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ワイン消費者の意識:2020年のトレンド

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まとめ
・世界のワイン消費者意識調査
・ヒトはワインの知識を脱ぎ捨て始めている?
・アラサー世代が高級ワインを消費か
・知名度の低い品種のワインに注目か

こんばんは、じんわりです。

 先日ワイン関連商業誌の記事を読みました。タイトルは「What do you know about wine?” Not much: ‘We’re outsourcing memory storage to our phones’」

「ワインについて知っていることは? そんなに多くないよ、スマホが覚えてくれるから。」
といった趣旨のタイトルでしょうか。

 この記事はワインマーケティング専門のコンサルティングファームWine Intelligence 社(以下WI社)が実施したワイントレンドに関する消費者の意識行動調査に基づいて書かれています。調査方法の詳細は記事に書かれていませんが、WI社の公式サイトを見る限りインターネットを使ったアンケート調査の可能性が高く、回答消費者数=標本数もそれなりにありそうな感じです。
 WI社の概要ですが、2002年起業と業歴は浅いものの、ワイン消費の聖地ロンドン所在でワイン消費者の行動心理把握に特化した調査・コンサル業務を営み、世界中の35市場でビジネス展開し全世界のワイン消費の80%をカバーしている、という企業だそうです。


 記事の趣旨としては、ここ5年間でスマホがワイン消費者の行動を変容させている。消費者側のワインへの関心は増しているにもかかわらず、産地、品種、生産者などの詳細情報を記憶に留めることを消費者がしなくなっきている。スマホが消費者のワイン記憶装置の役割を担い始めている、というものでした。消費者は「知識を得るために」よりはむしろ「入手した知識の記憶装置として」スマホを活用しているのだそうです。ワイン以外にも記憶すべきことがたくさんある日常生活の中で、脳の記憶スペースを節約したいということでしょうか。
 このことから消費者は今まで以上に直観的にワインを見つけ購入するため、検索しやすく少ないアクションで購買にまで持っていける工夫がワイナリーや流通側に求められているようです。

 今はエチケット(ラベル)の写真を撮るとそのワインの情報が自動的に表示されるスマホアプリが最先端でしょうか。現状は記憶機能を代替するのみかもしれませんが、今後AIに代表される第四次産業革命が起こってくるとスマホそのものがソムリエ兼シェフ、という世界が訪れるかもしれませんね。飲みたいワインの気分と予算をスマホに話しかけると、お勧めのワインがいくつか提示されたりそれらワインに合わせる料理のレシピが提示されたり、といった未来でしょうか。
 もしそんな世界が実現されれば一般消費者の方にとってはワインとの付き合い方がより簡単になるでしょうが、ワインとの「偶然の出会い」が減ることや「発見の驚き」が希薄化されてしまうかもしれず、少し寂しい気がしなくもありません。


 今回の引用記事が取り上げた元々の調査は2020年のワイントレンドを占う目的で実施されており、ワイン消費のプレミアム化、ロゼの流行継続、エシカル要求の高まりなど、リアリティのあるトレンド予測がなされています。これらも興味深い話ですが、引用記事内で私の目を引いた調査結果が2つありました。

 ひとつめは「予想に反して、高級ワイン消費者は非高級ワイン消費者よりもワイン知識が高い訳ではなかった」という点です。

高級ワインを消費しているのは外食や人付き合いの機会が多いアラサー世代であること、ワインの知識については経験年数=年齢がモノを言うので、このような結果に繋がっているのだろうとのことです。
 アラフォー以上の世代はより豊富なワイン知識を元にワインを選んでいるし見栄を張ろうとしないという旨の考察もされていました。
 この調査結果と考察が日本にも当てはまるのかは正直わかりませんが、消費者さんが経験を積めばコストの面でも賢くワインが選べるようになる、という希望が持てる結果と捉えたいですね。


 ふたつめは「消費者がワイン選びに対して冒険的になっている」という点です。

 調査結果とWI社CEOのコメントによると、「赤ワインに関してカベルネやメルローなどではないより知名度の低い品種の消費が増えている」そうで、その背景には先述のスマホによる記憶機能の貢献もあるのでしょうが、「『探究と発見』がワインに限らず飲料全般にみられる世界的なトレンドなのだろう」とまとめられていました。

 個人的にこの傾向は非常にいいものだなあと感じています。幣ブログでもお伝えしている「選ぶ楽しみ」や「発見する楽しみ」の機会が消費者さんにもたらされているのですね。インターネットや輸送手段の発達により今やワイン市場は強制グローバリゼーションの世界と言っても過言ではないように思います。グローバリゼーションの市場では特定の有名品種が商業的に幅を利かせて行くのでしょうが、知名度の低い品種や土着品種もまたインターネットやスマホを媒介として世界に広まることとなり、消費者さんに注目される機会を得るのでしょう。結果としてある程度のローカライゼーションや多様性は維持されるように思います。そういう面ではインターネットやスマホがもたらすグローバリゼーションも悪くないものですね。

 また、知名度の低い品種に視線が向けられているということは消費者さんが今まで以上にワインに歩み寄っていることの証左かもしれません。それも嬉しいことですね。

 その多様性に飲み込まれなければ一生飽きずに新しい発見を楽しみ続けられる、それがワインの良いところではないでしょうか。

引用:
https://www.beveragedaily.com/Article/2020/02/04/Wine-and-smartphones-The-phenomenon-of-cognitive-offloading?utm_source=RSS_Feed&utm_medium=RSS&utm_campaign=RSS

さんて!

じんわり

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