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初めての鬼

一人で泣いていると、雪ちゃん達がトランプに誘ってくれた。
そして四人で遊んでいる途中、雪ちゃんが言った。
「これ、只のババ抜きじゃなくてオニババ抜きじゃない?」
「うん。何か変だと思ってたんだ」
と、亮君も言った。
オニババ抜きとは、ババの代わりに鬼婆(略して鬼)が入っているトランプがあって、それでババ抜きをやって負けた人は、ゲームが終わっても鬼から離れられないらしい。
「そんなの只の都市伝説だよ」
徹君が言う。僕もそう思っていた。
「そうだよね。ほら武君の番」
僕は、雪ちゃんの持っているカードを一枚引いた。

みんなが帰った後、部屋でテレビを観てると、鬼みたいに怖い顔をした婆さんが入ってきた。
「くぉ〜ら〜!なにしちょる〜!」
僕の体は震えていた。
「たけし〜!勉強したか〜!」
また泣いてしまった。だってまた怒られるとは思わなかったから。
「婆ちゃん…帰ってきてくれた…」

その日は僕にとって初めてのお葬式で、初めて鬼を引いた日だった。

(410文字)

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