キャプテン・フューチャー E.ハミルトン

 SFは難しいからという理由で読まない方もいらっしゃるが、能天気に楽しめるSFモノもある。その代表格がスペース・オペラというジャンルだろう。「西部劇を宇宙で行う」という大胆な設定さえ受け入れる事が可能なら、あとは楽しんで読めばよいだけである。SF黎明期の1930年代から50年代にかけて、火星シリーズのバローズ、レンズマンのE.E.スミスらが良作を繰り出している。中でも、E.ハミルトンのキャプテン・フューチャーシリーズは、大胆な設定、興味深い謎の提示、ミステリーを絡めた二転三転のストーリーが見事である。さらに日本の特筆するべき点は、野田昌宏氏の名訳によって紹介されたことだった。ホントに楽しませてもらった。
 今読むとSFというよりもファンタジー的印象が強いと感じる。すべての惑星に現地住民が居住しており、火星に古代文明があったり(これはSF界のお約束)、エーテルが宇宙に満ちている、土星にしか輪がない、太陽系の惑星に冥王星がある・・・等々古さは否めない。が、その楽しさは変わらない。
 主人公のカーティス・ニュートンは、イケメンで頭脳明晰、格闘技もプロ級という文字通りスーパーマンである。アメコミヒーローの原型ともいえる。また、一緒に活躍する「生きている脳・サイモン」「人造人間・オットー」「鋼鉄ロボット・グラッグ」のチーム編成は秀逸で、物語の進行を盛り上げてくれる。また、登場する準レギュラーの脇役陣もなかなか魅力的である。
 第二次世界大戦開始直後から出版されていたことを考えるとアメリカの懐の深さも感じる。宇宙というもののとらえ方自体が、未開の開拓地に対するものの様に感じられアメリカでの読者は、宇宙に対し一種の憧れを持って見ていたのだろうと感じる。そのわずか30年経過しないうちに月に立つことになる人類。その科学への希望が膨らんでいたころの名作だと思う。

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中学生のころ、楽しませて頂きました。野田さんに感謝です。


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