法務人材養成Note ~法律等の理解力~ 前半
※長くなったので前後半に分けた。
後半はこちら(作成中)
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「経営法務人材スキルマップ」による法務人材養成に関するNote 第3弾
・対 象:スタッフ
・能力分類:法務人材として身につけるべき法的素養―法律等の理解力
のスキル習得のためのアドバイスを記載するもの
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1.要求レベル及び要件
2.趣旨
法務人材は、「法務のプロフェッショナル」である。
「法務」が「法律や司法に関する業務」であることに照らし、その基礎である「法律その他ルール」を適切に読み解く能力が必要となる。
本スキルは、「法律その他ルール」を適切に読み解く能力の根幹に当たる『関連法的文書の必要十分な理解・評価』を求めるものである。
3.スキル習得のためのアドバイス
(1)『法的文書』を読み解くための技法―法的三段論法
『法的文書』は、「法律その他法に関する解釈等を示した書面」をいう。
すなわち、『法的文書』には「法解釈」が示されているものといえる。
「法解釈」にはお作法(効率的に法解釈を行うための共通言語)として、”法的三段論法”というものがある。
法学部やロースクールの課程を修了した者にとっては釈迦に説法かもしれないが、改めて『法的三段論法』の意義およびその内容について概説してみたい。
①法的三段論法の意義
法的三段論法は、法解釈(法律の定め自体の解釈や具体的事実への適用における一定の解釈)を誤謬なく行うためのフレームワークである。
法律その他の「法」は、”解釈の余白”を設けていることが多い。
複雑多岐にわたり時々刻々と変化していく社会情勢に柔軟に対応するため、法律は、抽象度を高めて、一般的に適用される余地を残しているためである。
法的三段論法は、そのような「法」一般の性質にかんがみて、具体的な事実に対する法律の適用有無(具体的事実の法律要件への適合性・法律効果発生の妥当性およびその内容)を確定するために用いられるものである。
②法的三段論法の内容
法的三段論法は、
A 【大前提:法規範の存在】
ある法律要件がある充足されるとき、ある法律効果が発生する
B 【小前提:具体的事実の要件充足性】
特定の事実は、ある法律要件を充足するものである
C 【結論】
ゆえに、特定の事実があるとき、ある法律効果が発生する
『法的文書』は、上記のAまたはBのいずれかまたはその双方を解説するものである。
『法的文書』を「正確かつ十分」に読み解くためには、当該文書の記載が上記AとBどちらに焦点を当てて書かれているものかを意識する必要がある。
なお、法的三段論法をはじめとした、「法律学(殊に民法)を題材としたフレームワーク」を習得するための書籍として、以下のものを紹介しておく。
(2)法的文書の読み解き方(総論)
(1)では、「法解釈」のお作法としての「法的三段論法」を紹介した。
「法学」の共通言語を理解することで、その文書の趣旨を把握することを目的としたものである。
以下では、法的文書にはどのような種類があるのか、その種類ごとにどのような特徴があるのか、といった総論的な理解をすることを通じて、法的文書の読解力を涵養することを促していきたい。
上記引用は、法律文書の作成方法を演習を含めて解説した法律実務家必携の書籍における分類を示したものである。
同書では、前者を「客観的文書」、後者を「説得的文書」と呼称している。ここでは、この呼称に倣うこととする。
①「客観的文書」の特徴と留意点
「客観的文書」は、価値中立的に読者に情報を網羅的に提供することを主目的としていることから、非常に平板かつ汎用的な表現が多い。
かような表現がとられているがゆえに、読解のためには「想像力」が必要となる。
なぜならば、汎用的な表現であるため、具体的な事実に適用するためには、その表現がとられた趣旨等に照らして一定の解釈をすることが必要となり、この趣旨等を把握するためには、一定の「想像」をすることを余儀なくされるためである。
したがって、「客観的文書」はあくまで汎用表現が用いられており、個別具体的な点については論を俟つほかないという点に留意をすべきである。
②「説得的文書」の特徴
これに対して、「説得的文書」は、自らの論理を説明し、特定の者に納得してもらうことを主目的としていることから、特定の社会的事実を前提として具体的に記載されている。
そのため、当該文書の読者としては、迫真性があり理解しやすいものであることが多い。
しかしながら、「説得的文書」が特定の事実、特定の者に向けた文書であることにかんがみると、”自分が検討している事案にそのまま適用できるか否か”という点を常に意識する必要がある。
~後半へ続く~
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