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&THINGS MAGAZINE” #06 : 多角的に諸行無常 Mikrokosmos

(3月16日水曜日、WINES&THINGSのメールマガジン “&THINGS MAGAZINE” #06の転載です)

こうやって定期的にレターを書くことが習慣になると、いよいよ日頃のインプットが重要になってきます。気付くと買って読んでない本が山積み…時間が足りない!と言っておきながらしっかり観てるよ韓国ドラマ…あぁ自分が嫌になる〜。そんな時は、寺へ行こう。

ということで先週末は、マイ・ホームテンプル(単にランニングコースの一つというだけだけど)目黒不動尊で行われた自由大学主催【身体と霊性 Ⅳ 第2回:「動く身体、坐る身体――能と座禅」安田登×藤田一照】という講座へ行ってまいりました。私は藤田一照さんの(言うのもおこがましいけれど)ファンでして、コロナ以前も各所で行われるトークやワークショップには(まぁまぁ)足繁く出向き、著書も数冊読ませていただいておりますが、まぁもうほんと超絶かっこいいお坊さんでいらっしゃる。お坊さんには頭脳明晰で博学・知的な方が多いのですが、一照さんはその中でもストイックさが尋常じゃない。私の稚拙な言葉では表せないほどの人間力をお持ちでいらっしゃる上に、柔らかな物腰と鋭い洞察力で隙が全くないんですよね、恐れ多い。一照さんの話で終わってしまいそうなので話を元に戻しますと、この日は安田登先生と言う能楽師の方の講義と演舞〜一照さんの講義〜お二人+住職の瀧口さんの対談〜質疑応答という豪華な流れでした。安田先生の能が扱う「心(シン)」のお話と夏目漱石「夢十夜」の演舞、そして一照さんは『坐る身体を「割る」?』と題されたお話を簡単な実践と共に。3時間半が一瞬に感じられる程、中身がギュッと詰まった時間だったのですが、その日一番の気付きが質疑応答で私が投げた質問に対する安田先生のお答えで、久しぶりに目から鱗という体験をしました。

私の質問は、今世界で起きている争い事を、国の代表者、すなわち決定権を「持たされている者」が集まるところで多数決で白黒決めて、どちらが善でどちらが悪かというようなことを民主主義的であるというのは少し違うような気がする、争いの一番の被害が、決定権を「持たざる者」、ロシアの攻撃を受け傷ついているウクライナ国民や西側諸国の経済制裁によって日々の生活が立ちいかなくなっているロシア国民、すなわち「民」が最も置いてけぼりになっているような状況に対して、仏教や禅、そして能といったような別次元から俯瞰で見た時の、この次第のいく先をどう考えているのか、お聞かせくださいというものでした(長い)。

お恥ずかしながら私、安田先生をこの日初めて知ることとなったのですが、この方がまた本当に、信じられないくらい博学・知的・頭脳明晰な方で、彼の答えはざっくりと、1980年代以降新しいマーケティング理論というものは生まれておらずそこまでの常識である「民主主義」や「資本主義」という括りがもう立ちいかなくなっている現状は、「文字」の限界なのだと。今までの私たちは3D(現実)で行われていることを2D(文字)に落とし込み、共有しているのだけれど、事象がますます多角的になってきている今、従来のコミュニケーションが破綻してきているんだと。

白黒ってもう答えじゃないじゃん!!
多数決って一番やっちゃダメなやつじゃん!!!

