風呂上がりのカノジョ

風呂上がりのカノジョ
俺:南條さん、河童:三島さん、カノジョ:女の人

カノジョ:勝手にスウェット借りたよー
なんか冷たいものあるー?

俺:てきとーに冷蔵庫開けていいよ

カノジョ:開けていいーのー?

俺:てきとーにぃ冷蔵庫入ってるから飲んでー

カノジョ:ありがとうー

俺:うん、先、布団入っとくわー、俺

カノジョ:はぁーい

あれから3年ぐらい、
掃除してたはずのカノジョが消えた、
クロックスと共に、
俺のスウェットと共に


俺:(ゲームしてる)あのスウェット、
気に入ってたんやけどなぁ…

カノジョ:(玄関の鍵が開く)ただいまぁー

俺:…!!(背筋ピンっ)

カノジョ:(近付いてくる)ただいま

俺:(振り向き)…うわっ誰⁈⁈何⁉︎

カノジョ:ごめんね、遅くなって

俺:いや、何⁉︎誰⁉︎

カノジョ:遅くなったから、お土産

俺:お土産⁉︎

カノジョ:歌えるんだよ、、ね?
(頷く1匹)

俺:ちょっと待って…何⁈
うわっ手繋いでるやん‼︎‼︎何っ‼︎‼︎誰っ‼︎‼︎

カノジョ:歌える河童

俺:(きょとん)いや待って、整理できへん、
理解できひん、
何⁈河童?嘘つけ‼︎‼︎(一応ツッコむ)
ってか、何だその嘘…‼︎‼︎

カノジョ:嘘じゃないもん…

俺:兎に角、その手を離せっ
(河童とカノジョのアイコンタクト→離れる)

俺:…きぃっ!(なんか悔しい)

カノジョ:あぁ、バイヲ、相変わらず好きなんだね

俺:どう言う事⁈⁈

カノジョ:ごめんね、ほんとに…

俺:何しに来たの

カノジョ:帰って来たの

俺:河童つれて?

カノジョ:歌えるほうの河童だよ

俺:歌えても歌えなくてもどっちでもいいし‼︎
そもそも河童なんていねぇし‼︎ 

カノジョ:(しくしく泣き出す)
(河童もしくしく泣いてる、、、
が、途中、流した涙をてっぺんに塗っている)

俺:、、、泣くなよ、、、(座り込む)

俺はぼんやりと
「冷蔵庫にきゅうりあったかな…」と
考えたりして、今思えば、
もう受け入れる準備をしていた、
泣いてるカノジョより、
河童がかわいそうだなと、なんとなく、
河童にわるかったな、いないなんて言って…
そう思ってしまっていた

カノジョ:ティッシュ…
(河童にも差し出すが、
てっぺんに塗っているので必要ないとジェスチャー
→頷くカノジョ)

俺:…久しぶりやな

カノジョ:うん

俺:どないしてたん?今まで

カノジョ:…うん

俺:スウェットは?あれ、俺のお気に入りの…

カノジョ:ごめんなさい、驚かせて、
急に帰って来たりして、河童連れて来たりして…

俺:ほんまに河童なん?

カノジョ:歌える方のね

俺:そこ譲れへんなぁ

カノジョ:素敵な歌なんだよ、とっても
(河童照れる)

俺:どう見ても人やけど

カノジョ:河童なの

俺:(ため息)わかった…で?
なんで俺んちに河童を連れて来たわけ?
その前に、なんで急に出ていったわけ?
で、そいつと今付き合ってるん⁈

カノジョ:落ち着いてよ
(河童も落ち着いてよジェスチャー)

俺:(河童に)お前は入ってくんな‼︎‼︎
(河童落ち込む)

    ちょっと間

カノジョ:荷物を取りに行ったの、あの日

俺:荷物?

カノジョ:庄ちゃん、あたしの好きなもの言える?

俺:はっ?

カノジョ:覚えてる?あたしが好きなもの

俺:俺

カノジョ:(ため息)

俺:ちゃうんかいっ

カノジョ:あの日、エントランスに荷物取りに降りて

俺:好きなもの何やねん…

カノジョ:そしたら、、立ってたの(河童をみる)

俺:こいつが?
(にこにこ頷く河童)

カノジョ:歌ってくれたの
(にこにこ頷く河童)

俺:なんで?!急に!?こわー!

