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バイリンガルギョウザ

中華料理屋で頼んだ餃子が、僕と留学生の友人に話し掛けてきた。
「こんにちは」
と、最初に挨拶したのは焼餃子。
「こんにちは」
「ニーハオ」
と、言語を使い分けたのは水餃子。
友人が言うには水餃子は中国から泳いできて、その国の言葉を覚えるとの事。つまり、バイリンガルギョウザなのだ。
水餃子という程だから水に濡れても平気で、新しい土地にもすぐ順応出来る。つまり、水に慣れるのも早いらしいのだ。
「しかし餃子が喋るなんて初めて知ったよ。ヒダの所がパクパク開くけど、そこが口なのかい?」
「そう。だから全体が顔みたいなもんだよ」
だが餃子達と話しているうちに、僕は異変に気付いた。水餃子の使う日本語が全く理解出来ないのだ。
どうやらデタラメに喋っているらしい。だがその事を指摘しても、一向に態度を変えようとせず喋り続ける。

「中には、さっきのみたいに喋れないのに堂々と喋れると言い張る奴もいるんだ。水餃子は焼餃子と比べてほら」
「なるほど、面の皮が厚いのか」

(413文字)


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