見出し画像

フシギドライバー

とある覆面レスラーがいた。
彼は数々のプロレス団体に殴り込みをかけると、特殊な投げ技を使い次々と対戦相手をマットに沈めていった。

「こんばんは」
「時は来た、それだけだ」
「1+1は2じゃないぞ。オレたちは1+1で200だ。10倍だぞ10倍」
「猪木、お前を倒すのに3分もいらねえ、5分で充分だ!」
覆面が使ったのは、パイルドライバーの派生技フシギドライバーだった。
この技を喰らった者はリング上や会見の場等で、上の様な不思議な発言をするようになってしまうのだ。
各団体はリベンジマッチを申し込もうとしたが、その居所も正体もわからないまま時が流れ覆面は行方知れずとなった。

それから数年後、再び覆面が動きだそうとした時、一人の男が彼の前に現れた。
「オマエ、平田だろ!」
男は腰の手術跡を撫でながら問い質した。
「平田じゃねえよ」
覆面はそれだけ言ってその場から去った。
男もその後を追わなかった。
何故なら不思議と、平田じゃないような気がしたからだ。

(411文字)

毎週ショートショートnote お題「フシギドライバー」参加作品

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?