カノジョ:あたし泣いちゃって
(可愛くえーんえーんのジェスチャーやる河童)

俺:気持ち悪っ

カノジョ:えっ?!

俺:いや、そっち(河童)
(河童「えっ?!」のリアクション)

カノジョ:なんか、無理してたんだなと思って…

俺:…それ…俺と居てって事?

カノジョ:(手が裾に伸びていく)

俺:…つらかったん?一緒に居て…

カノジョ:(河童の服の裾を握ってる)
(河童オロオロしてる、裾も気にしてる
→あんまり握ったら伸びちゃうなぁって)

俺:(裾を握るカノジョの手が可愛いなと、
ちょっとツラくて目線を外す)

カノジョ:大事な人に何も話さないで…
見ず知らずの河童について行って…ごめんなさい
(河童も何故だか頭を下げてみる)

カノジョ:庄ちゃん

俺:なんだよ…

カノジョ:あたしの好きなものは?

俺:えっ?
カノジョ:(庄ちゃんの目線にしゃがむ、近い)

俺:(口を開いて、何か言おうとした、
それか河童がいなかったら、キスしてたかも)

(河童の腹がなる、恥ずかしい河童)

カノジョ:(立ち上がって)お腹すいたね
(河童、お腹をさすりながら嬉しそうに頷く)

カノジョ:勝手に開けるねー(と冷蔵庫へ)

俺:何も入ってな…

カノジョ:買ってくるー!

俺:えっ?!ちょっと!

(ドアの閉まる音、河童と2人きり)

俺:気まずしっ
(河童、にこっとする)

俺:えーっと
(河童、バイヲやりたい)

俺:あぁ、別にええけど…
(河童、コントローラー握る)

俺:やり方知ってるん?
(河童、痒い)

俺:あー、乾燥あかんもんな(加湿機つける)
(河童、嬉しい、会釈)

俺:あかんわ、俺、河童って認め出してるわ
(河童、鬼の形相→絶命!)

俺:顔こわー笑笑(面白くなってくる)
(河童、真剣)

俺:俺も横でこんなふうに見られてたんかなぁ
(河童、目を細める、見えないらしい)

俺:絶命!
(河童、やってみろ!とコントローラー渡す)

俺:(ゲームやりながら)
お前、歌でしか声でーへんの?

(河童、加湿機のモワモワした煙に
てっぺんを直接持っていって水分を塗っている、
身体が硬いほうの河童なので、
なかなかよい角度がみつからず、
こちらでも鬼の形相)

俺:(ゲーム画面にうっすら映る
変な角度の河童をニヤニヤしながら見てる、嬉しそう)
なぁ、聞いてるー?

河童:えっ?

俺:あっ、喋った

河童:これ、もっと急速とかにできひんの?

俺:河童ちゃうやん、絶対

河童:なぁー聞いてる?俺の話

俺:そのボタン押して、そこ、その押しチョボ

(3段階しかないのに、
強いのがいいって言ったのに、
理想の蒸気具合を探し、
ピッピッとボタンを押し続ける河童、
そもそも河童用でなく
部屋の加湿を目的としているので、
納得のいく強さなどないぞ…!と思いながら、
何も言わずに河童を観察する俺)

河童:(ピッピッ)もうええわ!
腹減ったなぁ(と冷蔵庫を勝手に確かめに行く)

俺:ただのおっさんやけどなぁ、
禿げてるわけでもないし、なんじゃ、あいつ

河童:ちょっとー、庄ちゃーん

俺:おいっ!庄ちゃんて呼ぶな!気持ち悪い

河童:なんか置いてあんで

俺:えっ?

河童:ほいっ(と、紙袋を庄ちゃんに渡す)

俺:うわっ、でかっ、何これ…

中身は…
何年かぶりの、
当時よりちょっとクタッとしたお気に入りのスウェットが
きちんとたたまれて入っていて、
ちょっといい香りもした

柔軟剤かな?と思ったが…違った


カノジョの匂いだ、
柔軟剤やシャンプーとは違う、
カノジョがまとう、俺の好きな匂い

それを思い出して、少し、泣きそうになった

同じメーカーの最新モデルのスウェットも入っていた
けっこうな大きさの紙袋だった
河童に(もう考えるのめんどくさいから、
あいつは河童ってことにした)
これをカノジョが持ってきたのかと聞いてみたが、
痒いし、
腹が減ってるからそれどころじゃないと言われた(腹立つー‼︎)


河童:はいっ
(庄ちゃんをあんまり見ないようにして、
ティッシュを渡す)

俺:???

