見出し画像

Flowers Of Romance〜呪いの臭み:勝手に楽曲コラボ〜

白菊に囲まれた父の体に蓋がされた。
釘を打つ母の瞳はまだ潤んでいる。
告別式でも語った恋愛話を思い出しているのだろうか。

外に出ると雪がちらついていた。
僕はバスに、母は霊柩車に乗り火葬場へと向かう。
信号で止まり、外を眺めると軒先に飾られた姫榊の花が見えた。
鰯の頭の代わりで、この花の臭いも鬼は嫌がるらしい。海のない地域ならではの習俗だ。
「他の親族が乗らないのも、ここだけなんだって」
隣に座るカナさんが言う。
その人は、最後に花を入れた女性だった。

火葬場に着くと蓋がこじ開けられ、父の体は用意されていた別の棺に移された。
中には白菊ではなく、姫榊が詰められていた。
強烈な臭いに鼻を覆いながら、亡き祖母の話を思い出す。
生前悪さをした者は二度とその体に戻らぬよう、鬼や亡者の嫌う花と共に葬られる。
そしてあの世でも、その者の周りには同じ花が咲き続ける。
それは生者から死者への呪いの臭み
もちろん全員に対してではない。
今回は祖父に続き、千八人目。

(413文字)

毎週ショートショートnoteお題「呪いの臭み」参加作品

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?