言葉の死んだ日

それは死んだ
潰れた心臓といっしょに死んだ
声と想いと願いと死んだ
音もなく しかし確かに殺された
何者かの流した毒を浴びて

それは今日 奇跡のように息を吹き返した
心臓と声は目を覚ました
想いと願いはまだ病み上がり

けんめいに出ていこうとする声も
ひとりでは速度が足りなくて
あてられた毒のナイフに削ぎ落とされて
伝えようにも 輪郭さえ残らない

落ちたかけらは
いつもどおりごみ箱へ行く
眠る二人は叩き起こされても
病める彼らは怖がりだから
せっかく集めたそれを
網目の細かなふるいにかけようとする

それは彼らに早くわかってほしくて
脈打つ心臓に寄り添いながら待っている

「僕は死ぬために生まれてきたわけじゃないし
 僕がきみたちに生きていてほしいのだ
 きみたちなしでは生きられない僕は
 きみたちのために存在している

 きみたちは
 理不尽に降りかかる毒に侵されず
 瑞々しく輝けるのだというのに」

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