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そのワインの価格は適正か?


この記事はワインビギナーの方向けに作成しました。
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まとめ

・ワインの価格=コスト+利益(+プレミアム)
・コスト=栽培、醸造、販売流通
・利益=生産者、販売者が必要とする利鞘
・プレミアム=高級ワインに付加される希少価値が金額化されたもの
・ワインの適正価格とはひとそれぞれによって異なる
・幣ブログは1本¥2,000前後でお買い得のワインを探すことお勧め


こんばんは、じんわりです。

 先日知人から、「ワインの適正価格というものがわからない。酒販店の店員さんにワインを勧められてもそれがお得な買い物なのか判断できない。」という相談を頂きました。

 その方曰く「なぜぶどうジュースを発酵させたものの値段が500円から数千万円までばらつくのか」つまり、「ワインの価格決定に影響する要因は何なのか」という疑問があるとおっしゃっていました。
 同じような疑問をお持ちの方に読んで頂ければ嬉しい限りです。


 正確を期すなら生産者および販売者のコストと利益を項目ごと・流通段階ごとにいちいち分類することになるでしょうが、ここは全体像を把握しやすくするために大括りで価格決定因子を分類してみましょう。ワインの価格構成要因は以下の式に簡略化できるのではないでしょうか。

ワインの価格=コスト+利益(+プレミアム)

以下それぞれの内訳です。

1. コスト
・ぶどう栽培にかかるコスト
・ワイン醸造にかかるコスト
・流通販売にかかるコスト

 ぶどう栽培にどれだけ設備、人員、時間、手間をかけるかでコストが変わってくるきます。ぶどう樹の手入れは時間との勝負でもあります。限られた時間で良質のぶどうに仕上げていくには、例えば投入する作業者の人数を増やすなど、相応の人的コスト投入が必要です。
 醸造のシーンにおいても単位当たりどれだけの人員とコストをかけるかで瓶1本あたりのコストは変わってきます。例えば発酵完了後にタンク貯酒するのか、樽熟成するのかによってコストは大幅に変わるりますし、熟成期間を長くとればとるほどお金の回収は遅れるため、販売価格に転嫁されることになりますね。

高級レンジのワインは概して限られた面積の優良畑に通常以上の管理の手間暇をかけ、醸造においても比較的贅沢な製造方法が採用されるため、必然瓶1本の値段は高くなりがちです。お手頃なワインにこそかなりの設備装置的な投資(=コスト)がなされていることが一般的ですが、その分大量生産できるので売価を抑えることが出来るのでしょう。

 流通においても生産者のみならず、生産地のワイン商社、国内輸入商社、国内流通商社、小売店と多層化する可能性を孕み、彼らが担う役割に対する対価=流通コストがワイン価格の構成要素として組み込まれていくことになるでしょう。

2. 利益
・生産者、販売者が最低限必要とする利益

 上述の流通コストと同様、ぶどう栽培からワインが消費者に届くまでに多段階で生産者も含めた各業者が関与するのが一般的でしょう。彼らは商売として関与しているため相応の利益確保が必要です。それらもワインの価格形成に影響しているはずです。

3. プレミアム
・希少性、需給のバランス

 冒頭の知人の疑問に対しての本質的な回答は『知名度と希少価値が高いほどワインの値段は上がる傾向にある』となるでしょうか。供給量が限られた著名な産地、醸造所、醸造家のワインに対して世界中の需要が殺到する状況ですね。ボルドー、ブルゴーニュー、シャンパーニュ、カリフォルニアのカルトワインと称されるカテゴリなどが極端な例でしょうか。著名産地、著名醸造所の高級ワインの価格はここ数年軒並み上がっているような報道や記事を数多目にします。長年銘醸ワインと付き合ってこられた諸先輩方は、今よりもリーズナブルに銘醸ワインが入手できた昔を懐かしんでらっしゃるのではないでしょうか。

 「プレミアム」という言葉はよく聞きますが、イマイチ日本語での意味が判然としません。辞書を引くと「正規の料金に上乗せされる金額」「他のものより価値があること」とありました。まさに入手困難なワインを用立てることを「価値がある」として「本来あるべき価格への上乗せ料金」を求められる、と考えると昨今の有名希少ワインのインフレ傾向に当て嵌まりますね。

