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京都の女子大学生が考える、わたしたちのための「性的同意ハンドブック」。

 「性的同意」――性的な行為に対して、その行為を積極的に「したい」と望むかどうか、お互いの意思を確認すること。ウィングス京都を運営する私たち京都市男女共同参画推進協会が『Gender Handbook 必ず知ってほしい、とても大切なこと。性的同意』を発行して3年。少しずつこの言葉が広がりつつある中で、京都女子大学のあるゼミ生のグループが、「女子大学生」の立場から『京女生のための性的同意ハンドブック』を制作しました。 
 どんな想いでこの冊子を制作し、制作過程でどんな学びや変化があったのでしょうか。制作メンバーの、京都女子大学法学部南野ゼミ元ゼミ生の皆さんにお話を聞きました。


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女子大学生の生活実態にあった「性的同意」を

――どのようなきっかけでハンドブックを作ることになったのでしょうか?

ゼミ生で、公益財団法人京都市男女共同参画推進協会が発行した『Gender Handbook 必ず知ってほしい、とても大切なこと。性的同意』を読んで話し合う機会があって。その時に『Gender Handbook』が「あまり京女生の実態に即していないのではないか?」という意見が出たんです。

自分自身、京女生として生活する中で、『Gender Handbook』の中で事例として挙げられていたナイトクラブや男女混合シェアハウス等はあまり馴染みがありません。あと、京女生の中には、男性に接する機会がサークルやバイトなど学外に限られていたり、附属の中高一貫校も含めいわゆる女子中女子高に通っていた学生も多く、男性に慣れていない学生もいます。

そのような、今まで性的同意について考えることがなかった、当事者意識の薄い学生が「もしもの時に役立ててもらえるような内容にしたい」と思い、ゼミの教授からの提案もあって、京女生ならではの視点を盛り込んだ、京女生にとって分かりやすい性的同意の取り方・断り方に関するハンドブックの制作を始めました。
制作にあたり、学生主体で実施する様々な取り組みを支援する京都女子大学「らしつよチャレンジ」に参加しました。

――制作にあたってどんな点を意識しましたか?

制作で軸に置いたのは、「性的同意について何も知らない京女生、性的な行為を断りたいのに断れない京女生の役に立つハンドブック」です。
知識や経験が無い人も分かりやすく正しい知識を得られるものにすること、あと性的同意については理解できるけれど、実際にそのような場面に直面した時、断りたいけど断れない学生は多いのではないか?と思ったので、そのような学生のヒントとなる内容を心がけました。

そこで想定したのは、「正しい知識を持っていない下級生(特に新入生)が、サークルやバイト先の先輩から性的な行為を要求された時、自分の気持ちを相手にしっかり伝えられるようにするにはどうすればいいか?」。

私自身、京都女子大学に入学して驚いたのが、他大学からのサークル勧誘の多さです。性的行為に限らず男性からの誘いをどう断れば良いのか分からないまま、性的同意についてなんの知識もなくサークルやバイトに入る新入生は多いだろうし、その中で同意のない性的行為で傷ついてしまう学生もいるはずだと思ったんです。そういった実際の場面で役立つ具体的で身近な冊子になるよう意識しました。


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「男性がリードする側だと思っていないですか?」

――具体的に冊子のどのような点を工夫しましたか? 

専門家の方にお話を伺う中で、性的同意を取るためには、限られた場面だけじゃなくて、普段から主体性を持ったコミュニケーションを取れるようになることが大事だ、と気づいたんです。そこで、この冊子の読者は京女生を想定していたので「女性が読む」ことを念頭に置いて、「男性がリードする側だと思っていないですか?」と問いかけるチェックリストを盛り込みました。男性に対して受け身ではなく主体的にコミュニケーションを取ることも性的同意に繋がる大事なポイントだってことを伝えたかったんです。

また、当初は京女生全員に配布される予定だったので(新型コロナウイルス等の関係により、配布されていない学生もいます)、配布される学生の中には既に同意のない性的行為により、不快な思いをして傷ついている学生もいるかもしれません。そこで、「性暴力」という言葉の取扱いには十分に注意しました。

――紙面のデザインでもこだわったポイントはありますか?
 
