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ワクチン後遺症

時々、世間で注目を浴びているよくある医療の誤解について解説をさせていただいています。

2021年は、「コロナワクチンを打ったら感染する」「ワクチンを打ったから免疫が落ちて逆に感染しやすくなる」「卵巣や子宮に蓄積して不妊になる」「奇形がおこる」「5Gにつながる」などのフェイクニュースがありました。解説→ https://note.com/withpain_mio/n/n3746066b63af

今回は「コロナワクチンによる後遺症」に関して、現時点(2022年1月)でわかっていることを皆さんにお伝えします。その前にまずは、言葉の整理をしてから本題に入っていきましょう。

そもそもワクチンとは
病原体に対する武器を体内に作るためのもので、ウイルスを退治というよりは、発症と重症化のリスクを減らす役割があります。病原性を弱めた病原体からできた生ワクチンや、感染力をなくした不活化ワクチンなど、色々なタイプが存在し、コロナワクチンは「ウイルスに対しての武器(抗体など)をつくるための説明書を体内に送り込む」タイプです。
https://corowakun-supporters.studio.site/faq

日本で主に接種がすすんでいるmRNAワクチンはコロナウイルスの表面にあるとげとげ、スパイク蛋白の遺伝情報をナノ脂質という油で包んだワクチンで、体内に入ると、数日で分解されてしまうとされています。

まぎらわしい専門用語①「副反応と副作用
コロナワクチンの成分で、長期的な副反応が起こる可能性というものは理論上は起こり難いというのが科学的共通見解です(もちろん、未来のことは確定できないため、断定することは出来ません)。
ただ、強い免疫反応を惹起させるわけですから、発熱や頭痛、全身倦怠感など、症状として現れます。これは副次的な反応であることから、「副反応」と呼ばれ、薬剤で好ましくない作用としての副作用とは別に扱われています。

まぎらわしい専門用語②「因果関係と有害事象
ワクチンに限らず薬というものは、その投与を行ったあとに起こった病気、事故、死亡した場合、一度全て有害事象と呼び、本当にそれがその薬のせいで発生したのか、たまたまなのか、などの因果関係を精査しています。

因果関係とは?
人間は、年齢、体型、持病の有無(メタボリックシンドロームや隠れ糖尿病含む)、喫煙歴など複数の因子が存在するため、因果関係を同定していくのは本来とても難しいものです。
また、有害事象の中にはコロナに感染し、無症状や軽症で済んであとからコロナ後遺症が出現している患者さんがいらっしゃったり、ノセボ効果という、薬や医療者に対する不安や不信感がある場合に引き起こされる現象も考えなくてはなりません。因果関係が明らかになったときに初めて「因果関係あり」、明らかにできないときは「因果関係不明」に分類されます。因果関係不明というのは、あくまでその時点で不明としているのであって、因果関係をなしとしているとか、因果関係を調べる気がないというものではありません。因果関係が証明されることで、不明から変わることもありえます。

ノセボ効果(プラセボの逆)」
実際には薬効がないものが、マイナスの効果を引き起こすことです。有名医学雑誌ランセットに掲載されたランダム比較試験では、倦怠感、頭痛、筋肉痛などコロナワクチンを打った群で頻度が高い一方で、生理食塩水を打ったプラセボ群でも20数%に達しています。つまり、ただの塩水を打たれた人たちの中に、副反応と似た症状を訴えた方が20%といた、ということであり、ノセボ効果がうかがうことができます。だからといってすべてがノセボ効果とも言い切れません。ですから、実際、コロナワクチンを打って長くひどい症状が続く方はいらっしゃるのも事実で、私たちはこれを否定したいわけではありません。
https://www.thelancet.com/journals/lanepe/article/PIIS2666-7762(21)00239-8/fulltext

ワクチンを打った後の体調不良を、すべてワクチン後遺症としてしまうと、実は無症状のコロナ感染があって、あとから後遺症が出ていた方や、がんや自己免疫疾患などの病気の治療開始が遅れてしまうことを心配しています(私自身、線維筋痛症の診断に20年かけてしまいました)↓


コロナ後遺症

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世界的にCOVID19は肺だけでなく、様々な臓器に侵入し炎症を引き起こす病態が分かっており、特にに関しては、全身倦怠感、あたまが働かなくなるブレインフォグ、認知機能の低下、動作が遅くなる、易疲労感、うつ症状など、多彩な症状をしめすため、非常に厄介で、もしそのような症状が出た場合は半年以上など長いスパンをかけながら状態を改善していかなければなりません。また問題点としては、確立した治療がまだ存在しないということもあります。  BMJ https://www.bmj.com/content/374/bmj.n1648

