影の棲む城〈上・下〉L.M.ビジョルド 創元推理文庫

 ビジョルドの五神教シリーズ第二弾。トリプルクラウン作品。チャリオンの影の続編。通常の続編によくあるように、主役や脇役が一緒ではなく、ほぼ脇役で搭乗場面も少ないチャリオン国太后イスタが主役。母が亡くなったイスタは現状の幽閉された生活にいやけがさし、巡礼と称して旅に出る。途中から雲行きがあやしくなり、従者の一人は魔に取り付かれ、敵国の追撃に遭遇し捕虜となる。それを助けたのは、勇猛果敢な騎士だったが・・・

 上巻は、丹念に描いた下絵。その上に下巻にて大胆に下絵からは想像もつかないものを見せてくれる一大ファンタジーとなっていた。さすがに、3つの賞を取るだけあって、すばらしいエンディングを見せてくれる。

 魔を宿すフォイとアリーズ夫人のカティラーラ。そして常ではない状態のアリーズとイルヴィン。通常では考えられない魔の増加とジョコナから救出したゴラムの不思議な状態などが絡み合い、ジョコナのソルドソ公の動きも合わせて物語は収束へと向かう。

 本編には、前作の重要人物であり主人公だったカザリルは登場しない。イセーレ国王妃もベルゴン国王も名前は登場するが、かかわりは無い。その分、フェルダとフォイ兄弟や急使のリス、庶子神の神官であるガボンなど個性的な新しい登場人物がその役割を演じてくれる。

 上巻の展開が比較的ゆったりと進むことに比較して、下巻の流れは急を告げている。いろいろな意味を示しつつ神と人々との係わり合いまで考えさせるエンディングはすばらしい。すばらしいというよりもある意味すさまじいとも言える。チャリオンの五神教シリーズは、一筋縄では行かないファンタジーである。心して読まれることをオススメする。

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 ファンタジーファンには、「重点押し」の作品。前作の「チャリオンの影」と合わせて入手がオススメです。


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