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2024.6.9 「Tempalay Tour 2024 "((ika))" 」@新潟LOTS

「最高に気持ち悪くて 最高に気持ちいい」
個人的にTempalayの音楽を表すならこれに尽きる。どこでも聴いたことないような変態メロディと懐かしさを感じる美メロディの混ざり合いがクセになる。全部の曲を把握している訳でもないし、ファン歴が長い訳でもない。けれどもこの音楽を、このバンドのライブを経験しないのは絶対に後悔するし、もったいないと思った。そんな衝動にかられ取ったチケット。唯一無二の音楽をライブでどっぷり浴びたTempalayのツアーファイナルのライブレポ。

18:10分ごろ、若干押してスタート。スモークの焚かれたステージにライトが当たってメンバーが入場。最後に小原稜斗が現れ、サポートメンバー含めて6人体制のTempalayに。そのシルエットだけでも個性爆発すぎる。サポートのパーカッション(松井さん)とベース(榎元さん)はゴリゴリにデカいし、ニコタンのおーちゃんは髪型奇抜だし、フロントの3人は言わずもがなのオーラがあって揃った時の悪の組織感がたまらなくカッコいい。小原稜斗本人も集団性にカッコよさを感じるタイプで、その最たるものとしてバンドをやりたいと思ったとインタビュー記事で話していた。Tempalayは仲悪くてそういう方向には行かなかったとも話しているが、ステージ上のその姿からは間違いなく一つの集団としてのカッコよさを感じた。Tempalayという一つの集団から伝わる独特の雰囲気がこれから始まるライブに期待を高まらせた。

いきなり「愛憎しい」でのボイチェンから始まりTempalay独特の空気が生まれ「ゾワゾワゾワッ!!」と鳥肌がたった。初めて楽曲を聴いた時のインパクトが再度ライブで飛んできた。これがライブの醍醐味!と言わんばかりの体験に一気に気持ちが高まる。いつもライブ前は実感が湧かなかったり、開演までの待ち時間で何故かこちらが緊張したりしてるから、意外とライブモードになっていない。だからこそこの一曲目が鳴った瞬間の高揚感は他には代えられない。非日常が始まる感じ、刺激的です。

「Room California」から「月見うどん」では、ひたすらに美しいメロディにAAAMYYYさんの歌声が加わり、まぁたまらない。夜のおしゃれな洋室と、田舎の縁側で眺める月夜。雰囲気の違う二曲で情緒が揺さぶられるが、どちらも情景がはっきりと浮かんでくるのはTempalayの魅力だと感じた。ここの繋ぎ本当に良すぎた。今後の安眠ソングリスト入り。

メンバーの紹介の流れに乗って「楽しすぎるから、セトリに無い世界初披露のSupermanって曲やります。」とのMCで湧く会場。どうやら本ツアーでもこの最終日の新潟でしかやっていないらしい。テンションの上がった会場を鎮めるように「でもね!この曲めちゃくちゃ難しいの。ほんとコピバン聴いている感覚で聴いて。緊張するね。」とやる前から保険かけまくりで笑った。しかし演奏はバチバチにキマっていてカッコよすぎた。歓声と拍手で埋まる会場。「いやみんな素晴らしかった、二度とやらない!」と宣言に、実は初のTempalayの今日、中々すごいセトリに立ち会えた自分はラッキーすぎるかもしれない。やっぱり新潟は日程とセトリに恵まれてる気がする。

その後始まったのは「あびばのんのん」。会場に漂う浮遊感がより一層広がり、夢なのか現実なのか分からない程に不思議な感覚に。音楽と人(2024年6月号)でのインタビュー記事で書かれていた「刺激的なのは事実だが、その奥には、幼少期の夕焼けというか、あの夏の花火というか、誰の心にも存在するであろうノスタルジーが爆発している」というTempalayの紹介文があったが激しく同意。わかる。Tempalayを初めて聞いた時の表現できない感覚を見事に言い表しているな~と感じた。楽曲自体の歌詞も多く出てくるワードだが、Tempalayからは「夏」を感じる。この日初めてライブで聴いた瞬間も、これまでに過ごしてきた何でもない夏の風景が脳裏を巡った。これが嘘じゃなくて本当に。毎年河川敷で観た花火も、夏休み突入前に気だるそうに友人たちと帰省の準備をしていた寮での風景も、やることも無くなりダラダラと居間でアイスを食べながら呆けていた夏休みも、じんわりとフラッシュバックする。特別派手で印象的なビッグイベントではなく、日常的な風景を思い出させてくれるのもこのバンドの好きなところ。楽しかった印象的な出来事は中々忘れないけれど、その頃にしか実感できない普遍的な楽しみとか、日々の退屈とかはいつの間にか忘れてしまう気がしている。二つの感情は相反しているようで同じ。大人になって忙しく余裕の無くなった日々では感じられない。押入れの中から懐かしいおもちゃを取り出すように、ノスタルジーな感情を掘り返してくれたTempalayの楽曲を噛みしめながら聴いていた。Tempalayの曲って音楽は他とは違う新しさを感じるのに、聴いたことで浮かぶ情景には懐かしさを感じる。その相反した感覚がTempalayの音楽をジャンルレスにしていると思う。個人的にはこのバンドを知るきっかけになったこの曲がこの日のベストソング。

「今世紀最大の夢」「ドライブ・マイ・イデア」と怒涛のセトリが続き、最後に演奏されたのは「そなちね」。藤本さんのドラムを筆頭にアウトロで響き渡る演奏。原曲を聴いただけでは想像のつかない激しいラストに鳥肌が立つ。残響する会場から去っていく小原稜斗、ツアーラストだったことも相まってからか、その姿からは夏の終わりを感じた。実際にはこれから夏が来るのだが、Tempalayというバンドが何年も前の記憶を再度味合わせてくれたからこその感情だった。メンバーも続けて退場していき終演と共に大きな拍手に包まれる会場。アンコールは無くこれで公演の全てが終了になります、とアナウンスが流れても誰も会場から離れない。鳴りやまないアンコール待ちの拍手に再度アナウンスが流れるほど。それほどにライブの満足度からの賞賛と、終わってほしくない寂しさの表れだったのかもしれない。ステージ上にプロジェクターで映し出された「Tempalay」の文字が、確かにそこに「回帰した一つの夏」があったことを証明してくれていた。


余談
ここ最近のLOTSでのライブ、ツアー初日だったりファイナルだったりと行きたいアーティストが新潟を優遇してくれてるとしか思えないくらい軒並み日程がよくて嬉しい。決まってMCではお酒の話をされるからやっぱり打ち上げの日本酒を楽しみにしてるのかな。今回のMCでも「最近の打ち上げはたくさん飲んだりたくさん食べたりするんじゃなくて、おいしい日本酒とお刺身とかでやってる」「俺たちもおじさんになったってことだよ」などと話していたし、たっぷりと新潟の日本酒とお刺身を堪能してくれていれば嬉しい。あと今回は無かったけれどMC率が謎に高いバスセンターのカレー。なんであんな人気なんでしょう。




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