動画解説 https://note.com/withpain_mio/n/nacb67ab04d7d

「コロナワクチン後遺症」はあるのか?
上記のコロナ後遺症と似たことが、コロナワクチンを打つことでも起こりえるんじゃないか?その頻度はワクチンの方が高いのではないか!という仮説が飛躍して、「コロナワクチンのせいで危険な副作用が起こるんだ!打つのは危険だ!ほら、死人が出ているぞ!」「コロナワクチンを打った後にこういった症状が出ている患者を診ている」というSNS上の強い報告が目立ちます。ワクチンを打った、その後に症状が出た、そうすれば関係を考えるのが自然だと思います。ところが、難しいことに、それだけでは因果関係を証明したことにはなりません。コロナ禍になる前も、突然大きな病気になったり、中には急に亡くなったりする方もおられました。今回はワクチンを打っている人が人口の8割におよびますから、非常にたくさんの方がワクチン「接種後」となります。そうなりますと、やはり一定の確率で、自然の重病や死というものも起こりうるものと考えます。

一方で、打った後の体調不良が長引く患者さんはたしかにいらっしゃるのですが、免疫が活性化しすぎたことによるものと考えられ、半年程度で落ち着く方が多いです。漢方外来や後遺症外来の医師や看護師に直接確認していますが、重症度はコロナ後遺症の方が明らかに高いです。

でも、信じられない。不安だ。では、どうしたら良いのでしょうか? まず安心できる情報として、世界中の人が受けているワクチンですから、その後に大きな問題がないかどうかはかなりよく調べられています。そのおかげで、アデノウイルスベクターワクチンでの稀な血栓症や、mRNAワクチンでの若年者の心筋炎などは早い段階でわかりました。

偶然じゃないことを証明する質の高い方法は2種類。
接種グループと非接種グループで比較し明らかな差が出ないか
一般的な発生率と比較して接種グループでそれが明らかに増えていないか
これらが継続的に行われ、心筋炎なども早く判明しました。逆に言えば、他の病気に関してもかなり調べられていますが、現状のところ限られた病気のみで因果関係があるとわかっています。多くの「これも関係あるのでは?」などSNSで流れている病気は、未だきちんと証明されているわけではありません。

上記理由から、ワクチン接種後に「ワクチン後遺症」と呼称されているような病態・病気が発生するということに関しても、明確に証明されているわけではありません。

もし、こういった科学的ではない個人の体験や私見が優先されてしまうと、8年間も風評被害を被った 多くの若い女性の命を守れるはずだったHPVワクチンのような事例になりかねません。2022年4月から、ようやく積極的な推奨が始まります。 

https://youtu.be/aPay8dquVAg

コロナワクチンを打つメリットデメリットを比べると、ご自分のためにも、大切な人のためにも圧倒的にメリットは上回ります。ですから、私はごく一部のご事情がある方以外は迷わずを勧めています。

先日はついに、こどものコロナ後遺症を91%も予防してくれることがわかっています。ブレインフォグは、本当に本当に、対処法がそっと休み続けて、鍼灸などで楽にしていくしかいまは手がないです。

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上記のことを大前提にあるものの、私自身が10年前、カンピロバクタという細菌感染によって半年間寝たきりになった経験があり、今でも電動車椅子をつかったり週の3日ほど寝込んでいる慢性疲労症候群の患者当事者であるため、

コロナ後遺症で苦しむ患者さんも、ワクチン後にずっとしんどいと言われている方にも、症状緩和するためのセルフケアをお伝えできるよう、時々 #コロナ後遺症#ワクチン後遺症 とタグをつけてシェアおりました。ただ、やはり「この言葉を使うことで発生頻度が高いというようなミスリードにつながる」と友人たちからご指摘をいただき、今回きちんと記事を書こうと思い至りました。友人たちに本当に感謝しております。

あまり注目もされずに済んだ該当ツイートではありましたが、削除し、この記事をもって訂正とお詫びをさせていただきます。

全身倦怠感やなどの対症療法は下記動画や概要欄の資料をご参考にしていただければ幸いです。 https://youtu.be/oZwP9N5gtE0

線維筋痛症と慢性疲労症候群患者さん向けの教育動画も制作しており、病気との付き合い方について学べるのでゆっくりご参考いただければと思います。

長文申し訳ありませんが、医師としてこれについて反省し、科学的根拠と謙虚さを忘れずに今後とも情報提供に努めてまいります。また、

コロナ後遺症に関して最新論文
息切れがあるのに呼吸機能・レントゲン・CTで異常がなかったコロナ後遺症患者41人中46%に慢性疲労症候群ME/CFSの診断基準を満たす患者がいたという報告(米国マウントサイナイ医科大学)
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jchf.2021.10.002

また、追加情報ありましたらこちらの記事に追加していきますので、フォロー頂けると幸いです。

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