素直な私はもうフワ〜っとしてしまいました。もちろん、そのふんわりした先にまだ何も答えはないのですが、暗闇に一筋の光が…
一照さんは「問題提起をしてそれを解決し続ける」というのももう違うんだ、と仰ってくださいまして、自分が囚われていた「答えを見つける」「問題を解決する」というものがそもそも全てを「未」と「完」に是が非でも分けてやろう!という旧世代の悪癖だったということに気付けたのです。その二つの行為が間違っているというわけではなく、結果ではなくそれをいかに自分ごととして行為に落とし込めているか、自らのインプットがなんなのかというところからの視点が大事なのであるという…うまく説明できているかな。
「私ひとりが声をあげたって何も変わらない」というのは「私ひとりで変えることができる」という可能性の上でしか成立しませんよね?だから何も変わらなくても私自身が何らかの行為に落とし込んでいる、それが個としてひとりひとりが向き合っている、というマスが状況を包括していくような図式。大小あるけれど全てはミクロコスモスなのではないか…と。仏教の教えとBTSの曲ですっかり合点がいったような気分を味わえたのでした。何も解決してないけど。

長々と出口のあるようなないような話をしてしまいましたが、メールマガジンですのでご容赦くださいませ。
今週の小ネタは、まだまだ堀りたい超個人的「イケてる僧侶」をご紹介!


ひとり目!藤田一照さん

灘高〜東大・東大大学院まで進学したのに中退で出家、仏の道に進んだかと思いきや渡米、マサチューセッツで禅を教えたりサンフランシスコで曹洞宗国際センター所長をやったり…ご自身もおっしゃられていましたがすんごい多動的。別次元のお方のように感じます。
今は葉山で禅のお教室をしたり、Starbucks、Facebook、Salesforceなど、アメリカの大手企業でも坐禅を指導しています。

ふたり目!松本紹圭さん。

2010年に国際親善奨学生としてインド商科大学院でMBA取得、2012年に住職向けのお寺経営塾「未来の住職塾」を開講、塾長を勤めているという、ハイブリッドなお坊さん。「Temple Morning Radio」というラジオ番組を平日毎朝配信!ゲストも超豪華ですが、紹圭さんの語り口がまた最高に良き。

3人目!横田南嶺さん。

鎌倉円覚寺の管長を務められていらっしゃる南嶺さんも高学歴(筑波大学出身)で多くの著書を発表され人気・支持共に高いお坊さんでいらっしゃいます。
Youtube発信にも精力的。


4人目!南直哉さん。

福井県霊泉寺の住職で青森県恐山菩提寺の院代も務めるお坊さん。この方も本当に多才でいらっしゃって2017年には著書『超越と実存』で第17回小林秀雄賞を受賞されていらっしゃいます。もちろん高学歴な上に超宗派の若手僧侶の修行道場「獅子吼林サンガ」主幹を経ての住職就任、ほんと多動!この方も25歳の若さにして「諸行無常」という仏教の概念にバチコーンと共感して出家しておられます。今だからこそ響く言葉。


もう開花も目の前!是非お花見準備にご活用ください〜!!
今週はたくさん新入荷もありました!!

Gerard Schueller et Fils "Riesling-Bildstoeckle" / ジェラール・シュレール・エ・フィス "リースリング・ビルステゥックレ" 2017
ジェラールのソールドアウトしていたリースリング・ビルステゥックレの2017ヴィンテージ!ビルステゥックレ(区画名)のテロワールはスタンダード・キュヴェと比べ、より骨格と複雑味がまし、スケールの大きい味わいを与えます。

Marc Pesnot "Cœur de Raisin" / マルク・ペノ "クール・ド・レザン" 2021
フランス ロワールで誰にも負けない情熱を持ち採算度外視で葡萄の栽培とワインの醸造に取り組み続けているマルクペノの「ぶどうのこころ=クール・ド・レザン」と名付けられたフレッシュなセミヨンとミュスカデの2021ヴィンテージ

Brendan Tracey "Wah Wah Watusi" / ブレンダン・トラセイ "ワウ・ワウ・ワツシ" 2021
韓国でも大人気、ブレンダントラセイのワウワウのペティアン 2021ヴィンテージが入荷です!ここ数年アジアでの需要が高まりすぎ日本への入荷が限られてきてしまっているブレンダンのワイン、毎回驚くほど出来が良いので今年も楽しみです。


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