杉原千畝 スギハラチウネ

《要約》※以下、ネタバレしかないです。
満洲国の外交部で勤める千畝。モスクワ日本大使館への赴任を予定していた彼だが、仲間の失態から責任を取って件は取り消しとなった。
次の赴任先としてリトアニアのカウナスで領事館を開き領事をするよう命じられた千畝。そこでソ連の諜報活動を行うことになる。
ところが世界情勢はどんどん傾いていき、リトアニアはまもなくソ連に併合されることになっていた。
またソ連がポーランドを併合した事で行き場を失った難民達が彼のもとまで押し寄せる。
彼らに触発された千畝は、遂に外務省の許可なく日本経由のビザを発行した。
ソ連に併合され、領事館を終いにすると次はベルリンで領事代理を務めることになった千畝。
ドイツ大使に、ドイツがソ連に侵攻する準備を整えている証拠を差し出し、このまま日本がアジア侵略を続けるとアメリカと戦争になると彼は忠告した。
まもなく独ソ戦が始まり、情報をリークした事でドイツから彼は追われた。
一方、難民達はリトアニアからシベリア鉄道を使ってウラジオストクに到着した。一難あるが無事彼らは日本に辿り着くことが出来た。

《感想》
まず初めに、史実の再現に迚注力してる印象を抱いた。
というのも、場面毎に音声での説明はなく科白や映像中心に進行していったため、映画フィクションを観ているのではなくノンフィクションで起こった事を観ているのだと認識されられた。
また所々に実際の映像を挟んでいて、収容施設に送る為の車に男女別でドイツ兵が押し込んでいくシーンは特に印象的だった。
ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)
当時のソ連からこのように認定されるのは、外交官として否、人としてこれより名誉な称号はないだろうと思った。
千畝達が世界は車輪のようなものだと語っているシーンが特に興味深かった。
難民の人々と出会って千畝がビザを発行したように、ウラジオストクの領事官やJTBのパーサーも難民の様子を見て世間の意見に惑わされず、人道的な行為を優先した場面に心が動かされた。
ドイツ大使の大島がヒトラーに魅せられている様子が散見されて、当時のドイツにいる人達にとってヒトラーへの絶対的な信頼、彼の影響力が窺えた。
時分の背景を考えれば、大島が異常なわけではないのだろう。この状況は一寸ギャンブルで合理的な判断が出来なくなる、謂わばティルってる状態に近いのかなとも思った。
それにしても、千畝の諜報と推察力には脱帽するしかない。

《この映画を通して》
戦争という人から家族や友人を平然と奪う状況は恐ろしい。誰しもがゆとりをなくし、平気で特定の民族を差別することを厭わず、虐殺を容認をする環境を産み出す。
そりゃ何かに縋りたくなる事も容易に想像出来るし、総統がヒトラーでなくとも似たような状況に陥っていたのかもしれない。それが偶々あの時代で、ドイツで、ヒトラーであったからというわけで。
だからといって断じて彼を、彼の周りの人物を正当化するつもりもないし、激しく非難する。
そのような状況がこれから起こるかもしれないし、もしかしたら火蓋は既に切られているのかもしれない。
大小はあれど、現代でも似たような事は起こっていると思う。数を挙げればキリがないが。
そう考えた時に、今の私に出来る事は恐らく屹度ないだろう。作中で”車輪“の例え話が出てきたが、これは権力にも応用出来ると思う。立場がある人間ほど車輪が大きくその為責任も付き纏う。
私も誰かの為に大きい車輪を持ち、使える人間になりたいと思うと同時に、本来権力は人の為に使うべきものだと考えさせられた。
第二次世界大戦前後の映像を見て、改めて世界史と日本史を学びなおしたくなった。


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