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【診断】ER・初診で診断「名」を急がない

 診断にまつわる話をします。今回はERや、初診患者さんの診断についてです。

ERで診断「名」を急ぐ研修医と、患者・家族

 みなさんは、ERで「診断名をつけること」にこだわり、苦労した経験はありませんか?

 診断にこだわってしまい、どうしても患者さんあたりに費やす時間が長くなってしまう。診断「名」をつけることにこだわり、無駄に悩んでしまう。そして待ち時間の長さに患者さんからクレームを言われる。挙句の果てにコメディカルからも冷たい目で見られている。

 そんな研修医のみなさんは多いのではないでしょうか?もちろん、研修医でなくとも陥るワナだと思います。まして、患者・家族は「先生、診断は何なんですか?」と詰め寄られる。自分もうーん、分からない。けど分からないというのはなんかみっともない気がするし、、どうしよう、、、。

 確かに、診断名がつくというのは一つの安心感があります。人間、得体のしれないものへの恐怖感というのは、強いものです。名前がつくことで安心感があります。たとえ、それが怖い病気だったとしても、です。

 しかし、診断「名」にこだわると、患者マネジメントを決められずERで「硬直」してしまうことにもなりかねません。

そもそも診断とはなんのためにするのだろう?

 では、そこで皆さんに問いかけたいのが、「そもそも診断名をつけることの目的は何でしょうか?」ということです。たった10秒でも構いません。ここで一度、頭の中で考えてみてください。「治療方針を決めるため」「患者を安心させるため」「研究のため」「今後の方針や予想される転機を患者・家族に説明するため」などが挙げられるでしょうか。

ERや初療の場で診断名がつくことはそれほど多くない

 でも、実際の現場で確定診断がつくことはそれほど多くないのも事実です。「診断がつかないまま、なんとなく治った(「風邪」なんか、実はそうですよね?)」。「原因不明のよく分からない症状だが、致死的な病気ではないことまで検査で分かった。とりあえず様子を見ていたら自然に症状が良くなった。あれはいったい何だったのだろう?」というケースもありますね。

 診断名がつくにしても、ERや初診の場でつくことはそう多くないですよね?「入院して1週間、精査を受けたら診断名が分かって、そこから治療開始になった。状態が安定したので退院して今も通院で治療を受けている。」というケースもあるでしょう。場合によっては、「『確証はないが、腎盂腎炎の可能性が高いし、抗菌薬治療を開始して様子を見てみよう』と入院治療を開始したら、後日、血液培養が陽性になり、典型的な尿路感染の起炎菌が検出された。しかし抗菌薬に反応して患者の状態は徐々に良くなった。やっぱり腎盂腎炎だったんだろう。」なんていうケースもあるでしょう。

ER・初診においてはマネジメントが決まることがゴール

 ER・初診の場においては診断名がつかないことも多く、診断名にこだわりすぎては話が前に進まない、ということを経験すると説明しました。
 診断がつかないことに焦るのではなく、ER・初療の場は、マネジメントが決まればOKと割り切りましょう。つまり「仕分け」です。究極的には、以下のどれに該当するかを判断できれば、ER・初診の場の目的は達成だと思っています。

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 たとえば、ERでの初期対応が必要なショックや重症などは、「自分(たち)で解決する」かつ「大急ぎで処置・治療」が必要なケースですね。逆にマネジメントには迷わないことも多いかもしれません。こういうケースにこそやりがいを感じておられる救急のドクターも多いと思います。

 また、緊急手術や緊急カテが必要なケースは、「専門医に任せる」かつ「大急ぎで処置・治療」になるかもしれません。専門医に的確にプレゼンして、「依頼」することになります。もちろん、丸投げではなく、橋渡しとしてスムーズに「こと」が進むように何かできることはないか考えて行動すると、患者さんの満足度は高いと思います。

 その次に、たとえ診断名がついたとして帰宅+様子観察で良いものなのか、入院で様子観察が良いのか判断しないといけないこともあります。
 さらには、診断名がつかない場合も、心配だから念のため入院で様子観察させてほしいケースなのか、診断名はつかないが、危ない病気ではないから一旦帰宅して様子観察でも良いのか、といった判断も必要です。
 つまり、このマネジメントには診断名がついているかついていないかの「影響」はそれほど多くないのです(診断がついているかどうかはどうでもいい、とまではさすがに言いませんが)。
 帰宅させる場合は、誰にフォローを依頼するかも決めないといけません。研修医は自分で外来を持っていないこともあるでしょう。一番症状が関係していそうな科にコンサル文を書いて、受診後のフォローアップを依頼しましょう。

 最後に、研修医にお願いです。「帰宅+終診」については、よほど自信があるときだけにしておきましょう。少なくとも、上級医が「それで良い」と言ってくれた場合だけにしておきましょう。

最後に

 患者も、医療従事者も、どうしても診断「名」にこだわってしまう傾向があります。これはおそらく経験の少ない医療従事者ほどその傾向があるのではないでしょうか。人間、得体の知れないものへの恐怖感は強いものです。

 臨床経験がモノをいうところだとは思いますが、この記事が、その「恐怖感」を少しでも和らげ、現場でテンパっている研修医の心の支えになれば嬉しいです。そして、適切なマネジメントさえできれば良いと割り切って、ER研修を有意義な学びの場にしてもらえたら嬉しいなと思います。

 なにか質問があればドシドシメッセージを頂けると嬉しいです。それでは今日も1日頑張っていきましょう!

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