絵の話
「さすが漫画家の娘だね。」
私が絵を描くと、まわりにいた人は全員こう言った。呪いのような言葉だ。
小さい頃から絵を描くことが好きだった。
家のふすまにたくさんのアンパンマンをかいて怒られていた。
アンパンマンのほっぺには□のハイライトがある。
ハイライトをつける意味はわからなかったものの、ほっぺには□をつける。
顔のしたには襟があり、にこちゃんマークがある。
小さな頃のらくがきにも、小さなこだわりがあったことは覚えている。
小学校低学年
図工の時間が楽しみだった。
何を作っても褒めてくれる。
自分は絵を描くのが上手だと思い込んでいた。
ある日、絵の具でカメを描いた。
私は絵の具を混ぜるのが下手だった。
どうしても作りたい色にできなかったのだ。
出来上がったカメはたくさんの絵の具が混ざり
濁った色をしていた。
その絵を私は汚いと思った。
先生や見に来た保護者達は言った。
「さすが漫画家の娘だね。」と。
私はこの時から違和感を感じていたのかもしれない。
![](https://assets.st-note.com/img/1696682836962-o4Q3YTcRpd.jpg?width=800)
キャンバス上で混ぜている。
その後の私もひたすら絵を描いていた。
好きだから描くというよりも、
上手く描かないといけないという気持ちが勝っていたと思う。
漫画家の娘だから、描けないといけないと。
描いても自分の絵が褒められることはなかった。
先生たちは母の話に興味津々だからだ。
母の絵
高校生の時に偶然
「母が高校生の時に描いた絵」を見た。
上手すぎた。
自分と同じ年齢の時の母の絵。
雑誌に最優秀賞として掲載されていたものだった。
私はそれを見て、
諦めてしまった。
追いつけない。これからもずっと。
同じ道を辿ることは出来ないのだと知った。
それから、イラレを学んだり、動画編集を学んだり、
プログラミングを学んだりと
学ぶことは好きで、いろんなアプリを使ってみたが、どれも仕事として出来るようなものではない。
全て中途半端な、不器用な器用人間になってしまった。
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