鮨とwineのマリアージュ勉強会
“鮨とwineのマリアージュを考える”
ワインにとって「マリアージュ」とは、とても重要な要素です。ワインを飲む時に感じる味わいや風味からくる官能的な感覚は、食事に与える影響がとても大きく想像以上に良くなることも悪くなることもあるので、まずはワインと料理が邪魔をしあわない組み合わせを意識してワイン選びをしていく必要があります。
と、ここまでは良くある流れなのですが、今回は日本が誇る「鮨」とのマリアージュを真剣に斬新に考えていこうということで、蒲兎鮨のあっちゃんの協力のもと11名のテイスター達と『wine bar LOOPY』で“ツマミ2品と20種の鮨とwineのマリアージュ”を考える、マリアージュ勉強会を開催することができました。
この会は、今後行う予定の「鮨とワインペアリング」をより質の高いものにするための
テスト企画のようなものですが、参加していただいた皆様には真剣に考えていただけたのでとても良い結果が出たと思います。
なるべく潜入感を持たずにテイスティングしてもらえるよう、ワインの味や合いそうな組み合わせなどの事前情報はできるだけ制限をさせてもらいました。そのため、マリアージュを考える上で十分参考になる素直な意見をいただくことができました。
[WINE LIST]
①キュヴェ ヴァンデミエール ブリュット ドワイヤール
NV Cuvee Vendemiaire Brut Doyard
②シングル ヴィンヤード マールボロ ソーヴィニヨン ブラン 2017 オートゥ
Single Vineyard Marlborough Sauvignon Blanc 2017 O:TU
③テット・アン・レール ヴァン・ド・フランス ヴィニョーブル・クリュール
Tête En L’Air Vin de France 2020 Vignoble Klur
④リッジ・シャルドネ 2020 ストームワインズ
Ridge Chardonnay Storm Wines
⑤ブリザール ブリザール 2019 シャトー・レスティニャック
Blizzard Chateau Lestignac
⑥ル ルージュ デ コルヌ トゥーレーヌ 2019 ドメーヌ ド ラ ギャルリエール
Le Rouge des Cornus Touraine Domaine de la Garreliere
⑦ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2015 ラ・マージア
Brunello di Montalcino 2015 La Magia
⑧ロサエ 2019 ジュゼッペ・リナルディ
Rosae 2019 Giuseppe Rinaldi
⑨ランゲ・フレイザ 2019 ジュゼッペ・リナルディ
Langhe Freisa 2019 Giuseppe Rinaldi
[鮨とワインの相性]
・ホヤ(つまみ):①
・ホタルイカ沖漬け(つまみ):①
・スミイカ:②、④、⑤
・カレイ:①、④、⑤
・サクラマス:③
・カスゴ鯛:②、③、④
・赤身:⑧、⑨
・中トロ:⑦、⑨
・トロ:⑦、⑨
・鰹:③、⑦、⑧
・コハダ:⑦
・鯖:③、⑥
・アジ:⑤、⑦
・イワシ:③、⑨
・赤貝:①、②、③、④
・トリガイ:②、⑤
・ハマグリ:④、⑤、⑥
・車海老:①、③、⑥
・シャコ:⑤、⑥、⑦
・雲丹:⑥
・アナゴ:⑥、⑨
・卵
※テイスターの皆様のご意見をもとにしています。番号は上記のワインの番号です。
“ワインから見る鮨とのマリアージュのポイント”
まずはシャンパーニュから
①キュヴェ ヴァンデミエールはシャルドネだけを使ったブランドブランタイプ。(ブレンドタイプやブランドノワールと比べると軽やかでスッキリとした味わいのものが多い。)
シャンパーニュは比較的幅広く合う印象でしたが、中でもホタルイカの沖漬けが相性が良かったという結果が出ました。
シャンパーニュ特有の風味が肝系の味わいと相性が良いといくことがよくわかりました。
次はナチュラルワインタイプ
③テットアンレールはナチュラルワインの中でも果皮の色をしっかりと出したオレンジワインスタイルのアロマティックワイン。
テットアンレールとサクラマスは圧倒的に評価が多く、とてもわかりやすい組み合わせだったと思います。色が近いと合わせやすいのはオレンジワインやロゼワインでも同じことのようです。もう一つのポイントとして、シトラス系の香りを含んでいたのでサーモンにレモン的な効果があったのだと思います。
