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MWiCメモ02 ブレス感度調整

先行テスター(私)の経験談としてのMWiCの息抜け・ブレス感度・反応とその設定関連のメモです。(2023年7月18日作成)

MWiC詳細は開発・販売メーカーであるTeefonics社のサイトを御覧ください。

MWiCの「息」に関するこだわり

ウィンドシンセの最大の特徴は「息」でコントロールするところであり、コントローラーの能力として一番重要なことは「演奏者が吹きやすく、繊細な息の表現を忠実にシンセサイザーで表現できること」だと思います。MWiCはそこにはかなりのこだわりをもって開発されています。
「吹きやすさ」に関するこだわりのひとつが「息抜け調節バルブ」の搭載です。「抜けないほうが良い」「少し抜けてほしい」「もっとガバガバ抜けてほしい」、これはもう演奏者の好みであってどれも正解ですが、これまではユーザーが自己責任で管体を改造するしかありませんでした。MWiCはバルブ調節でどの好みにもスマートに対応可能になっています。
 参考:公式サイト→ https://teefonics.jp/mwic_introduction/features

「繊細な息の表現」についてはブレスセンサーの性能とソフトウェア制御にかなりこだわって開発されています。私もテスターとして1980年代〜最新のハード音源〜ソフトシンセまで、複数の音源で試して反応や不具合を検証いたしまして、どの音源においても既存の各社最新のウィンドコントローラー同等レベル以上のブレス反応性・表現が可能であることを確認しております。ブレス表現について既存の各社コントローラーと比べて能力的に劣ることは無く、演奏者の「好み」のレベルで選んでいただけるだけの製品になっていると思います。

MWiCのブレスに関する設定

一方、様々な演奏者の好みや音源の種類に対してできるだけ対応するために、設定項目の数や調整可能幅はそれなりに増えてしまっています。ですので一見設定は複雑なのですが、自分に必要なところだけ理解してしまえば、あとは決まったところを微調整するだけになると思いますので、怖がらず触っていただきたいなと思う次第です。ブレス関連の設定はバイト関連にくらべると全然簡単ですし、結論だけ言うと、ブレス関連はデフォルト設定のままでもほぼ万人が問題なく吹けるようになっていますのでとりあえずあまり悩まないでも大丈夫です。

1.息抜けバルブの調節

MWiCを入手したら、まずは公式サイトの「MWiCの使い方」を一通り全部読んでから、

公式サイトの「マウスピースの取り付け」に従ってマウスピースを取り付けます。
公式サイト→ https://teefonics.jp/mwic_howtouse/mouthpiece

バルーンとリードの位置調整は後で「バイトセンサー」の調節のところで好みにあわせて調節することになりますが、まずは公式サイトの記述通りにマウスピースを取り付けます。

マウスピースが取り付け終わったら息抜けバルブを調節します。
公式サイト→ https://teefonics.jp/mwic_howtouse/breath_valve

を参考に調節します。EWIやNuRAD経験があって自分の息抜けに対する好みがわかっている方は自分の好みに。
自分の息抜けの好みがわからないという人は「ちょっと抜ける」程度が標準的かと思います。マウスピース装着後、何も音源を接続しない(音は出さない状態)で、バルブをまず全閉にします。その状態から、息を入れながら少しずつバルブを緩めます。あるところで「急にスッと抜ける」ようになるので、その直前くらいのところに戻して固定すると「ちょっとだけ抜ける」状態になります。息抜けのシューシューという音を確認しながら調節するとやりやすいと思います。
マウスピース種類やリードの位置・ブレスセンサーのバルーンの位置によっては、マウスピースとリードの間からも少し息が抜けることがありますが、これは異常ではなく、これもバイトセンサー関係の好みで抜ける・抜けないを選び、最終的にはここから漏れる息も含めて息抜けの抵抗を自分好みに調節することになりますが、最初は単純化のため、マウスピースを思いっきり深く咥えてマウスピースからは息がもれない状態にして、息抜けバルブを調節すると良いと思います。

2.ブレス関連のMIDI設定とブレスセンサー反応調整

息抜けバルブの調節が終わったらいよいよ音源を鳴らしながらの設定になります。既に他のウィンドコントローラーで外部音源を鳴らしている方は自分が一番慣れていて息を吹き込んだ感覚と音色の変化の感覚がわかっている音源・音色を選んでください。その基準が無い場合は任意の音色でその感覚も含め設定していくことになりますが、ブレス関連の設定については、デフォルトのままで誰でもとりあえず問題無いように設定されているのであまり悩まないでも大丈夫とは思います。

MIDI設定関連に関して、息に対してMIDIのCC#2を出すか、アフタータッチを出すか、その他を出すかはお好みになります。この辺の使いこなしは別に説明するとして、ここではBreath AでCC#2を出してこれでCC#2対応の音源をコントロールすると仮定して説明します。

