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少年たち~闇を突き抜けて 感想ブログ

2023年秋の舞台「少年たち」の感想ブログです。

2021年からHi美が引き継ぎ2年間、
そして今年は主演は美 少年のみ。
タッキー演出の2年間(2年目の公演期間中に退任発表したの思い出した)、今年からはsnowman岩本照くんの演出。
ということで、どんな変化があるか楽しみに観劇。

事前情報として、岩本くんはこの事務所全ての礎と言っても過言では無いウエスト・サイド・ストーリーをよく理解している人という情報を見かけた。あとは関ジャムでお馴染みのMr.岩本(振付師)。新曲が岩本くん振り付け、という事前情報まではある状態での観劇だったと思う。

ひと言感想。去年より脱獄・おとりに至る描写がしっかりしていて、ストーリー立った少年たちだった!!

今回の軸は、戦争による分断・挫折・トラウマを抱え、混沌の中生きることを余儀なくされた少年たちが、現状を乗り越え、夢を描き叶えるまで立ち上がる物語。

去年の少年たちは若者ならではの反抗心・自分の心をコントロール出来ないことによる苛立ちがテーマ(よく言えば)だったけど、今回は社会背景に翻弄される若者たちで、なるほどなるほどだった。

キーマンの日記の少年を演じたのは大昇。
今年HiHiいないから大昇くん誰とライバル歌うんだろ〜〜と思っていたら裏切られた!いい意味で。
2018年スノスト少年たちに飛び入りで参加した刑務所の妖精と繋がる、ニクい演出・岩本くんという訳ですね。

日記の少年を新入りとせず、むしろ古参に。
全てがハマっていたと思う。

2021年の少年たちはコロナ禍で幕間なしということもあり、全員が平等に出番を回す関係者向けお披露目会。
2022年は優斗と大昇の過去とペンダントのくだりを入れてエモさが足された。みんな壹岐碧くんの演技(めちゃくちゃ素直な棒。とっても真っ直ぐでよろしい!)に夢中だった。

ただ、どうしても拭えなかった「脱獄しよう!!」の唐突感と、「僕がおとりになる!!」のどうしてそこまで?感。
舞台ではまあある事だし、光る太鼓のヤケにノリノリ大昇と、ベートーヴェンヘアで宗教画に磨きがかかったコンパスに夢中だから大丈夫だよ〜〜✌️と思いつつ、そこを描ききった今年はお見事でした。

今年のポイントを挙げるとしたら3つ。
・日記の少年の設定
・交流を通した変化
・看守側の背景

・日記の少年の設定

気弱で大人しそうな新入りではなく、
戦争により家族と思い出を奪われた少年。
今年の少年たちでは、日記の少年について、過去、彼の特性、劇中の出来事を通しての変化が丁寧に描かれていて、脱獄時の行動に至るまでの感情や動機が共有されていた。

開演前の舞台上演出(何かに水をやり、空を見上げる)や、
プロローグ(家族にお使いを頼まれる何気ない日々の描写、戦争状態への突入を宣言され、爆撃の中何かに駆け寄ろうとするが軍人に阻まれ絶望する様)
など、描き方がとても丁寧。

仲間の問いかけをきっかけに家族の記憶が蘇るシーンで、彼が家族のいる自宅が爆撃される瞬間を目の当たりにしし、助けることも駆け寄ることも何も出来なかった過去を持つことを知る。

辛い過去を背負っていることと、子供がえりしたことにより、どうして争い・対立するのかというピュアな問いかけと真っ直ぐな行動。
子どもだからこそのピュアさと、大人になっていく途中の少年たちの葛藤の対比。
どうしても虚しい今世への執着心の無さ。

彼にとって外の世界には待ってくれている人も記憶もなく、塀の中が全てなこと、
塀の中でも思い出をくれたみんなには夢を叶えて欲しいという純粋な気持ち、
自分にできることは何かという葛藤。
その葛藤を経ての「脱獄しよう!!!」……拍手。

決行当日も途中まではどこか謎解き(鍵開け)追いかけっこを楽しむように進んでいく大昇が、いざ外の世界が近づくと増える戸惑う仕草。
看守長に追い詰められていることを知ったとき、彼は自らがおとりになると宣言し、ここにいるみんなは家族、家族を守ることが自分の夢だと叫ぶ。………苦しい。

倒れる大昇に駆け寄る仲間たち。息も絶え絶えにどうして逃げてくれないの……と呟く大昇。日記、大切にするね……と言い残し息絶える。全員で大昇の名前を呼ぶ中、最後に響く龍我の「大昇ーーーーーーー!!!!」…………名演。

藤井が弟の為に一日でも早く出所したいのを、大昇は切なさ(と羨ましさ)と共にちゃんと分かっているし、みんなには塀の外に叶えたい夢、待ってくれている人がいて、ここに閉じ込められたまま死んで欲しくないと心から願える大昇の気持ちを、観客が共にできたのは大きかったと思う。

・交流を通した変化

争いが当たり前の世の中で争いを嫌う大昇、分断が当たり前の世の中で「同じ人間なのに?」と素直な疑問をぶつける大昇など、きっかけになる要素はいくつもあったけど、分断を乗り越えたことが分かりやすかったのは、金指と龍我の場面だと思う。

