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右に左に自在にアクセスするドラマー・・・Simon Phillips

前回の記事で紹介した動画であるが、大元の動画は当時VHSで発売されたシンバルメーカー Zildjian 社主催のドラムフェスティバル・Zildjian Day 1993年ロンドン公演のものである。

当時、北海道のド田舎に住んでいた僕は、都会に住んでいた人たちと違ってそうそう世界的音楽家の演奏を生で聴いたりクリニックを受ける機会がなかった。なので、ドラムの情報と言えばビデオだった。

で、当時は中学生で、小遣いが多いわけはなく、欲しいビデオがあってもなんでもかんでも買える状況になかった(ビデオ1本5,000~10,000円くらいしたしね・・・。)。なので、1本のビデオに多くのドラマーが出演しているビデオ作品の存在は本当にありがたかった。

そして、Zildjian Day in London 1993 のビデオは、お目当てのドラマーが2人出ていたので、当時の僕の愛聴盤であった。

そのお目当てのドラマーとは前回記事の Dennis Chambers


そして今回紹介する、Simon Phillips である。


(YouTube を検索していたらこんな動画を見つけた。同じく Zildjian Day in London 1993 公演からの動画であるが、市販のVHS版からはカットされていたシーン。VHS版には尺の都合なのか、いくつかカットされた部分があるようだ。)


これは優劣の問題じゃなくて単なる好みの問題であるが、当時の僕は Dennis より Simon の演奏の方を好んで聴き、真似ていた。

今はどちらかというと Dennis のようなスタイルの演奏の方が好きだが、当時は Simon のように、ストレートで淀みないグルーブで、さらにソロの展開がきれいに構築されているような演奏スタイルが好きだったのだ。

Simon の存在を知ったのは、当時、僕がヒーローと崇め追っかけをしていた手数王・菅沼孝三さんのインタビューの中にしょっちゅう登場していたことがきっかけだった。菅沼さんはたくさんのドラマーから影響を受けているが、当時は特に Billy Cobham と Simon Phillips の名前がよく登場した気がする。

セッティングからしてツーバスにフロント4タムの多点セットで、菅沼さんフリークだった僕にはとても親しみを感じた(そもそも、Simon のこのセッティングは元祖多点ドラマーである Billy Cobham からの影響である。)。当時は多点セットが大好きだった(今はそうでもない)ので、Simon のセッティングを見るだけでワクワクしたもんである。


まず、その豪快な音色にびっくりする。

全体的に意外にも大口径であり、おそらくは24インチのツーバスに10から16までのタムを6個+ゴングバス。シンバルもライドが22、左右のチャイナもたぶん22。クラッシュも16~20くらいとわとデカイ。

多点キットというと、ひとつひとつの太鼓の音が整理されたフュージョンチックなサウンドを僕は連想するが、Simon のサウンドはドカンドカンとひとつひとつが豪快なオープンサウンド。Simon の活躍する音楽フィールドがジャズ・フュージョンよりもロック(Jeff Beck ,  Michael Schenker , TOTO 等に代表される)寄りだったのは、この Simon の豪快なサウンドが無関係では無かろう。

そんなワイルドで音量もかなりでかいサウンドなのに、妙に整頓されてオシャレに聴こえるのが Simon のすごいところ。ロックとジャズ・フュージョンの良いとこどりなサウンドである。


僕は彼のスネアサウンドが大好きである。ものすごい個性的とはいわないかもしれないが、クリスピーさがありながら中域がいい感じで持ち上がったような「ポクン」というサウンド。Simon は Buddy Rich , Billy Cobham , Tony Williams といったドラマーに特に強く影響を受けており、他のロック系ドラマーにはあまり見られない、細やかにルーディメンツを駆使したスネアフレージングも特徴。Simon の細やかなドラグサウンドが心地よい。

小さい音の演奏がめちゃくちゃうまいのもの特徴的。ものすごい小さい音のまま、手数もグルーブも保つことができる。ロック音楽のフィールドで活躍する人で、ここまで小さな音に絞って演奏することにこだわりがある人は他にいないのではなかろうか。こういったことにBilly の強い影響を感じずにはいられない。


そういえば、Simon の代名詞とでも言うべき奏法なのにここまで書くのを忘れていた。Simon は左手でハイハットとライドを叩くオープンハンド奏法の使い手である。

オープンハンドは決して万能奏法ではないので、総体としては少数派の奏法であるが、Simon のように左右上下縦横無尽にアプローチする姿を見ると思わず真似したくなってしまう。

僕は高校2年の時に、特に Simon にハマり、フツーのドラムセットのハイハットを下げライドを左に置き、オープンハンドで演奏していた。

僕は当時、吹奏楽をやっており、他のパーカッショニストにはたぶん嫌がられていたと思う(僕が叩くたびにハイハットとライドを大きく移動させなければなかったから。)。また、「器用に演奏するヤツだな」と先輩に言われたこともあるが、ちょっと???ってなった。というのは、オープンハンドに慣れたことがある人ならわかってもらえると思うが、長く続けると自然と左手がリードシンバルへ手が出るので、あまり器用なことをしているという自覚はないのである。

あと、Simon モデルのシグネイチャースティック PROMARK
TX707W にはたいへんお世話になった。14mm径だが、いわゆる5Aよりも若干長く、丸型チップ(カワイイ)。

これを Simon のまねをして、グリップエンドギリギリまで長く持ち、小指が若干スティックから外れて握るのがお気に入りだった。


さて、たくさん書いたので、今回はここまで。

Simon Phillips のことについて書くと、当時の思い出が蘇ってくるなぁ。こんなにハマッてたんだなぁ。

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