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ワイナリーの女性当主にインタビュー

イタリアはトスカーナ州、キャンティクラシコ地方にあるワイナリー、「セトリオーロ」。真摯にワイン造りをおこなっている女性当主、スザンナ・ソーデリさんにインタビューしました。

女性オーナーのワイナリー

イタリア、トスカーナ州のほぼ中央に位置するキャンティクラシコ地方は、面積約7万ヘクタールで(東京23区は約6万ヘクタールなので、それよりも広い)、そのうちの約1万ヘクタールがブドウ畑になっています。
ワインの生産者数は、約580。ワイナリーがひしめき合っているワイン激戦区で、自然を愛し、ひたむきにワインを造っている「セトリオーロ」のスザンナさん。
今回は、そんなスザンナ・ソーデリさんにお話をうかがいました。

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セトリオーロは、キャンティクラシコ地方の真ん中あたりにあるカステッリーナ・イン・キャンティ村にたたずんでいる小さな農園です。
緑のトンネルを抜け、砂利道を通ると、石造りの小さな建物が見えてきます。木々に囲まれ、まるで森の中のオアシスのよう。

スザンナさんは、温かく迎えてくれ、家のテラスに案内してくれました。建物の1階が蔵になっていて、2階が自宅になっています。
テラスから見えるのは、絶景以外のなにものでもないすばらしい景色。

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とってもおだやかな雰囲気のスザンナさん。さっそくインタビューをしました。

ワインネーション:ワイン造りを始めたきっかけを教えてください。

スザンナさん:私のひいおじいさんが、カステッリーナ・イン・キャンティ村でワインを造っていたんです。私はフィレンツェで生まれだけど、ベネズエラで育ちました。父がベネズエラで仕事をしていたので。
でも、父には、ずっとカステッリーナ・イン・キャンティ村でワイン造りをしたいという夢があり、ここを購入しました。
私は心理学者としての道を歩んでいたけれど、父がイタリアに戻ることにしたことがきっかけで私もワイン造りをすることになりました。

ワインネーション:心理学からワイン造りですか!(心理学者だからおだやかな雰囲気なのだと妙に納得。)

スザンナさん:もうここにきて30年になります。ワインは私の人生なんです。

お父さんが早くに他界し、お母さんと一緒に女性2人でワイン造りをすることになったというスザンナさん。毎日畑に出て、作業をしたり、畑の様子を見たり、蔵で作業をしたり、重労働だということです。
お母さんは高齢になり、今は一人でワイナリーを切り盛りしています。(作業員もいます)
スザンナさんは、やさしい雰囲気ですが、長身で、体格もよく、体力がありそうです。そして、農作業をしていることがわかる手。
ワイン造りは男性が大半を占めるなか、自ら作業をし、オーナーとしてワイナリーを切り盛りしていくことは、相当大変なことでしょう。

スザンナさん:収穫はすべて手摘みだけど、斜面がきついから大変です。私は、下から上に斜面をのぼりながら収穫もするけど、それができない人もいます。かごにブドウがたまってくると、重くなるから(笑)。そんなときは、上から下に向かって収穫します。

ワインネーション:ワイン造りでこだわっていることはなんですか?

スザンナさん:できるだけ自然のままにすることです。ブドウ畑の真ん中に大きなオリーブの木があるでしょう。1985年に寒波があって、トスカーナのオリーブの木はほとんどがやられてしまいました。でも、あの大きなオリーブの木は生き残って、今ではあんなに大きくなりました。ブドウ畑の真ん中にあるけど、あのオリーブの木は抜かないことにしています。
あのオリーブの木がセトリオーロのフィロソフィーのシンボル。ロゴはそのオリーブの木をモチーフにしているんですよ。

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ワインネーション:自然のままといえば、オーガニック農法をおこなっていますよね?

スザンナさん:えぇ、あまり手を加えるのは好きじゃないんです。
アリカンテ種がいままで全然実をつけてくれなくて使いものにならなかったのだけれど、突然わーっと実をつけてくれました。だから、このキャンティクラシコにアリカンテ種をブレンドしてみたんです。試飲しましょう。

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自然の摂理のまま育ったブドウで、ナチュラルに造られるワイン。キャンティクラシコ2018年(現行ヴィンテージ)を試飲しました。

色は、輝いたルビー色。いきいきしたスミレ、ブルーベリーやラズベリーのような赤い果実の香りが広がり、スパイスのニュアンスも感じられます。
口当たりは、とってもなめらか。スザンナさんのやさしさが伝わってくるしなやかな味わいです。


3.5ヘクタールの畑は、石灰質と泥灰土が混じり、砂質、粘土質もある土壌。きつい斜面は、作業するには大変ですが、日当たりと風通しがよく、ブドウの栽培には最適です。
小規模とはいえ、ワインは、農家のワインという感じではなく、洗練された味わいです。
評価も高く、キャンティクラシコ・リゼルヴァ2015年は『ワイン・アドヴォケイト』で93点、キャンティクラシコ2016年は『ワイン・エンスージアスト』で88点、キャンティクラシコ2017年は『ワインズ・クリティック』で92点を獲得しています。また、イタリアのワインガイド『スローワイン』では、2017年から毎年掲載されています。『スローワイン』には、単にオーガニック、サステイナブルであるだけでなく、高品質で、テロワールを反映したワインが紹介されています。


ワインネーション:今日は、どうもありがとうございました。

スザンナさん:こちらこそ。普段、長く座っていることがないので、今日は休むことができました。

おそれいりました!

セトリオーロのワインは、日本未入荷となっているため、ここで同じく女性が活躍するワイナリーのワインをご紹介します。
女性ならではの造りが生きるワイン、ぜひ楽しんでみてください。

女性が活躍するワイナリー

レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォン

フランス、ブルゴーニュ地方のレ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォンで、醸造責任者を務めるのは、カロリーヌ・ゴン女史。
レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォンは、「ムルソーの巨匠」と呼ばれるドメーヌ・デ・コント・ラフォンが手掛けるドメーヌです。「エリティエール」とは、「後継者」という意味で、世界最高峰の白ワインと称えられるコント・ラフォンのスピリットを受け継いでいます。また、ビオディナミ農法をおこなっています。
そんな偉大な生産者の当主ドミニク・ラフォン氏から絶大な信頼を寄せられているのが、カロリーヌ・ゴン女史です。

レ・ゼリティエール・デュ・コント・ラフォン/ マコン・ウチジィ・レ・マランシュ


単一畑レ・マランシュから生み出される白。黄桃やマスカットの華やかな香りが溢れんばかりに広がります。果実味たっぷりの味わいは、ナッツの風味があり、アロマいっぱいのシャルドネです。


ジャン・グリヴォ

フランス、ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネの名門のドメーヌであるジャン・グリヴォ。マティルド・グリヴォ女史は、父エティエンヌ・グリヴォ氏の意思を引き継ぎ、弟ユベール氏とともに2017年からドメーヌの指揮を執っています。

ジャン・グリヴォ/ ヴォーヌ・ロマネ プルミエ・クリュ レ・ルージュ

特級畑エシェゾーに隣接する畑から生まれるこだわりのキュヴェ。ラズベリーやダークチェリーなどの果実の香りにオレンジピールのニュアンスが重なり合います。タンニンはなめらかでエレガント。華やかで美しいピノ・ノワールです。

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