【技術士二次試験】 実務経験証明書の書き方

本記事では、技術士受験セミナーを受講して得たノウハウや独自の解釈を踏まえて項目ごとに書き方のコツをお伝えします。

①大学院における研究経歴/勤務先における業務経歴
・大学院名:卒業した大学院名を記載する。
・課程(専攻まで):卒業した課程・専攻を記載する。
 
研究内容:50~60文字で記載する。内容は、研究の題名・テーマを書けば十分な分量かと思います。ここで注意することは、最後に「研究」と書くことです。例えば、「~を前提とした~の時間変化に関する研究」というような感じ・・・。こんな些細な事でと思われるかもしれないが、セミナーでやたらと突っ込まれる部分です。理由としては、「技術士」の定義にあります。
技術士法の第二条
「この法律において「技術士」とは、第三十二条第一項の登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者をいう。」
 以上より、技術士の定義としては、計画、研究、設計、分析、試験、評価又は指導をする人となるそうです。本当にそこが重要なの?って感じですが、正確に物事を伝えるという点でいえば、必要なことかもしれません。無難に合わせるが吉です。
・在学期間:在学期間を記載する。
・勤務先:勤務先を部署まで正確に記載する。
・所在地:県、市、区まで正確に記載する。
・地位・職名:その当時の役所を記載する。
 
業務内容:ここからが本番です。二次試験の筆記試験を無事に突破したとしても、面接でこの部分を聞かれることもあるため、手を抜けない部分です。そのため、期間を埋めるための適当な業務でなく、詳細業務と同様に面接の応答ができる業務を選定する必要があります。業務の選定に関しては、業務の大小に関係なく、「業務の課題・問題点、技術的な着目点と技術的提案、具体的な数字を持った成果、その後の評価」を記載できるものを選定するのが良いかと思います。自分の場合は地方の零細企業勤務でしたので、たいして大きな仕事はしていないですが、これらの項目を意識すると、セミナーの突っ込みは少なかった印象です。また、業務経験が豊富な方に関しては、ご自身が担当した業務をexcel等でまとめて、各項目を埋める作業を行うと、意外な業務が、後述する業務内容の詳細に関して書きやすいこともあるのでオススメです。
 実際の書き方ですが、文量は研究内容と同様に50~60文字で記載する必要があります。また、文章の最後は研究内容と同様に、計画、研究、設計、分析、試験、評価、指導で締める必要があります。書き方としては、技術的な着目点を記載して具体的な内容(現場や条件がイメージできる)にすることです。自分の専門としての例ですが、

ダメな例:岩盤斜面崩壊の調査・解析業務良い例:第三紀堆積岩類のスレーキング現象と岩盤節理面に着目した、法面の表層崩壊・くさび型崩壊の分析・評価業務
 
ダメな例だと、業務箇所のイメージがまったくできないかと思います。良い例なら、「道路とかの法面に泥岩とかが分布してて、それが切土によって表層崩壊とくさび型の崩壊をしたのかな?」とイメージすることができます。こう書いておけば、面接の質問も大方予想することができるので後々楽ができます。

②業務内容の詳細
 ここでは、上記した業務内容の一つを選択して「当該業務での立場、役割、成果等」を720文字で記載します。書き方としては、【概要及び立場・役割】、【課題・問題点】、【技術的提案】、【成果】、【評価と展望】の5つ程度に分けて記載するのが良いかと思います。また、文章を書くにあたって、技術士の3義務2責務や技術士に求められる資質能力(コンピテンジー)を理解するのも重要かもしれません。特に公益の確保は技術者倫理とも絡みますし、広い視野をもって業務にあたっているようにみせることができます。
・3義務
 信用失墜行為の禁止(第44条)
 技術士等の秘密保持義務(第45条)
 技術士の名称表示の場合の義務(第46条) 
・2責務 
 技術士等の公益確保の責務(第45条の2)
 技術士の資質向上の責務(第47条の2)
・技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)
 専門的学識
 問題解決
 マネジメント
 評価
 コミュニケーション
 リーダーシップ
 技術者倫理
詳しくは、 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu7/attach/1413398.htm を参照してください。