知識がなかったり、性の話題に抵抗がある学生でも興味をもってもらえるよう、漫画の導入を盛り込んだり、キャラクターの熊を学生役と先生役に見立てたり、LINE風のやりとりで具体的な例を入れたりと、「性的同意」が身近なものであることを伝えながら、正しい理解を得てもらえる紙面を工夫しました。また、キャラクターを熊にしたのは、セクシュアルマイノリティの学生にとって違和感のないよう、性別を感じにくいデザインにする狙いもありました。

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――制作にあたりアンケートも実施されたんですよね。

はい。京女生を対象に、意識調査と実態調査を行いました。
京都女子大学は法学部のようにジェンダーに関する講義が必修になっている学部ばかりではないので、学部による回答の偏りを避けるために、全学必修科目の「仏教学」の先生にご協力いただき、全学部の3回生を対象にアンケートを実施し、WEB回答で284人から回答を得ました。デリケートな内容なため、ゼミ生で何度も話し合い、アンケートの内容から実施方法まで多方面に配慮できるよう心がけました。

アンケートの結果では、「性的な行為に同意は必要だと思いますか」という質問に「はい」と答えた人が95.7%もいて、私たちの予想よりも性的同意に対する意識が高く驚きました。ただ、「性的な行為を断ったら、相手に嫌われたり、傷つけてしまうと思いますか」に「はい」と答えた人が37.6%だったりと、やはり頭では理解していても、日常生活で実践することに難しさを感じている人が多いんだなと感じました。アンケート結果は、冊子の「京女のみんなの意見を見てみよう!」のコーナーに取り入れました。


”違う”からこそコミュニケーションが必要

――制作で難しかった点はどこですか?
 
専門家の方や大学の教授の意見を反映させながら、メンバーの考え方や感じ方、価値観の違いをすり合わせ、それらをハンドブックに反映させていくことが難しかったですね。例えば、「どの範囲で性的同意を取るのか」「どのように性的同意を取るのか」など、細部に関する考え方はメンバーの中でも十人十色で、特にLINE風の断り方例の話し合いでは、ゼミ生同士の意見の違いが大きく表れました。

でも、私たちメンバーがそうであるように、どんな人も一人一人がそれぞれ異なった価値観を持っていて、だからこそ、パートナー間でも、コミュニケーションを取って、その違いを擦り合わせていくことが大切なんだなと思ったんです。実際、性的同意に関してみんなで意見を言い合って、深く話し合ったことで、性的同意についての自分の価値観が明確になっていったし、お互いの違いを理解し合う機会になりました。ハンドブック制作を通して、そんなコミュニケーションの重要性を改めて考えるきっかけになったことは、とても印象に残っています。


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――ハンドブック制作中、調べたり、インタビューを重ねたりする中でどんなことが印象的でしたか?

調査の中で出会った、イギリスの警察が製作した「Tea and Consent」という紅茶の動画が印象的でした。


この動画は、性的行為を「紅茶」に置き換えていて、紅茶を淹れるときは相手が飲みたいかどうか聞くしだろうし、今はいらなかったら「飲みたくない」と断るはず、性的同意もそれと同じだと、わかりやすく伝えています。


性的同意と聞くと難しく感じますが、突き詰めれば、「自分も相手も尊重し、より良い関係を築くために重要だ」という考え方だと思います。それって、普段のコミュニケーションとなんら変わらないことなんですよね。その意識が広がることが大事だと思います。


――もっとこんなことを盛り込みたかった!というポイントはありますか?

 
意識の差や認識の違いを把握するために、他大学に訪問し男子学生へのアンケート実施を予定していましたが、実現できませんでした。


――今後このハンドブックを誰にどのように活用して欲しいですか?


京女生のために制作した冊子なので、やっぱりまずは京女生に、性的同意含め性の問題について知り、考える第一歩として活用してもらいたいですね。

また、同じ問題意識で取り組みをしている学生の方に、私たちが『Gender Handbook』からきっかけをもらったのと同じように、この冊子が話し合いのきっかけになれば嬉しいです。
そして、自分自身でも、周りの人がこのような問題に悩んでいたら、ハンドブック制作の過程で得た知識を生かして手を差し伸べたいなと思います。

★★『京女生のための性的同意ハンドブック』は以下よりご覧ください★★
(PDFがダウンロードできます)
https://www.kyoto-wu.ac.jp/rashitsuyo/rhnb30000000nddz-att/20210700.pdf

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