⑤ブリザールはソーヴィニヨンブランとセミヨンで造られるとても柔らかい自然な味わいを感じられるワイン。
ブリザールもテットアンレールほどではないですが、シトラス系の香りがあり、若干の酸化熟成感とピュアで滑らかな味わいももつ複雑な味わいのワインです。この複雑さがハマグリやトリガイなどの貝類と相性が良く、評価が高かったです。
⑥赤ワインのルージュデコルヌはカベルネフランから造られている、根菜や土のようなニュアンスを持つ香りがとても特徴的なワイン。
ルージュデコルヌと雲丹の相性が圧倒的に良かったようですが、鯖や穴子も良い評価がありました。カベルネフラン特有の土のような香りは雲丹や甲殻類との相性が良く、赤ワインが持つ酸味は鯖やコハダなどが持つ脂とも相性がよく、カベルネフランの個性が控えめなバランスの良いミディアムボディのワインであれば、より多くの種類の魚と合うのではないかと思います。
次は樽熟成した白ワイン
②オートゥのシングルヴィンヤード ソーヴィニヨンブランはニュージーランドのフルーティなソーヴィニヨンブランを樽熟成したもの。
香りは若干の青い香りと樽香がありどちらの要素を取るか迷うところですが、酸味もしっかりとあり余韻にシトラスを残すので、イカとの相性も良かったと思います。他にはカスゴ鯛、鯖なども良かったのではないでしょうか。
④ストームのリッジはシャルドネを樽熟成したタイプですが、通常の樽シャルドネと比べると果実味のボリュームと酸化熟成感を感じられるワイン。
このタイプのワインは乳酸が多くシトラスの香りはほとんど感じない、リッチでこっくりとしたワインの印象があります。トリガイとの相性も良かったと思いますが、鰯も評価が高くその他の魚との相性も良かったようです。
このワインは日本酒と同じ様な感覚で合わせを考えると良いと思います。
次はイタリアの赤ワイン
⑦ブルネッロディモンタルチーノは熟成した落ち着いた味わいを感じるワイン。
サンジョヴェーゼが持つ花の香りは少なめで、酸味をしっかりと持っています。この酸が魚の脂との相性がよく鰹やトロや中トロとの評価が高かったです。
⑧ロサエはピエモンテでルケという地葡萄で作るワインですが、この品種は甘さを感じるとても華やかな香りが特徴的。
今回のワインにもこの香りはあったのですが、香りの印象は比較的におとなしい印象でした。ということで、香りが合う鮨選びというより、ブルネッロと同じくトロや中トロと良く合うという意見が多かったと思います。ワイン自体が若干若い状態でもあったので、もう少し熟成感が出るとより個性的なマリアージュが味わえると思います。
⑨ランゲフレイザはロサエと同じ生産者のものですが、ピエモンテのランゲ地域でフレイザという地葡萄から作られています。この品種も華やかなな香りを持つが、ルケとは違い、爽やかさを感じるような華やかな香りが特徴。
このワインは華やかさを抑えた味わいのバランスが良いタイプです。ワインが持つ酸味がしっかりとあり赤身の魚やコハダなどの青魚との相性が良かったと思います。これも魚が持つ脂との相性が良いということでした。
以上が今回のマリアージュ検証のざっくりとした結果です。
この結果と以前のものをまとめて、ワインが持つ特徴の中で鮨と合わせる上で考えなければいけない重要なポイントは、
①ワインの色と食材の色を合わせる。(どの料理でも言える基本)
②ワインの味の強さ(重さなどのボディ感)を料理に合わせる。
③ワインの熟成度を考える。(若いものが良いのか熟成があるものが良いのか)
④ワインが持つ香りと食材や料理の風味を合わせる。(同じ要素を合わせるというより相性の良い香りどうしを組み合わせる)
⑤鉄分を感じるワインはなるべく合わせない。
①〜④は、マリアージュの基本的な考えかたですが、⑤は生魚を食べる時に注意するべきポイントです。白ワインも生魚に合わない成分を持っていることがあるので注意。
鮨に合わせるには、ワインが持つ香りや味わいを“料理の薬味代わり”という雰囲気で合わせたり、雲丹のように“土地の香りがするものに土の香りのワイン” ”肝や魚卵の香りに酸化熟成感“など潜在的な風味同士を合わせてあげることが大切です。
あとは”醤油なのか塩なのか、わさびか生姜か“によっても合わせるポイントを少し変えても良いかもしれません。
