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男子宝石〜何も言えなくて…夏〜

食料・物資の不足が叫ばれ早数十年。
物価高騰により貧窮した人々は、コールドスリープの道を選んだ。
俺達が今いる建物の下にも、そのうちの一人が眠っている。アレと一緒に…。

地下室に下りた俺達は、装置のロックを解除しカプセルの蓋を開けた。冷気が部屋に充満する…。
「おばちゃーん」
清が声を掛けると、寝ていた人物が目を開けた。
「なんだ坊主達か…今日もこれかい?」
駄菓子屋のおばちゃんは、隣に置いてあった井○屋のあずきバ○を差し出した。
土埃と汗に塗れて遊んだ夏の夕暮れ、俺達男子は必ずこれを食べた。
後で小豆が"赤いダイヤ”と呼ばれていた事を知り、俺達は「男子宝石」と呼ぶ様になった。
だが今では本物の宝石並の値段だ。
「みんな変わらないね。まだ宝探しごっこしてんのかい?」
「うん。いただきます」
硬い事で有名な男子宝石だったが、数十年振りに噛じると、それも宝石並に思えた。
「で、おばちゃんの事どうする?」
武が言った。だが誰も何も言えない、そんな夏の日だった。

(418文字)

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