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【速報】今年のブドウの収穫の出来は??

現在、イタリアではブドウの収穫、真っ只中です!今年のブドウの出来はどうなのでしょうか?

2021年のイタリアのブドウの収穫

ワインイタリア連合(Unione Italiana Vini)によると、2021年のブドウの収穫量は、昨年に比べて減少すると発表されました。その原因は、気候によるものです。
前年比は、約9%減。ワイン生産量としては、約4450万ヘクトリットルという予測となっています。(2020年は4900万ヘクトリットル。)
フランスは、25%から最大50%まで減少するとまでいわれていますから、それに比べるとイタリアでは減少の割合は少なくてすみそうです。
今年、イタリアは、4月の初めに寒波に襲われ、氷点下の日が続きました。マイナス4度になった日もあり、ブドウは被害を受けましたが、その後、なんとか実をつけるまでに至ったのです。
また、6月、7月には、ヒョウが降り、特に北東イタリアでは大きな被害が出ました。
その後は、降雨量が少なく、かと思えば、中部・南イタリアでは豪雨に見舞われたりの年でした。そのため、ブドウの成熟は、地域によって通常より早くなったり遅くなったりと、「通常」ではない状態でした。

イタリアのワイン生産量ランキング

2021年、ワイン生産量の多い州第1位は、ヴェネト州で約1100万ヘクトリットル。続いて第2位は、プーリア州で約850万ヘクトリットル。第3位はエミリア・ロマーニャ州で670万ヘクトリットル。この上位3つの州でイタリアの約60%のワインを生産している計算になります。

イタリアのワイン生産量のランキングは下記の通り。

イタリアのワイン生産量(単位:千ヘクトリットル)

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(2020年はAGEA統計、2021年はISMEA、UIVデータ)

気候変動の問題

気候変動による影響を大きく受けた今年の収穫。「気候変動は、パンデミックより重症だ」とエノロジー協会の会長リッカルド・コタレッラ氏は言っています。しかし、現在は、土壌や品種の研究に基づいたブドウ栽培がおこなわれていますので、勘に頼ってブドウを植えていた昔ほど気候による影響は受けなくなっています。今年の気候不順にも耐え、よい結果を出したワイナリーも数多くありました。

2021年のワインの品質

2021年のワイン生産量は減少となりますが、品質は「イタリアは全体的によい」といわれています。もちろん、生産者の蔵での仕事による部分も大きいため、一概にはいえませんが、パンデミックで落ち込んだ経済が回復しだしていて、生産者たちもポジティブです。

2021年のワインの価格予想

生産量が減少すると影響を大きく受けるのは、格付け(DOP)ワインです。そうはいっても、昨年は生産過多でテーブルワインは価格破壊の状態になりましたので、生産量の減少イコール売上の減少というわけではありません。パンデミックの影響で、昨年は需要が低下しました。2020年の収穫年度をトータルで見ると、価格は全体では3%減少していて、DOPは4%の減少、その他のワインは2%の減少となっています(ISMEA統計)。今年の3月ごろから価格は徐々に上昇傾向にあり、回復してきました。2021年に生産量が少なくなることを受け、ワインの価格はさらに上昇しつつあります。「2017年のように、生産量の減少がいい方向に向かうよう願っている」とコタレッラ氏は語っています。

サステイナブルなワイン造りを目指して

気候変動を目の当たりにして叫ばれていることは、サステイナビリティです。経済発展省は、サステイナビリティを統一化する法律の制定を急いでいます。ワインイタリア連合の会長エルネスト・アッボーナ氏は、「我々は、危機のゾーンに達している。法制定にあたってのロードマップを一刻も早く定義するよう経済発展省に要求する」と言っています。
「時間のかかるテーマであるが、これ以上の誤りは許されない。高い知識と能力が必要だ」と国際ブドウ・ワイン機構(International Organisation of Vine and Wine)の次期会長ルイジ・モイオ氏も言っています。

ワインツーリズムの重要性

サステイナビリティと並んで重要視されているのは、ワインツーリズムです。ワインは、自然、土地、歴史、文化と強く結びついていますから、「他のアルコール飲料と異なる」とルイジ・モイオ氏は言っています。
ワインは、飲むだけの「商品」ではありません。ワインという液体の背景には、その土地で培われてきたワイン造り、その土地の山や川、海や風、太陽や霧などのさまざまな気候の環境、その土地ならではのブドウ品種、その土地の食文化におけるワイン、まさにドラマがあるのです。その自然、土地、歴史、文化を背負って、生産者たちはたゆまぬ努力を続け、1本のワインが仕上がる、それを体感できるのが、ワインツーリズムです。
現在は、まだ気軽にワイナリーを訪問できる状況ではありませんが、ワインを商品として受動的に消費するだけではなく、生産者、ワイン造りにも目を向けることで、ワインツーリズムへの関心を高め得るのではないでしょうか。生産者もSNSを通じ、ワイナリーの様子、蔵の様子、収穫の進行などを文字、写真、動画で発信しています。ライブでのリアルタイムでの視聴やコメントをすることで、インタラクティブに生産者とつながることができるツールを活用しない手はありません。生産者との距離も近くなり、生産者の思いを感じながらワインを味わうことができます。そうすると、ワインは単なる「飲み物」ではないことが体感できるでしょう。そして、自由に旅行ができるようになったら、ワイナリーを訪ねて、ぜひワインを包括的に楽しんでみてください。

ブドウの収穫

ブドウの収穫の時期にワイナリーへ行くと、「ワインは単に飲むだけの商品ではない」ということを体感することができます。
広大な畑では機械で収穫をしますが、急な傾斜のある畑や段々畑は機械で収穫することができず、手摘みがおこなわれます。また、品質が重視される格付けワイン用のブドウも、機械ではなく、人の目で見て、よいもののみが選ばれ収穫されます。
ハーベストマシーンで収穫しているところを見るのも興味深いのですが、ひとつひとつブドウを収穫している人たちの姿を見ると、本当に頭が下がります。秋とはいえ日中はまだ日差しが強く、日陰のない畑では、見ているだけでも暑くなります。また、中腰で収穫をしなければならない垣根仕立ての畑では、さらに重労働です。小さなかごがいっぱいになると、運搬用の大きなかごまで運ぶのもまた大変。

手摘みで収穫する作業員たち↓

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収穫されたブドウを入れるカゴのおいてある畑(収穫の休憩中)↓

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収穫されたブドウ↓

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まとめ

収穫されたブドウは、すぐに除梗され、発酵用のタンクに入ります。人の手で摘まれたブドウが発酵、熟成を経て私たちの食卓に上がるまでを考えると、人の仕事と自然の摂理と時間を感じ、まさにロマンです。2021年ヴィンテージを飲むことができるのは、一番早くて新酒解禁の10月30日、ライトな白ワインなら来年早々、そして長期熟成される赤ワインは数年後。激しかった気象を想起し、にもかかわらず豊かに実った様子やワイナリーの人びとの努力に思いをはせながら、2021年のワインを味わいたいものです。

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