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【実録!車両故障シリーズ1】夜間の走行中、前照灯が消える!

(写真と本文に関連はありません)

都市部の通勤線区で、ワンマン列車を担当していた時のエピソードだ。

泊まり勤務の中盤、夜ラッシュのピークである18時台から交代乗務し、約2時間が経った。帰宅客の数も落ち着いてくる頃だ。

線路内は街灯があるわけではないから、町中の道路に比べたらはるかに暗い。踏切には投光器が設置されているから多少は明るいが、それ以外は街の明かり次第といえる。ビル街や駅近くなどは割と明るめだが、郊外住宅地エリアはかなり暗い。地方の田畑の中や山中は文字通り真っ暗である。
前照灯も夜間はもちろんハイビームで使うが、体感としては乗用車と同じぐらいの性能で、鉄道用だからといって、スゴい先まで照らせるモノが装備されているわけでもない。旧式のシールドビームだとせいぜい照らせても、200mぐらい先の線路をボヤッとぐらいかな…というのが、私の経験からくる感想だ。

最近の電車にはLEDやHIDが使われて、在来のライトに比べたらかなり明るくなったが、白色系の光線は同僚の間でも好みがわかれていた。運転士は仕事道具である「その日の担当車両」を選べるわけではないから、それと同じでもちろんライトの種類も選べない。新しい白色系と在来の電球色、複数の種類の車型(しゃがた)を担当する職場では、その日に乗る車型や車号などで一喜一憂とまではいかないが、夜間走行に対する運転士の心持ちが変わることはままある。

ちなみに私の好みは、在来型、電球色のシールドビームだ。理由は光線が柔らかい感じがすることと、冬の雪の中でも光線の判別がしやすいからだ。

先ほど述べたように、電車も自動車の運転と同じで、夜間は前照灯をハイビームにして走行するのが基本だが、対向列車が見えたらロービームに切り替えて、お互い気を遣うのがマナーだった。
(同じ条件でもロービームにするかどうかは、各鉄道会社や職場の指導方針等による)

この時、勤務していた会社の車両のハイビーム切替スイッチは、ワンハンドルマスコンの隣にブレーカスイッチ形のものが付いていて、それをパチンパチンと前後に切り替えるタイプだった。

この日の担当車両は、このハイビーム切替スイッチがちょっとグラついていたが、切り換える機能に問題は無いし、不具合の引継ぎも無かった。取付部のネジでも緩んでいるのだろう、あとで交代したら検査係に伝えるか…ぐらいに思っていた。

列車の走りっぷりは順調そのものなのだが、ふと「ジジジ…ジジ…」と、かすかな音がたまに聞こえることに気が付いた。もちろん、走行中は揺れているからいろんな音がしているが、この音は普段聞いたことがない。

お客さんの携帯電話のバイブ着信の音か?
あるいは、走行中の振動を拾って機器箱のフタがビビッているのか?
それとも、近くに羽虫でもいるのか?

いろいろ考えを巡らせるが、わざわざ列車を止めて点検するような異音では無いから、そのまま運転する。

交代駅まで2駅。
10分もすれば遅めの夕食休憩だ。今日の弁当のオカズはなんだろう…などと、気持ちは夕食に移りつつあった。

駅を発車して惰行に移り、停車ブレーキの開始位置をにらんでいたその時だ。

バサッと前照灯が全て消えた。
真っ暗である。

「うわっ!?」

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