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カッキ―物語

 中国新聞で4回に渡って連載されたカッキー物語。カッキーのイタズラの様子を描いたものなのですが、むやみに簡潔にまとめようとすると面白さが損なわれてしまうと判断したので最低限の範囲で文章を引用します。

※引用文も短縮するため、少し文章を改変しています。

①アラスカのラッコ到着 平成7年10月20日

ラッコたちが空輸されてきて、宮島水族館に到着し飼育員が四頭のラッコに出会う話。


②バケツ奪いおもちゃに 平成7年10月27日

最初は人間を恐れていたカッキー、一か月もすると堂々とえさをもらいにくるように。ある日、他のラッコにえさを与えているときに顔を出す穴から飼育員のおしりをひとなぜして穴の中へ。給仕時間の度に同じことを繰り返すように。
そのうち、行動がだんだんと大胆になり、座っている飼育員の後ろポケットのボタンにかみつき引きちぎろうとする。ラッコがボタンを飲み込んではいけないので、二、三度追い払うとどうにか諦めてくれた。
次に目をつけたのが柄のついた清掃用のスポンジ。ガラス清掃のために入った係員が例のスポンジで清掃を始める。それにカッキーが何食わぬ顔でさりげなくつきまとい、ある日、すきをついてスポンジを奪い取ってしまう。
次の対象物はバケツ。えさを入れるバケツ。                             初めは何げなくバケツに手をふれる、時にはトントンとたたいてみる。人間の方はまさか取られるとは思っていないので軽くバケツを抑える程度。そんなことを何日か繰り返し、ある日いつものようにカッキーが寄ってきてバケツにさわっているなと思った瞬間、あっという間にバケツをひっくりかえし、あわてふためく人間をしり目に、バケツをかかえてスタコラサッサ。持ち逃げしたバケツは格好のおもちゃ、頭からすっぽりかぶってクルクル回ってみたり、水中を潜水員よろしく泳ぎ回ったり、バケツがこわれるまであきることなく遊ぶのである。

飼育員の油断を誘い、目的のものを奪うカッキー。飼育員もこの手際には感心し、後輩の飼育員にも口をすっぱくして注意するものの、一度はやられてしまうようです。

③娘にもいたずらの才能 平成7年11月10日

 ある日、給餌の時にえさを受け取るものの、口の中に物が挟まっていて食べることができない様子。原因は奥歯に挟まったパイプの破片。水面から1.2メートルほど上に取り付けられたガラス面清掃用のシャワー管をジャンプで飛びついて折りとってしまい、それを噛んで遊んでいるうちに奥歯に挟まってしまったらしい。
 防水材はがし。                                       水槽内は全体に水漏れ防止のため、特殊な樹脂でコーティングがほどこされている。新しいうちは表面がツルツルしているので問題はないが、貝殻などで傷がつくと、もうラッコたちの遊び道具になってしまう。この傷にちょいとつめをひっかけ、ぐいと引っ張るのである。ペリっと音がするかどうか別として、防水材が浮き上がり、ついにははがれてしまう。
これを繰り返し、半日で畳一畳分もの防水材をはがしてしまった。しかも水槽内二か所で。これらの修復に一か月以上の日数と、膨大な費用がかかったのは言うまでもない。今度こそというわけではないが、新特殊工法で工事をおこなったのである。
 あの事件から数年、現在カッキーの娘がいたずら盛り。彼女は絶対にはがれないはずの防水材を貝殻を使って丁寧にはがしてくれている。

 ラッコの防水材はがしは鳥羽水族館で初代コタロウがよくやっていて飼育員は手を焼いたそうです。比較的最近の話では、豊橋総合動植物園でヤヨイがガラス面を貝で割ってしまった逸話があります。各地のラッコ飼育園館にもこういう逸話はあるのでしょうか?


④”他人„の子取り上げる 平成7年11月17日

平成三年十一月二十四日、ラッコの赤ちゃん誘拐事件が発生した。               この事件より数日前の十一月二十日、カッキーがメスの赤ちゃんを出産し、ラッコ水槽もひさびさのよろこびにつつまれていた、ところがこの大事件である。
事の起こりはこうである。十一月二十四日、水族館生まれのミッキーが突然産気づき、午後二時ごろ無事出産。これを見ていた職員一同万歳をさけぼうとした瞬間、スーッと近づいたカッキーが、ひょいとばかりにミッキーの生まれたての赤ちゃんを取り上げたのである。しかも本来母親の行うべき羊水にぬれた赤ちゃんのグルーミングをせっせと始めたのである。赤ちゃんを取られたミッキーは、なんとか返してもらおうとカッキーにぴったりと寄りそい、そーっと手を伸ばし、まさにわが子に触れようとすると、カッキーはその手をじゃけんにふりはらい、スイッと泳ぎ去ってしまった。
子どもをとられたミッキーは母親の執念でその日の深夜についにわが子を取り戻した。この後、一か月またいつ子どもをとられるかと気の休まる日はなかったようである。なぜカッキーが”他人〟の子供を取り上げたのか、今もってなぞのままである。

幾度も飼育員をいたずらで困らせていたらしいカッキー。いたずらの度合いも個体によって変わってくるのでしょう。もし、各地の園館のラッコの飼育員の話を聞くことができれば、面白い話が聴けそうです。

ラッコがたくさんいた時代の園館では、ラッコたちはお互いにどのような関係を築いていたのでしょう。雄と雌の関係に関わらず、同性同士や親子同士でどのようなコミュニケーションを取っていたのか気になります。


ラッコの子育ての違い

ラッコの子育ては自然界から連れてこられた個体と水族館で育った個体では違い、自然界から来たラッコは赤ちゃんを絶対に人間に近づけさせず赤ちゃんが泳げるようになって人間に触れようとすると親が慌てて引き離し、常に赤ちゃんに注意を払っていて鳴き声をあげればすぐに飛んでいき愛情がこまやかなんだそう。

一歳を満たない頃から宮島水族館にやってきたカッキーの例では、人間を信頼しきっていて給餌の時は餌の入ったバケツの傍に赤ちゃんを置いて餌を食べたり、赤ちゃんが鳴き声をあげれば一応飛んでいくが無事を確認すれば自分の遊びに夢中になったりと扱いが雑な傾向があったようです。

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