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禁煙のプロたる矜持

タバコを吸いはじめて10年経った。

これまで20〜30回禁煙してきたから、禁煙は慣れっこだ。

まずは今残っているタバコを吸い切る。もったいないからね。

紙タバコではなくwithという水蒸気が出るタイプのものだ。味はともかく臭いがつかないのがいい。いくらでも吸える。

吸い切ったら手元に残ったタバコを吸うための機械とかは捨てたい。が、どうやって処分するのかわからないから一旦保留。

炭酸水とかガムとかで誤魔化したこともあったし、ニコチンパッチやニコチンガムを使ったこともあった。

どれもそれなりに効果はある。

しかし、タバコを吸った時の手足に血が巡るような感覚は得られない。

どうにも不完全燃焼な感じだ。

今日も禁煙をしている。11/1の0時からだから、12時間ほど経った。

先週の禁煙は鬱っぽくなってやめた。
タバコを吸うとなぜ幸福感がでるのか。

識者に言わせりゃ、タバコを吸ってると自分でドーパミンやらが出せなくなるそうだ。

あれは嘘だね、吸ってなかった時もそこまで多幸感があったと記憶していない。

いや、本をひたすら読んでた時はワクワクしてたからあれなのか?

わからない。

ともかく、今回はうまくいくだろうか。

私は知っている。しばらく我慢した後のタバコは特別美味い。

これは禁煙のプロだからこそ知っている真実だ。

ニコチンが抜け切るか抜け切らないかギリギリくらいが1番美味い。

吸ったことがない人に伝わるように書くなら、腹を限界まで空かせた後の飯だとか、サウナで我慢した後の水だとか、会議で行けなかったトイレをギリギリで駆け込めたときだとか、まあそういう感じ。

書いている今がちょうど、そんな1番美味しく吸えるタイミングだ。

これが2〜7日経つといけない。

吸いたいからと誘惑に負けて吸うわりにあまりうまくないのだ。

あれおかしいな?と思ってしばらく吸うとうまさが戻ってくる。

最高の一本を吸うなら今がベスト。

どうせならピースの少し高いやつをゆっくり吸いたい。

ピースってのは、息をゆっくり吸うと甘さがじんわり広がる。急いで吸うとダメだ。やたら辛くなる。

急いでいる人向けのタバコではないね。

幸い私は急いでいない。文章を書く余裕すらある。

ただ、ここに香り高いコーヒーとタバコがあったら、なお良かったことだろう。

そもそも秋に禁煙しようってのがよくない。

タバコには季節がある。

タバコの旬は秋から冬にかけて空気が澄んでくるころだ。

秋にドライブをして長野県の山を見つめながら吸うだとか、冬に日本海を臨みながら吸うだとか、これが美味いんだ。

夏は正直そんなに美味くはない。禁煙を本気でやるなら夏だろうね。

でも夏だってあれだ。飲み会を抜け出して外で一服するときの何とも言えない空気感。喧騒が少し遠くで聞こえる中、一人、あるいは二人くらいでぽつぽつ話す空気感。あれだってかなり良い。

会話が途切れたってタバコがあれば間が持つ。

あの絶妙な間を何といえばよいのか。現代語だとエモいとなるのか。

ノスタルジック、気だるさ、刹那的な心情、なかなかぴったりの言葉は見つからない。

いろんなものをぼやかすために吸っているんだからそんなものかもしれない。

ぼやかすといえばお酒だけど、残念ながら強くない。
それでもバーにはよく行ったものだ。

ウイスキーを飲みながら煙草ものんで、本について映画について話をする。

お酒だけってのはつまらない。煙草の一呼吸が空気をつくるんだ。

暗い雰囲気の中、明滅する火の光。照明に見え隠れする煙の流れ。

あれに相当するものってほかにあるのかね。

さてともかく禁煙1日目これにて終了。明日も続いているのか気分次第。

では皆さんさようなら。


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