1話 雨宮玲奈という女
2026年3月1日。
「皆さん、卒業おめでとうございます〜〜」校長が卒業生に向けて行う祝辞。小学生からこの学院に通っている私には聞き慣れているため、つい寝そうになってしまう。私以外にもそういう生徒は複数いるのではないだろうか。毎年、似たような言葉を並べて校長先生はこの日、全校生徒、来賓、保護者等の前で祝辞を話している。
だが例え言葉が似ていたとしても私達のことを思って言ってくれていることに変わりは無いと思う。そう思うと少し嬉しいと思った。
「校長先生、祝辞ありがとうございました」長いようで短かかった校長の祝辞が終わり場面は来賓の祝辞に移った。
「続いて、来賓の皆様から祝辞を頂きたいと思います」1人1人司会者から名前を呼ばれると来賓の方はステージにあがりおめでとうございますという言葉と教師や保護者に対して一言言ってから自らの席へと戻って行った。来賓は出席者が多いため、3人ほど祝辞を聞いてから司会者が他の来賓者の紹介を始めた。私にしてみれば知らない人ばかりだった。いや、正確には知っていると言った方がいいかもしれない。私の瞳は特別で目の前に映りこんだものを忘れることはないからだ。
「高校では友達できるといいな」そんなことを思っていると来賓紹介も終わり卒業式も終わりが近づいてきた。
「以上をもちまして、予定していた内容が終わりました。それでは卒業生が退場します。卒業生、起立!在校生は拍手で見送ってください」司会者の指示に従い教室へ向かう卒業生一同。
「いやぁ、疲れたね!」卒業式を終え、教室へ戻るとクラスメイト達が話し始めた。
「3年間ありがとう」「こちらこそ」「高等部でもよろしく」など様々な声が聞こえてくる。
こういう声を聞くと考えてしまう。私の中等部の過ごし方はこれで良かったのか、と。勉強も部活も手を抜いていた訳では無い。ただ、何事も程々にやるのが1番いいと思っていただけだ。
「皆さん、改めて卒業おめでとう」私が考え事をしていると担任の冴島先生が教室に入ってきた。もちろん保護者たちもだんだんと教室に入り始めている。
「私の親は、、」入口付近を見渡しても居ないことは明白だったため口には出さない。
この後の時間はクラスでビデオを見たのち、バスで料亭に移動後、それぞれが食事を楽しんだ。
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