【概要及び立場・役割】
文章量は全体の15~20%程度。業務の概要は数字を絡めながら具体的イメージを持てるように記載します。自分の専門でいえば、調査箇所、地すべりの規模、崩壊形態を具体的に記載する感じです。ここで注意するのが、具体性を出すために細かく記載して必要以上に文章量が多くなることです。情報量を多くしたいので、可能な限り文章をコンパクトにする必要があります。例えば、地すべりの規模であれば、「幅~m、延長~m、深さ~m」よりも「~㎥」の方が文章量節約になります。立場・役割については、自分が担当した部分を記載します。ここで重要なのが、発注者や社内関係者、外注先やほかの受託者との調整や協議、打合せなどについても記載することです。この部分で、マネジメントやリーダーシップの評価を上げるようにしてみましょう。特に社内関係者との協議は忘れがちなので注意です。

【課題・問題点】
文章量は全体の15~20%程度。課題と問題点は一番受験生を悩ませる部分かもしれません。セミナーでも多くの受験生が頭を悩ませていたのを覚えています。自分の感覚的なところですが、

問題点:ある現象や製造、工事等の課程において、非常に困っていること、解決しないと先に進めない部分、よくわからない部分
課題:困っていること、解決しないと先に進めない部分を解消するためにやらなくてはいけないこと

簡単な例ですが、
問題点:マイクロプラスチックが海洋を汚染している
課題:国民の衛生的な生活を維持しながら、プラスチック製品の量を削減する
このような感じでしょうか。また、テクニックの一つですが、課題部分に難しい条件を付加してあげると非常に見栄えが良くなるのでおすすめです。上の例でも、ただ、「プラスチックの量を削減する」よりも「国民の衛生的な生活を維持しながら、プラスチック製品の量を削減する」のほうがより難しいことを成し遂げようとしているふうにみえるはずです。条件としては、いわゆる「人、モノ、金」でしょうか。他にも時間スケールや技術者倫理(国民の健康や環境保全)を入れ込むといいと思います。

【技術的提案】
文章量は全体の40~50%程度。ここでは、課題に対してどのような部分に着目し、技術提案を行ったかを記載するとよいかと思います。ここで重要なことは突拍子もない技術や特殊な技術提案である必要はないということです。最先端技術を追い求めるトップランナーの方ならそのほうが良いかもしれませんが、多くの受験生は一般的なサラリーマンなのですから、背伸びした内容よりも論理的に正しい技術提案を行うほうが無難かと思います。また、特殊な技術は、面接のことを考えると突っ込みの対策が非常に難しくなるのでオススメできません。書き方としては、「崩壊機構分析・評価のために泥岩の節理面に着目した。調査地の泥岩は、やや流れ盤となっており、それと直行する形で節理が非常に発達していた。この流れ盤走向と直行する節理面をすべり面とした楔形崩壊の可能性が高いと考え、走向・節理面の傾斜方向把握を目的とした地質踏査とボアホールカメラを提案した。」のような感じでしょうか。

【成果】
文章量は全体の15~20%程度。成果は数字で示せるのが理想です。例えば、「工法を崩壊現象毎に変更することにより、事業費が~%削減できた。地下水や河川水の季節変動を把握することにより、排水効率が~%改善された。新たな材料の組み合わせにより強度が~%上昇した。」のような感じです。

【評価と展望】
文章量は全体の10~15%程度。評価については、業務内容にもよりますが書き方がいろいろ考えられます。例えば、提案した技術内容にある程度のリスクを内包する場合は、それをカバーする方法を記載する。過去には存在しなかったが、現在は新たな技術でより良い成果が出そうな場合はその内容を記載するなどです。そのほかにも技術者倫理にからめて、公益の確保(国民の健康や福祉の向上、環境保護など)に関する内容でもいいかもしれません。例えば、「今回提案した技術は、環境面への負荷を否定できないため、モニタリングによる環境影響の継続的な観測や環境影響低減の技術開発(この技術開発も具体性がある方が良い)が必要である。」などでしょうか。

まとめ
・具体的に記述し、現場や条件のイメージができるような文体とする。
・技術士の定義を知る(計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者)。
・面接でしか聞かれないと思わず、3義務2責務を意識して文章を考える。 
・技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)を意識して文書を考える。

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