand が牽引しました。
前四半期比では小幅な落ち込みとなりましたが、
これは主に供給のタイミングによるもので、
需要が当社の出荷能力を大きく上回っていたためです。
第 2 四半期には、
ネットワークは再び前四半期比で成長すると予想しています。

第2四半期の見通しについてご説明します。
総収益は280億ドル、プラスマイナス2%を見込んでいます。
すべての市場プラットフォームで前四半期比の成長を見込んでいます


Blackwellは生産が始まってから少し時間が経っていますが
本番出荷は第2四半期から始まり、
第3四半期には増加し、
第4四半期にはデータセンターが立ち上がる予定です。


ジェンセン・ファン
今四半期を通じてHopperの需要は増加していると見ています。
また、H200への移行、Blackwellへの移行に伴い、
しばらくの間は需要が供給を上回ると予想しています。

NVDA Q1決算Callより
MU Q3決算資料抜粋
SK Hynix決 Q2算資料抜粋
NVDA Q1決算資料抜粋

自身の試算では
過去のコンセス予想を大きくビートする様な展開とはならず
一定程度の失望を買う可能性がある。
また、状況的にもGross Marginも低下することは想像に難く無く
EPSの下方修正が生じることは避けられないだろう。

8/28の決算ではしっかりと確認すべき事項である。


<Q3ガイダンスおよび今後のBlackwellの動向>
Q3ガイダンスについては
下記Noteの見立てからほとんど変化していない。
GH200、H200および中国向けのH20で売上を凌ぐが
Gross Marginの低下は危惧される。

今後の展開だが
Blackwellの対応に関して正式見解を待ちたい。

9/4-6 SEMICON Taiwan 2024が予定されており
SK Hynix、TSMおよびNVDAとの緊密な協力計画を発表し
次世代HBM技術開発に注力する旨が報じられている。

上記に併せて
Blackwellの道筋のヒントを得たいところだ。

その他、余談となるが
韓国から台湾へのメモリの輸出が5月以降で大きく伸びている。
(H.S Code 854232、DRAMやフラッシュメモリ等が含まれる)

SamsungがAAPL iPhone用メモリを出荷している事を考慮しても
余りある量を出していることが伺える。

つまり
NVDAの売上高はTSMと上手く連携すれば
凄まじい上昇を果たす可能性を秘めていると言える。

仮に今回の決算結果を受けて
日柄を伴う調整が起きたとしても
復活を果たす可能性は高いだろう。

韓国メモリー輸出(地域別)およびTSM月間売上高
電子製品(台湾輸出)および
韓国から台湾へのメモリ輸出推移

最後に雑感となるが
8/28 NVDA Q2決算では
Q2売上高や利益率、Q3ガイダンス、今後の製品リリース計画などで
失望を買い調整を向かえる可能性はあるが
悲観せずに状況を把握し
貴重な押し目は適宜拾いたいと考えている。

先週8/21に
NAAIM Numberは74.68と株価水準を考慮すると低いが
これを<上昇余地がまだある>と捉えるか
それとも<警戒のためポジションを落としている>と見るかで
来週の立ち回りが変わってくるだろう。

自身は後者のスタンスのため
来週は警戒を強めて臨むつもりである。

NAAIM Number


参考リンク

SemiAnalysis
Nvidia の Blackwell の改良 - 出荷の遅延と GB200A の改良プラットフォーム

TSM CoWoS
https://3dfabric.tsmc.com/english/dedicatedFoundry/technology/cowos.htm

Resonac
2.xD、3Dパッケージングにおける課題:基板の大面積化と反り





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