小学物語4

おらの父さんは鉄砲打ち
幼稚園の頃から冬山へ連れて行かれた

チビという名前のポインターだった
白黒の大きなブチ模様で

とにかく体つきがしなやかで
美しい犬だった

冬山ではチビとおらを置きざりにして
父はどんどん先に行く

吹雪でそもそも視界がとれない
2~3m先までしか見えない

体重が軽いから
深く雪に長靴が埋まらず

少しずつ前に進む

チビはおらの前を先に行ったと思えば
また戻ってくるを繰り返して

こっちだよと
道を教えてくれる

曲がりくねった細い密集したブナの林
所々に笹の葉が生えている中を進む

おそらく林道だろう
木のない平らな道に出る

チビが離れている時間が増える
もうわかるだろうと思ってるのか

斜面の途中の穴に鼻を突っ込んだり
登ったり下りたりしてはしゃいでいる

林道沿いに歩く
見覚えのある林に着く

勝手に自分の名前を付けた木がある
やっと麓が見えた

チビと並んで歩く
市役所 小さな市場みたいな商店街

家に着くと
父がかんじきをまきストーブの前で
あぶっていた

国土地理院の図面を出して
山道を2km以上歩いたぞと言う
ほめているようだった

チビは床下に潜り込んでいった
覗いてみる

確かにいる気配はするが
出てくる感じはしない

オラが死ぬまで一緒に居て欲しい

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人はなにもわからないまま
年月を過ごしていく
瞬間瞬間を大切に生きていって欲しい

娘へ


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