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瓶子岩(へいしいわ)と猫

 昨年(2020年9月)研修会の講師としておじゃました、江差町。これまで何度もこの町を、南からは国道228号を、北からは国道227号を通り、目的地の町までたどり着いていました。その都度、ある時は運転席の左側に、またある時は右側に感じ気になっていた場所がありました。国道の先に突き出た「かもめ島」です。地図で見ると、カモメが翼を広げたかたちをしているので「かもめ島」という名前になったそうです。海抜20m、周囲2.6kmの出島は歩いて巡ることができます。天然の良港を築くこの島は、かつてニシン漁や北前船交易の舞台で、江差の歴史を語る上では、外すことができません。

 蝦夷から北海道へ変わるきっかけとなった、戊辰戦争の最後の戦いとなる箱館戦争の際、新政府軍が蝦夷地進撃の起点として上陸したのも、この場所から車で北へ10分ほど行った、乙部町の海岸です。そんな想いを巡らせながら、灯台を目指し丘を登りました。明治22年9月15日設置という鴎島灯台ですが、天然の良港を築くこの島は、ニシン漁や北前船交易の舞台として、江差の歴史のスタート地点だったのかもしれません。

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 島の上までくると、現在はキャンプ場に整備されている広い場所で、何組かのご家族が楽しそうにテントを張っていました。車では上まで来れないので、今私が登ってきた道を、重いキャンプ道具を抱えてくるのは、いささか大変だなとも感じましたが、最近ではオートキャンプ場のように、自然を楽しむのもめっきり楽になってしまいましたので、これくらいの方が思い出として、深く心に刻まれるのかもしれません。

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 灯台に登ると島の東崖に見られる、千畳敷と呼ばれる岩の海岸を望むことができます。日本海の荒波の力による浸蝕によって、まるでたくさんの畳を敷きつめたような形態から「千畳敷」と呼ばれるようになったそうです。かもめ島には、点在する見どころをめぐる快適な散策路が整備されています。ゆっくり歩いても約2時間で一周することができるそうです。今回は残念ながらそれほど時間がなかったので、やむなく最短距離で戻ってきました。最後に私を見送ってくれたのが、まるで瓶子岩(へいしいわ)を見守るように波打ち際に佇む、人懐っこい猫君でした。

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