看守長に追い詰められ、少年兵だった記憶を呼び起こされる金指。
その場を去った金指が自ら命を絶とうとする瞬間、必死に探しに来た龍我が止める。
少年兵として、人間を殺した感覚が消えないのだと吐露する金指。
そんな金指に自らの夢を語る龍我(夢・パン屋さん)。俺の焼くパンを金指に毎日届けてやる、だから生きろ!と。
愛すべき真っ直ぐアホリーダーが持つ謎の説得力と、その後のLoveの2人の真っ直ぐな歌唱で納得してしまうんだけど、赤と青が食糧を巡って争う状況にあったことを考えると、赤の龍我が焼いたパンを青の金指に届けるってめちゃくちゃ凄いことなんだよね。愛だ。ジャムおじさんも兼ねた新しいアンパンマンだ。

残りの面々も集まった時に、誰かが大昇にお前のおかげで皆が変わって、やっぱりお前って面白いやつだなと言ったのはこの場面だったと思う。

根が優しい子たちだと分かるから対立を乗り越えることも自然なんだけど、それ以上に世の中が作った対立を自分たちで乗り越える若者の姿が力強い。

・看守側の描写

大昇に並びプロローグで過去描写があった看守長・内くん。
今回の少年たちで、大昇の対になる存在は看守長だったと思う。

戦争前、妻の妊娠に喜ぶ内くん。
我々が次に彼を目にするのは、冷徹で鬼畜な看守長。
途中で彼が吐露するが、出兵している間に戻ってきたら、妻と娘はお前らのような少年に殺されたのだと。
必要以上に少年たちを縛り痛めつけるのには、少年犯罪者を強く恨む気持ちと、そんな彼らを外に出さないという気持ちのため。

戦争でひとりぼっちになったのは大昇も看守長も一緒でこの辺は苦しいね、、、。
その結果、行動(争い)を嫌った大昇人(少年たち)を憎んだ看守長という構図なのかな。

あの夜は結局みんなは脱獄せずに、恐らくおとりになった大昇を射殺したことをきっかけに看守長の振る舞いが世間に明るみになり、少年たちの刑期は適切な長さへと修正、そして出所。これ結構衝撃だった。秩序がある。

大昇を撃った看守長はその後連行される訳だけど、その時内くんはまだやらなければならない事がある、俺の戦争はまだ終わっていない。と話していた気がする。
この事務所の系譜的には跡地に孤児院かエンターテインメント施設でも作る流れ。

実際のラストは、ブランコだけが残された更地。
出所したみんなが集まり、各々夢を叶えた姿。
平和な会話が続くかと思いきや一転、語気荒く叫び始める彼ら。
龍我が何気なく過ごしていれば平和な日々が続くと思っているがそれは違う、そうだろう?大昇に問いかけ、大昇も頷く。
大切に育てたひまわりに向かい、警棒を構える大昇。刹那、警棒でひまわりを叩きつける。その警棒の軌道が「少年たち」の赤く差す一角とリンクし、幕は閉じる。

大昇は向こう側の世界に日記(思い出)は持っていけなかったんだな。去年ならブランコに日記をお供えしてくれてたと思うけど、今年のそれは龍我の焼いたパンだった。(それも大昇めちゃくちゃ喜ぶとおもうけど。)
大昇が大切に育ててきたひまわり。みんなが語気を荒らげる姿をみて、龍我の言葉に頷き、それを警棒でぶった切った大昇。何とも心に刻み込まれるラストだった。

個人的に思うのは、今回のこの少年刑務所は、孤児院的な役割も兼ねてるのではということ。
囚人と同年代の看守(千井野くん)も世間の混乱の中、米を盗んだことがあることを吐露し、彼らと自分に違いはあるのかと悩む。結果、脱獄時には手を貸してくれる。
こんな描写をみると、特に若い看守たちは中々に行く宛てのない生活をしていたのではないかと思うし、そんな彼らに仕事と居場所を与えたのがこの少年刑務所なんじゃないかと思う。
大昇も戦争孤児として本来は看守側として収容されるのだけれども、子供がえりしてしまっていることから囚人として保護されてたんじゃないかな……と、大昇のことを1度も警棒で殴らなかった内くんを思い出しながら考える。
大昇のこと警棒で打たなかったのなんでかな。大昇が可愛いからかな?、

物語に筋道を与え、名作へのオマージュから舞台への愛を感じさせた岩本くんはお見事だし、それを演じきった美 少年の面々は歌・演技共にさすがだし、ショータイムの多幸感溢れるSing itは彼らにしか出来ないコントラスト。

様々な設定を与えながら本人役を演じさせるこの事務所のシステムは最高過ぎる。
どこまでも真っ直ぐな龍我、胡散臭いリサイクルショップ社長が似合いすぎる金指、とても良すぎた。

そして、日記の少年の過去・いまの思考・思いの全てを表現しきった大昇にあっぱれ!
思い返せば私が大昇を認識したのは、映画「少年たち」の追悼上映。実演の映像でポヤポヤ踊る彼をみて、なんて毒っけのない子だろうと良いじゃんこの子!と思った。ジュニア好きな子から「その子、事務所に1番ぐらいに推されてる子だよ」と聞いた時はどでたまげたが、舞台上の大昇を見る度に、大昇は自分が授かった教えや経験をを周囲に分け与えられる子だなとしみじみ思う。この子に場数をあげると決めた大人たちと、その期待に応え役割を果たし続ける大昇。私は仕事をする上での刺激はこの21歳から1番貰っている。

本人が本人である瞬間が1番輝く。なんともかけがえのないものだと思う。
全編通して特にツボなのは、真っ直ぐパンへの愛を語る龍我と、flickyの大昇の首の角度、1回アヒルのくちばしみたいになる手です。

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