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アメリカの3大文学賞を獲得した『金持になったウサギ』ジョン・アップダイク

アップダイクによるウサギ4部作の3作目です。
今までの2作と大きく異なる状況は、タイトルの通り、40代後半になったウサギは金持ちになったということです。妻ジャニスの亡き父が経営していた自動車販売店の社長になりました。そのため、過去2作のウサギとは異なり、金銭的に余裕があるのか、精神的にもゆとりがあるように感じられます。『金持になったウサギ』は、ピューリッツァー賞、全米図書賞、全米批評家協会賞 の全米三大文学賞をすべて獲得した作品です。

前作「帰ってきたウサギ」では、ベトナム戦争や人種問題などの政治面がストーリーに反映されていましたが、本作では1970年代後半のカーター大統領政権下での経済がストーリーに表れています。日本の車の輸出がアメリカ経済に打撃を与えた部分なども読み取れます。

また、20代前半になった息子ネルソンの存在が本作では大きいですね。大人になった子どもと父親との関係、やりとりに感慨深いものがありました。
そして、僕が『金持になったウサギ』を通して1番感じたのは、人間は何歳になっても不完全な存在であるんだろうなということです。当たり前のことかもしれませんが。40代後半になったウサギは、20年前から精神的に成長していますが、それでも誰かを傷つけたり誤った行動をとったり未熟な部分も残っています。ただ、そうした不完全さに人間らしさを感じて、この主人公に惹かれるのかなと思います。

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