また、ワインの熟度は味わいに関係しているのでとても大切な要素です。ワインの状態があまり若すぎると酸味が目立ちます。熟成感がある程度進むと酸味が穏やかでより複雑な香りが出ます。ということで、熟成感のあるワインを選ぶことにより食材とのマリアージュの幅が広がるだけでなく、和の調味料(醤油、味噌など)との相性も格段に良くなります。
そして、ワインのボディ感もとても大切です。特に鮨など味があまり濃くない料理は、ワインの味が勝ってしまい、料理の良さを消してしまうことがあります。そこで、鮨にワインを合わせる時は重厚な飲み口のワインよりも、ミディアムボディのジューシーでなめらかな口当たりのワインを選ぶことにより、バランスの取れたマリアージュを楽しむことができます。
また、料理や食材と必ずしも色を合わせなければいけないということはないのですが、色が近い方がそれぞれが持つ風味が寄り添いやすいということが言われています。そして、今回のテイスティングでも赤身やトロ、カツオなどと赤ワインの相性が良かったという結果が出ました。この結果から見てもやはり色の近さはマリアージュと関係があるといえるでしょう。
ということで、ワインの色を合わせることはマリアージュを考える上で重要な一要素になりますが、例外でコハダやホッケなどと赤ワイン、カツオと白ワインなど色が逆転した組み合わせもあります。こういうマリアージュの場合、上でも書いたよう薬味代りになる酸類や香味成分(土の香りやシトラス、ベリーなどの香り)が関係しています。多くのフェノール成分は色素とも関係しているのですが、アミノ酸や有機酸などの酸類は赤白共に持っているものもあり、色素成分とは繋がりの薄い成分もありこういうものがより複雑な相性として色違いのマリアージュ効果をもたらしているのだと思います。
上記の5つのポイントを総合的にバランス良く考えていくと、きっとより素晴らしいマリアージュに出会えると思います。そして、鮨とワインのマリアージュがごく普通の時代が来るのではないでしょうか。
そして、このようなことをふまえて鮨と一緒に飲むワインを選ぶ時の条件を下記にまとめてみました。先に書いた事と重なっているものもありますが、鮨用ワインを選ぶ上で重要なポイントです。
鮨ペアリング用ワインの条件
1.白も赤もミディアム
2.色を近づける
3.魚の油もワインのタンニンを合わせることができる(オレンジワインの渋味も有効)
4.残糖感は必要
5.シャンパーニュの泡は強すぎるので、軽く飛ばしてから。スパークリングワインはなるべく泡の口当たりの優しいものを選ぶ。
6.ウニ、エビ、貝類、魚卵、あん肝などの味わいの核になるものに酸化熟成感とMLF感や土臭さがポイント(鮎などの川魚の肝とソーヴィニヨンの香り)
7.白には塩味、赤には醤油
8.白でも赤でも程よい熟成感
9.イカにはナチュラルワイン
10.赤ワインはピノノワール、ガメイ、カベルネフランが最適
以上で「鮨とwineのマリアージュ勉強会」のまとめは終わりです。
今後もいろいろな料理とワインのマリアージュを分析的に考えていきます。こんな料理とやってみては?というご意見がありましたら直接、Wine bar LOOPY(小林)までご連絡下さい。
ワインペアリングコースのオペレーション条件
1.スピード感3時間以内、一杯を飲み終える前に料理を出し切る待たせない。ワインが切り替わるところのタイミングは多少待ちがあっても良い。あくまで1杯飲み終わるまでの時間をできるだけ待たせないようする
2.白ワインには塩、赤ワインには醤油などワインに合わせた味付けが必要
3.ワインに合わせたメニュー構成と順番が重要(1杯の中でも一番合うものを最後に)
4.1杯に3〜4種類くらいが限度
5.一品の量を調整(一番合う鮨は2カン以上にするなど)、満足度を上げるために満足度が高いものが一番量が多い
6.ワインの総量は多くしすぎない
7.ガリ用ワイン(箸休め的なワイン)を別枠で出すかはオペレーション次第
8.料理に合わせたメニュー選びが基本だが、品数が多いスタイルのコースなどはワインを軸にワインに合う料理選びでコースを組んだ方がやりやすい。
9.ワインは料理が出る前に入れておく
10.料理、ワインの説明するタイミングをバランスよく割り振る(一品ごとの説明も大切だが、出す前に、出したあとなどまとめて説明するのもあり)
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