02 MIDI-1の設定項目で、
・Breath CC-Aを #2
に設定。こうすると、
05  Breath-Aの設定項目で、
・息に対してCC#2をどんな感度やカーブで出力するか
の設定になります。

・公式サイトMIDI-1  https://teefonics.jp/mwic_settings/02_MIDI-1

・公式サイトBreath-A https://teefonics.jp/mwic_settings/05_Breath-A

Breath-Aの設定

Min

Minはブレスセンサの閾値です。ほとんどの場合デフォルトの20で問題ないですが、Range値との兼ね合いによって、ピアノ音色やRotate音色での演奏の場合などはこの値をもう少しあげないと音が切れない(note offが出力されない)場合がありますのでその場合は最大100位まで間でお好みで設定します(ちなみに私の設定値は60です)。ダブルタンギングでもしっかり音が切れるかどうかを確認するとわかりやすいと思います。
特殊設定としては、Minの値をマイナスにすると「音が出っぱなし」になりますので、「ヴォコーダーEWI」等の特殊奏法に使用することができます。

Range

Rangeは感度に相当します。小さくすると感度が良くなり、少ない息で値があがります(例えば少ない息で音量が大きくなる)。大きくすると逆。これもデフォルトの1000が標準的で問題ないかなぁと思います。私自身は850〜1000の間で使うことが多いです。プロ奏者の方だともう少し高めの値の方が多いかもと推測します。完全に好みですが一般的なウィンドシンセ演奏でダイナミックレンジの広い表現をするためにはこの値を小さくしすぎないほうが良いとは思います。MWiCでドラム音源を演奏したりする場合は小さくしたほうがやりやすかったりしますが特殊ケースですね。

Curve

いわゆるブレスカーブです。このカーブはバイトセンサー・ベンドセンサーのカーブと共用なのでそれ向けのカーブも含まれています。通常ブレスセンサー向けに使うのは1〜9のカーブです。基本はリニアの4で、デフォルトも4になっていますのでそのままでもとりあえずは問題無いと思います。それより少し楽な5、少しキツめの3、はその日の体調によって使い分けても良いかもしれません。また最初の立ち上がりだけ急な8と9は音源によっては立ち上がりのアタックの感じ(cutoffとvolumeのバランス)が絶妙に良い感じになる場合がありますので一度試して見てください。
1や9の極端なカーブや10以降のカーブは通常は使わないことが多いですが、Breath-Bに特殊効果的なCCを仕込む時は有効かもしれません(息が最大に強い時だけ音色が変わるとか)。このあたりは別に説明します。

基本的にはCurve 4にしておいてRangeを少しずつ動かして、自分が一番吹きやすい値にする、という流れになると思います。

その他のブレスに関連する項目(04 Breath)

その他、息に対する挙動に関連する設定項目で04 Breathの項目があります。公式サイトの記述の補足的に書いてみます。

公式サイト→https://teefonics.jp/mwic_settings/04_Breath

ADC Gain

開発最初期の試作管体用の設定なので製品版ではデフォルトの1のまま変更不要です。2や4にすると、ブレス感度が2倍、4倍になりますが感度はRangeの値で変えたほうが良いのでここは触らないでOK。何か特殊奏法的には使い道があるかも?

Smoothing

ブレス出力のスムージングをします。ほとんどの場合、デフォルトの1(OFF)で大丈夫です。
ローパスフィルターカットオフの開閉を息で行うときに音源によってはブチブチ・ゴロゴロとしたノイズが目立つ場合があります。このような場合にダメ元で2〜5位の間で上げてみてください。運が良ければ気になるノイズが減ることがあります(ノイズがゼロになるわけではなく、聴感上目立たなくなることがある)。数値をあげすぎるとブレスに対しての反応が鈍ります。私としてはテスターとしてこのノイズができるだけなくなるようこだわってテストさせていただきまして、最終的に「どんな音源でもノイズゼロ」は達成できませんでしたが、低ノイズと定評のあるNuRADのMIDI出力と同等レベルは達成できたとは思っております(NuRADもノイズが出る音源は出ます)。このフィルター開閉のノイズを消すには、ハード音源でもソフト音源でも基本的にコントローラー側ではなく音源側でスムージングの回路が必要ですが、音源側のスムージング配慮があまりされていない場合でもこのMWiC側のスムージングで改善の可能性を増すことができます。

まとめ

ということで長々と書きましたが、まとめると「とりあえずブレス関連はデフォルト設定のままでも大丈夫、Rangeだけ好みで少し変えるくらいでもOK」となります。こだわる人はBreath-B、Breath-Cの設定を個別に行って音源を息で自由度高くコントロールできるので、その設定を行うことになりますが、それについては別の記事で、そのうち書きたいと思います・・・・


【ご注意】2023年7月スタートアップ企業Teefonics社より、日本発の新しいWind Midi ControllerであるMWiCの販売予約と貸出試奏受付が開始されました。私は先行してテスターをさせていただいておりましたのでその経験メモをここで共有しております。というわけで本記事の内容は単なる一人のユーザーの経験談でありTeefonics社の公式見解とは無関係です。また速報的なものですのでこれからどんどん変わっていくこともあり得ます。その点ご理解の上、参考になれば幸いです。


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