【withE通信:真実が見抜けますか?】
全国でコロナワクチンの接種が進んでいますね。熱中症も心配される中、マスクをつけなくてもいい生活が早く戻ることを願うばかりです。
ところで、皆さんは熱中症対策に有効であるDHMO(dihydrogen monoxide、ジハイドロゲンモノオキサイド)という化学物質を知っているでしょうか?
<DHMOの危険性>
DHMOは無色、無臭、無味で、はるか昔から地球上に広く存在する物質でもあります。
日本ではあまり聞き馴染みがありませんが、実はとても有名な物質であり、非常に恐ろしい性質を持つことが知られています。
皆さんは、理科の授業で物質は固体、液体、気体の3つの状態をとることを学んだと思います(実際は他にもありますが、今回は置いておきます)。DHMOのそれぞれの状態での性質は以下の通りです。
固体:長時間触れると、皮膚に深刻な損傷を与える
気体:触れると、重度のやけどを引き起こす可能性がある
液体:過剰に摂取すると、頭痛や嘔吐、意識障害を引き起こし最悪の場合死に至る
また、人体への影響に限らず、さまざまな環境問題とも関わりを持っています。
・酸性雨の主な成分である
・地球温暖化の原因である大気の温室効果の約5割を占める
・岩石などの侵食を引き起こし、大きく地形を変えることもある
しかし驚くべきことに、これらの性質が知られているにも関わらず、DHMOは現在でも世界中で広く使われています。冒頭で紹介した熱中症対策の他にも、原子力発電所や大規模コンビナートをはじめ、多くの大企業や研究施設、さらには私たちが普段口にする農作物の栽培等々……。
それだけではありません。毎日の洗濯やお風呂、カップラーメンを作るのにでさえ、DHMOが使われているのです。人類はいつになったらDHMOの使用を止めるのでしょうか?
さて、ここまで読んで気づいた人もいるかもしれませんね😀
このDHMOことジハイドロゲンモノオキサイド、日本語では一酸化二水素となります。まだピンと来ない人のために、化学式で書いてみましょう。
H₂O
もうわかりましたね?
そう、水です。
ここまで散々危険性を訴えてきたDHMOの正体はただの水だったのです💧
読み返してもらえればわかると思いますが、1つとして嘘はついていません。ただ少し大げさで不安をあおる表現をしただけです。
氷に長時間触れていれば低温やけどを起こすし、電気ポットなどから出る水蒸気に触れればやけどをします。1度に大量に飲めば、水中毒により死に至ることもあります。「酸性雨の主成分」に至っては、雨なんだから水がメインで当たり前です。
<案外気づかない>
このDHMOは、約30年前にアメリカのカリフォルニア大学の学生たちによって考えられたものであり、その後、別の学生たちによってジョークサイトも作られました。
このジョークが有名になったきっかけは、1997年、アメリカの科学フェアに出されたある中学生が書いたレポートです。そのレポートの内容は、50人に今回のようにDHMOの危険性を説明した後、「DHMOを法律で規制すべきか」と尋ねた時に彼らがどう答えるかというもの。
その結果は、43人が規制に賛同、6人が回答を留保、DHMOが水だと見抜けたのは50人中1人だけというものでした。8割以上の人が、DHMOが危険な物質だとだまされたのです。皆さんはこの43人になっていませんでしたか?
<真偽を見極める力>
情報リテラシーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは「大量の情報の中から自分にとって必要なものを集め、それらを分析、活用できる能力」のことで、膨大な情報で溢れる現代社会で強く求められている力の1つでもあります。
現在、多くの人がコロナワクチンを接種している一方、ワクチンに関する様々なデマも流れています。その多くは、冷静に考えれば嘘だとわかるものですが、騙される人がいるのもまた事実です。間違った情報に踊らされないためにも、見聞きしたことを1度は疑うよう心がけてみてはどうでしょうか。
ちなみに、DHMOに周期表第3周期のアルカリ金属とハロゲンの化合物を適量加えると、より効果的な熱中症対策になりますよ🌞
作:高妻(英語担当)