チャリオンの影

五神教シリーズ、記念すべき最初の一冊。当初、あまりに渋い主人公と暗い背景に、ちょっとウンザリした。しかし、その世界観はすばらしい。謀略により奴隷となって身も心もぼろぼろになって故郷に帰ってきたカザリル。昔、仕えていた藩主の未亡人のもとにすがる。そして今の藩主の娘の教育係 兼 家令となるが・・・物語は、静かに開けてやがて核心にせまる。後半に進むにつれ、ジェットコースター・ファンタジーとなっていく所は素晴らしい。主人公のカザリルが歩んできた熾烈な経験が、やがて一つの道となり物語の奔流となって突き進むのがわかる。最後の数章は本を置き、読むことをやめることはできないだろう。カザリルが仕える国姫・イセーレ、その侍女・ベトリスやカザリルの友パリなど生き生きと描写され話し声が聞こえてくるかのようである。著者のストーリー・テラーぶりはすさまじく、最後の最後まで気が抜けない。最後の最後に、冒頭にあった話が見事に結実していく。ああ、あの予言はこのことだったのか・・と。神々と冒険と政治の駆引き、恋愛や友情、すべての要素を抱きつつ物語は終了。上質のファンタジー作品。

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このシリーズ、五神教という設定が見事です。

姫神 : 春を象徴し、色は青と白。未婚の少女を守護する。
母神 : 夏を象徴し、色は緑。母親を守護する。
御子神 : 秋を象徴し、色は赤とオレンジ。男性を守護する。
父神 : 冬を象徴し、色は灰色と黒。父親を守護する。
庶子神 : 母神と魔の間に生まれ、色は白。すべての魔を支配する。

庶子神という設定が、物語に深みと幅を与えている。ぜひ一読をオススメします。(うちの書店では、現在ファンタジー特集=PickUp!!中~


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