横溝正史

 映画「犬神家の一族」は、日本のマルチメディア戦略の元祖といえるだろう。角川が、角川春樹さんが生み出した「本とその他のメディアの一体化」によるコンテンツの売り方は、今でいうマルチメディア戦略だった。当時の勢いは凄かった。映画は石坂浩二さん、TVは古谷一行さんが金田一耕助を演じ一世を風靡した。角川文庫の横溝正史シリーズも本屋では平積みされて売られていた。その印象的な表紙は、すべて杉本一文さんが描かれていた。
 数年前、神戸で杉本一文さんのパネルトークを拝聴したが、凄まじい勢いでイラストをこなしたそうだ。あの印象的なイラストは、横溝正史の世界を象徴したモノになり、今でもあのイラストを求めて古書店を探す人もいらっしゃる。日本の田舎、古くからの因習、閉塞された社会、「家」という存在・・・そのようなモノを舞台に、金田一耕助は活躍するのが、横溝正史推理小説の面白みだった。
 あらためて読みなおすと、やっぱり面白い。舞台設定の妙と、なんとも言えない雰囲気が、その世界に誘ってくれる。横溝文学の真骨頂といえる仕掛けの多様さも良い。見立て殺人や、和風建築での密室殺人等々、トリックも嬉しい。そして愛すべき名探偵「金田一耕助」。夏の暑い盛りは、なぜか横溝さんの本を取って読み始めるのは私だけでは無いと思っている。あなたも今宵、本陣殺人事件、八つ墓村、獄門島・・・の世界を金田一探偵と共に覗いてみてはいかがですか。

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やっぱり表紙は杉本さんの絵でないとダメ!!


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