 ここまでのお話を受けて、『需要が供給をはるかに上回る近年の傾向が、高級ワインの価格をどんどん吊り上げている。一般庶民は著名な高級ワインを今まで以上に楽しめなくなりそうだ。』と考えることが素直かつ一般的ですが、ここで目先を変えて「今、特定の産地や著名な醸造所の高級ワインに過剰な注目とお金が集まっている。そのおかげで特定の産地や著名な醸造所以外で造られているワインの価格はリーズナブルなままになっているかもしれない、もしくは暴騰していないかもしれない」という仮説があってもいいように思います。

 以下経験則を交えた私見であり非常に曖昧な概念ではありますが、産地によるプレミアムの差が製品価格差に表れているかもしれないと感じられる事例をふたつほどご紹介します。

シャンパーニュとカヴァの間にはボトル1本あたり¥2,000~3,000の産地プレミアム差があるかもしれません。シャンパーニュとカヴァの製法は同等、両原産地総体としてのぶどう栽培面積=商業規模も大きく変わらないようですので、両地域の平均的な製造コストに大きな差はないのではないかと推測します。その前提でお話を進めると、大手メゾンの比較的安価な(とはいえ約¥5,000/750ml)シャンパーニュと大手カヴァ生産者の比較的安価なカヴァ(約¥1,500/750ml)を比べると、私にとっては中身の満足度に大きな差異がない=カヴァの中身品質はシャンパーニュに劣らないと感じられます。関税や流通上の商習慣等、その他ワイン売価に影響を与えうる要素の考慮をすっとばして産地プレミアムの差ではないかと乱暴に推測していますが、ブログゆえの緩い雑感としてご容赦頂けると幸いです。この話題に明るいワイン業界の中の人がいらっしゃったら是非詳細ご教示頂きたく。

 ふたつめの事例はブルゴーニュのワインです。¥3,000/750ml前後のブルゴーニュを飲んでみると、他産地の¥1,500~2,000/750mlのワインと中身の満足度に差がないワインに出会うことが少なくないように感じます。もちろん相応においしいワインなのですが、相対的な実感として私は産地プレミアムの気配を感じてしまう、ということですね。過去に偶然の出会いと原産地ブランドに幻惑されて無名生産者のブルゴーニュ特級畑ワインを買ってしまったことがあります。当時3万円ほどだったでしょうか、今振り返ると全くのご乱心でした。

 飲んでみるとまさに普段私が注意喚起する「がっかりワイン」そのものでした。偉そうに御託を並べた張本人が「がっかりワイン」をジャンピングキャッチするというクソダサい展開でしたが(笑)、産地プレミアムという概念を強烈に実体験できた良い機会でもありました。

 上述の2例でシャンパーニュとブルゴーニュに意地悪な書き方をしてしまいましたが、私自身はブルゴーニュの中身だけでなく「ブランドイメージ」が好きですし、祝宴やお呼ばれ事の手土産にはカヴァよりシャンパーニュを選びがちです。中身のみならず「ブランド」としてのシャンパーニュの力は絶大ですから。これらの産地に対して憧れはあっても悪意はありません。
 お祝い事など特別な日にはブルゴーニュやシャンパーニュなど有名/人気産地のワインを、普段ワインを飲みたいときにはブランドに拘らず「What’s in a name?」の精神でコスパワインを探してみる、という使い分けも良いかもしれません。

 ひとそれぞれの経済状況やワインへの思い入れの強弱、ワイン経験の多寡で「適正価格」は変わってくるのでしょう。もしかすると最近の平均的な日本人がワインに対して感じる適正価格帯は¥500~1,500/ボトルあたりなのかもしれません。
 私見ですが、平均的な日本人にとってのワインの適正価格帯は今後徐々に切り上がって行くのではないかとみています。まだまだ日本人にはワインが浸透していない=ワイン消費に伸びしろがある、と感じさせる統計データ、大手ワイン企業の見立て、実生活で見聞きしたワインに纏わる出来事の数々がその理由です。

 幣ブログがワインビギナーの方にお勧めしているのは1本税抜き¥2,000前後のワインです。平均的な値頃感より数百円高いかもしれませんが、1本¥2,000前後の価格帯の多くは、超有名産地のワインよりもリーズナブルに良質な中身を楽しめる良さがあるのではないでしょうか。


さんて!

じんわり

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