河童:んっ(トトロのカンタがサツキに傘渡すみたいに)

俺は気付かずに、泣いていた
人前ならまだしも、
見ず知らずの、よりにもよって、
出会って間もない「河童」の前で…

河童に気を使われる俺…
さらに情けなくなってきて、涙が溢れてきた

俺:(ティッシュで涙を拭きながら)あーぁ…

河童:人生、いろいろ、女も、いろいろ、
男だっていろいろ咲き乱れる…
あれ?なんかちゃうな…

俺:女と男が逆

河童:あっ、そーか!

俺:(涙を拭きながら、笑いながら)あーぁ、情けな

河童:腹減ったなぁ

俺:ピザでもとる?

河童:ピザかぁー

俺:きゅうりのほうがいい側の河童?

河童:そら、そやろ!河童なんやから

俺:ほんまに河童なん?

河童:歌える側のな

俺:そこ譲らんな

河童:いや、事実やから

俺:しゃーないなぁ!(と、立ち上がり)
ティッシュのお礼にきゅうり、買ってきたるわ

河童:じゃ、俺、バイヲ進めといたるわ

俺はこの時、
カノジョが帰ってきたわけではない事を
受け入れ始めた

俺:はぁー、色んな感情出て疲れた…
(風でなびく素敵な前髪)


部屋はもぬけの殻だった


俺:(小さな低い)えっ?

俺はきゅうり一本を握りしめ
(エコバッグを忘れた、忘れ物はよくある)
しばらく、
大量の文字が流れるゲーム画面をみつめていた

俺:クリアしてるやん
(風でなびく素敵な前髪、2回目)

開けた記憶がないベランダが半分開いている
ベランダに近づき、閉める、時計をみる

俺:そんな時間たってないなぁ
(握りしめていたきゅうりを置く)

目の前には、ゲームのコントローラーと、
でっかい紙袋と、きゅうりが一本

俺:ほんとのお土産は、これだけやな…
(紙袋から新しい方のスウェットを、いや、
すゑっとを取り出してお着替えタイム)

俺:ええやん(お気に入り決定)

加湿器の警告音がなる、タンクの水がない

俺:あいつ、最後まで潤おうとしやがって
(電源をきる)

カノジョが
買い出しに行くと言ったとき、
Uber頼めへんの!?って思った

口に入る物は、目の前まで運ばれて来て、
すぐに食べられるものしか認めない、
温めて食べるのもめんどくさがる、変なカノジョ、
わがままで、、、なんかわからんけど、
そこが、その、、、可愛くて

人はそんなに変わらない
嘘がつけないとこは、変わってない
料理をするように、なったんやろなぁ…

河童は来た時からタバコの匂いがしていた、
きっとバイヲを終わらせてベランダで一服して、
帰りたくなって帰った、背中を掻きながら

俺:(背中を掻いてる河童を思い出して)
ふふっ…うわっ、思い出して笑ってもた、
気持ち悪っ、俺、やばっ(独り言が止まらない)
でも、あんな身体かったいのになぁ、
手の関節だけなんであんな事になんねん、
柔らかすぎるって
(実は河童、
登場してからずっと背中を掻いていた)
ほんで、どーすんねん、このきゅうり…

がたんっと窓を揺らす突風で
きゅうりから目線をはずし、顔をあげる、
床に落ちている何かに気づく

俺:お手紙…

可愛らしい文字で
「借りっぱでごめん、
気に入ってもらえるといいな」と書かれた、
小さなメッセージカード
→そのカードを掴んでいる手もたまらなく可愛い
(指が短い)


俺:まんまと気に入ってます…


カードを裏返してみる、すると…



俺:(思わず笑顔になってから、困り顔)
もうええって笑

「また来るわ」
(こちらもこちらで、大変可愛らしい文字)


                おしまい

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